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神様の観察対象  作者: LUCC
第二章 俺たちの冒険はこれからだ
20/31

ep.20

1週間投稿とか調子に乗ってすんませんしたm(__)m

それでもブックマークしてくれる方が多くて本当に感激しました。

ありがとうございます!!



今回は修二が雑魚相手に無双?します。


木々が生い茂る森の中、一人と一匹が対峙していた。

そこは大きく開けた場所で、まるでスポットライトが当てられているかのように日が差し込んでいる。

その光を当てられている、この舞台の主役の彼らは互いににらみ合い、牽制し、隙を窺っている。


一匹は大きな翼を持ち、顔は爬虫類のようであるが二足歩行をしていて、立った時の身長は3メートルはあるだろう。

そいつは今、目の前の獲物を狩らんと鋭い目をさらに細め、唸り声を上げる。


一人は全身を隠すようなローブに身を包み、胸の所には子猫がちょこんと入っている。

前にいる敵は決して弱いと言われるものではないだろう、しかしこの男の顔には然程緊張や警戒と言った色がうかがえない。

ましてや恐怖と言ったものはこれっぽっちも見えない。


どちらも相手の動きを見逃さんと、見つめ合うだけで一歩も動かない。

その状態が数秒、数十秒と続く。

と、それを破ったのは男の方だった。

男は右手をゆっくりと上げ、顔の高さまでもってくると――――――――――







◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆




時間は少しさかのぼる。

修二が無事依頼を達成し、ランクがEからDになった翌朝。

修二たちは昨日と同様にギルドへ来ていた。


「Dランクになったから討伐依頼が受けられるな」


人の多い依頼掲示板の前で暫く悩んだ結果、最初の討伐と言えば、と言われるくらい定番な“ビッグラビット”の討伐にしたようだ。

ビッグラビットとは地球にいるごく一般的な兎をそのまま2倍くらいに大きくした魔獣だ。

Dランク上がりたて初心者の相手に丁度いいくらいの強さで、平原に多く生息している。

攻撃方法は、角も爪も無いため体当たりしかないのだが大きな体とそれを跳ばす強力な脚力からなる攻撃は、生身の一般人では結構な怪我をすることになる。

まぁ全然一般人ではない修二は何も問題はないのだが。


受付に依頼書を持っていき受注する。

東門から出るとさっそく獲物を探す。

平原のためそこまでじっくりと探さなくても簡単に見つかる。


「あそこに3匹かたまってるな」


ビックラビットが3匹で草を食べているところに向かって走り出す。

底上げした能力による疾走は200メートル程離れた場所でも一瞬で着く。

修二はそのままの勢いで、ビックラビットの頭を1匹ずつ撫でるように触っていく。

3匹の間を走り抜け、止まった時には3匹とも力尽きたように地面へ倒れ伏していた。


「よし、こんなもんかな」


すぐさま今捕らえた獲物の回収に向かう。

今起きたことを簡単に説明すると修二は掌に震動の魔法を展開して、それをビックラビットの頭に触れた瞬間に発動させ、脳へと直接振動を送ったのだ。

それにより脳震盪を起こしたビックラビットたちは気絶し倒れたという訳だ。

作戦も何もあったもんじゃない、身体能力と魔法のごり押しである。


その後、途中に昼休憩を挟みつつも何回か同じことを繰り返してビックラビットを50匹丁度狩り終えた修二はギルドへ戻ろうとする。

現在の場所は昨日よりも南の方に行った森の中。

いい具合に開けた場所があり、そこに最後の犠牲者となったビックラビットがいたのだ。


「さて、そろそろ時間も収穫もいい頃合いだし帰るとします『GYAOOO!!』か?」


声の聞こえた方向、上空に目を向ける修二。

そこにいたのはバサッバサッと音を立てながらゆっくりと降りてくる飛龍――ワイバーンの姿があった。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





そして冒頭に至る。


右腕をまっすぐ伸ばし顔の高さくらいまでもってきた男――修二はその手の指を、中指の爪に親指を当て他の指は狙いを定めるかのようにピンと伸びている。

その状態のまま中指に力と魔力を込め、抑えていた親指(引き金)放す(引く)


ドンッッッ!!


静寂の場と化していた森の中に大きな音が響き渡ったかと思うと一拍遅れてドサッッと大きなものが倒れた音がする。

さっきまで、修二が何を仕掛けてくるのか警戒し動かずにいたワイバーンはそのまま永遠と動くことが出来なくなってしまっていた。


修二があっさりと倒してしまったためワイバーンがすごく弱く見えるかもしれないが決してそんなことはない。

あくまでも“龍”と名に付く魔物、それが弱いはずがないのだ。

ワイバーンは本家ドラゴン系の龍に比べると数ランク落ちるがそれでも倒すにはBランク冒険者10人は最低でも必要とする強者である。

年に1回あるかないかくらいで討伐されるが、それはベテラン冒険者が魔巣付近の森、もしくは魔巣内で狩ってきている。

今回のように魔巣よりも平原に近い所で出現するのは極稀である。

そんなワイバーンを倒した修二は、


「思わぬ大物が仕留められたな。

 しかし、本当にさっさと帰らないと暗くなってしまうな」


これである。

流石、魔巣スタートで2年もそこに籠っただけはある。

この程度なら雑魚の範疇のようだ。


ワイバーンを回収し帰路に着く。

平原に人がいるかもしれないので速さは控えめに走る。

すごい速さで走っているところを誰かに見られ注目される、なんて事にならないようにするためだ。


問題なく東門から街に入るとそのままギルドへと向かう。

露店で焼かれている肉のにおいによる飯テロに耐え、ギルドに入るとピリピリとした空気を感じた。

ギルドにいるほぼ全員が不安を含ませた暗い顔をしている。

不安を感じていないのはただ単に実力、自信がある者か、はたまたただの馬鹿な者だけのようだ。

修二はそれに気が付いているがその辺の冒険者に聞かず、依頼達成の報告のついでに受付で聞くことにした。

冒険者の中に話かけられるような知人がいなかっただけだが。


「依頼達成してきましたー」

「はい、確認のためギルドカードをお出しください」

「分かりました」


ポーチの中からカードを取り出し受付嬢に渡す。

ちなみにギルドに登録した時と同じ人だ。


「お預かりいたします。

 ………………え?……50?

 ……えっとビックラビットを50匹討伐でよろしいでしょうか?」

「はい、そうです。

 討伐数の指定がなかったので平気だと思ったんですがダメでしたか?」

「い、いえ予想外の多さに取り乱してしまいました。

 失礼いたしました。

 こちらが報酬になります。

 カードをお返しいたします」

「ありがとうございます。

 それと、何かあったんですか?ギルドの雰囲気が少しおかしいような気がしますので」

「ああ、先ほど冒険者の方の一人がギルドに駆け込んできて平原の近くでワイバーンを見たと言っていまして、初めは誰も信じていなかったんですがその後数名の方が駆け込んできて同じことを言ったので信じるしかなくなり、今現在、一人でも多くの上級冒険者をと招集をかけて待機しているのです。

 平原付近まで来たということは街まで来る可能性が高いので皆さん不安なようです。

 冒険者と言ってもワイバーンクラスの魔物と闘ったことのある人は極僅かですからね、仕方のないことです」


話を聞き、もしかしてと思いさっき狩った獲物の話を持ち出す。


「あ、さっきワイバーン1匹狩ったんですけどもしかしてそれですかね?」

「……………は?」


急にそんなことを言われ目の前の受付嬢は理解不能と言った顔をしている。

それは近くにいた別の受付係員も、このやり取りが聞こえた冒険者たちも同様の顔をしている。


「え?……冗談ですよね?」

「本当ですよ。

 カードを見れば分かるんじゃないですか?」


そう言い再びカードを渡す。


何故先ほど依頼達成を確認したときに気づかなかったか、それはギルドカードの仕組みが原因だ。

ギルドカードは討伐した魔物をすべて記録することが出来る。

魔力を持つ魔物なら例外なくだ。

先ほどカードを確認したとき、カードを読み取り表示させる機械(魔道具)で表示させていたのは“依頼内容とその詳細”、つまり“指定された魔物”と“それを何匹倒したか”しか表示させていなかったのだ。

デフォルトがその状態のため討伐した魔物全てを見るには機械の方の設定を変えなくてはいけない。


受付嬢はカードを受け取り、機械の設定を変え、改めて修二のカードを読み込む。


「……………………本当に、………本当にワイバーンを討伐してる」


カード内容が表示された画面を二度見し、初めは小さく、後は普通の声量で呆然とつぶやく。

その声にはいまだ信じられないと言った感情が明らかに込められている。

そしてさっき周りで聞いていた者たちがそれを聞いていないはずがない。

修二が件のワイバーンを討伐したと言う声が彼らの耳に届く。

またその声は丁度今入ってきたAランク冒険者の耳にも届いていたのだった。





お読みいただきありがとうございます。



無双と言いながら戦闘シーンが無かったような気が……。

たぶんこれからも少ない気がします。



次回の投稿は最近の調子でいくと2週間後です。

しかしそれに甘えないよう頑張ります(言うのは簡単……)


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