ep.17
大変長らくお待たせいたしました。
2話投稿できたらいいなと思っていましたが無理でした。
今回全然話が進んでいませんが、どうぞ。
〜修二side〜
遠くから聞こえてくる雑音により少しずつ意識が覚醒していく。
頭だけが半ば起きている状態で、睡魔はまだしぶとく残っている。
重く硬い瞼をゆっくりとだが開く。
……見慣れない天井だ。
有名なあのセリフとは少し違うが、実際知らない訳ではないのでそれを言うことはできないのだ。
やはり世界を移動して直後でないと言えないのだろうか。
まぁとにかく、ようやく眠気が薄れてきたから起きるとしよう。
クーシィは相変わらず、場所が変わっても寝ているのは俺の上だ。
全然重くないからいいのだが。成長してもきっと変わらないだろう。
ルンは俺の左腕に乗っている。
少しひんやりしていて気持ちいい。
というかスライムも寝ることが出来るんだな。
さて、このままじゃいつまで経っても起き上がることが出来ない。
仕方ないから起こそう。
右手でクーシィを撫でるように起こし、左手はルンを落とさないように頑張って手首を使いルンをつついた。
2匹ともそれほど時間をかけずに起きた。
ルンが起きたかどうかは感覚でなんとなくわかる。
見た目では何も変わっていないのに感覚的には違うって言うのは不思議な感じだ。
「おはよう」
「…ぅにゃ~」
「……(ぷるっ)」
クーシィはまだ眠たいのか目を前足でゴシゴシしている。
それと対照にルンは寝起きがいいようで動きがきびきびとしている。
この宿は朝食や夕食は販売していないようで、外で食べてこなくてはいけない。
だが持ち込みは特に制限されていないため、アイテムポーチから事前に作っておいた弁当を3つ取り出す。
ルンも俺たちと同じものでいいようだ。
起きてすぐの朝食は少々きついが、日が昇り、人が働き始めてだいぶ経っているので仕方ない。
朝食も食べ終わり、魔法で出した水を空中に維持してそのまま顔を洗い、寝間着から着替えて、ローブを着たら準備完了。
クーシィは昨日同様胸ポケットにイン。
ルンはどうしようかと悩んでいたら、ルンがアイテムポーチの中にいると主張。
意外と居心地がいいらしい。本人?がいいならとルンをアイテムポーチに入れて部屋の外に出る。
鍵をかけるのを忘れない。
そのまま鍵を持って階段を降りと、昨日と同じようにカウンターに女将さんがいた。
「おはようございます」
「おはようさん
しっかり寝れたみたいだね」
この時間だとほとんどの人はもう起きて働き始めてるからな。
前世ではそうでもないが、こちらでは遅いの部類になるのだろう。
「ええ、おかげさまでぐっすりと眠れました」
「それは良かった。
ところでこれから出かけるのかい?」
「はい、そうです。
あ、これ、鍵お願いします」
「はいよ、気を付けて行ってくるんだよ」
「行ってきます」
女将さんはカウンターの中から笑顔で送り出してくれる。
それにしても今の会話どう聞いても母親との会話だな。
それだけ母性が溢れてるってことか。
宿を出ると結構な人が道を往来している。
朝だからなのか、元からなのか。
宿の中では感じなかった朝日の光がまぶしく感じるのでフードをかぶる。
自家製で自分に合わせて作ったからかすごく着心地がいい。
特にフードをかぶると安心感というかなんというか、すごく落ち着いた気持ちになる。
ちなみにこの状態で顔を見ようとしても口元しか見えないようにしてある。
下から覗いてもなぜか影がかかって見えないのだ。
この機能は特に意味はないが、ロマンだロマン。
閑話休題
とにかく目的の場所に向かおう。
目指すは勿論冒険者ギルドだ。
ちゃっちゃと登録をしてそのまま依頼を受けるつもりでいる。
転移者、転生者の冒険者登録にはトラブルがつきものだが、さてどうなるかね。
ギルドに向かう途中色々な出店があった。
その中に鰹節らしきものを打っている店があり、そこを素通りしようとしたらクーシィにぺしぺしと叩かれてしまった。
とりあえず少量削ったものを買った。
クーシィがどうやって食べるのか見ていたのだが、………
ちゅぅ~~、ちゅぅ~~
鰹節を両手で挟むようにして持って、少しだけ口に含み、旨みを吸い出しているようだ。
なんというか……和む。
鰹節を売っているおやじさんも同じように感じたのか、おまけで少し貰ってしまった。
なんてこともあったがその後は特に何事もなく冒険者ギルドにたどり着いた。
ギルドの建物は、横幅が普通の民家の2倍以上で、しかも2階建てだから中々に迫力がある。
建てられてからだいぶ経っているようで、建物に使われている木材がこんがりと少し焦げた煎餅のような色に変色している。
入口にある両開きの扉は飾りや模様は一切ないが、大きくて頑丈そうだ。
その扉の右側を押し開けて中に入る。
中に入ってすぐに、「…おぉ」と声を漏らしてしまった。
入って正面と左側には受付があり、職員らしき人が何人か座っている。
男の職員もいるが、女性職員の方が多い。
その代わりとでもいうかように右側の酒場にはむさ苦しいおっさんたちがたむろしている。
さっきまで外に漏れるくらいに騒いでいたが、全員がなぜか静まり返り視線をこちらに向けている。
……なぜだ。
………理解。
どう考えてもこのローブが原因でした。
客観的に見ると完全に怪しい闇の魔術師だな。
ま、それでも脱がないがな。
周りの突き刺さるような視線を無視し受付へと一直線。
ここで万能ローブの機能が役立つ。
それは、【害あるものの遮断】と言い、これは俺がいらないと決めたものを通さない。例えば、物理的攻撃とか、魔法とか、視線とか。
そんなことを考えていると受付の前に来た。
勿論受付嬢であり男ではない。俺はノーマルだ。
「すいません、登録をしたいのですがここで大丈夫ですか?」
「あ、はい大丈夫ですよ。
とりあえずこちらにお掛け下さい」
目線が一度、胸ポケにいるクーシィにいったのを俺は見逃さなかった。
まぁとにかく、赤みがかった茶髪をショートカットにした受付嬢に勧められ目の前の席に座る。
「では、こちらの登録用紙に必要事項をご記入ください。
字が書けないようでしたら代筆も可能ですよ?」
「大丈夫です。
問題ありません」
受付嬢から渡された用紙には、名前、年齢、特技、戦闘方法、一言、の5項目ある。
名前、年齢、戦闘方法はいいが、特技と一言って何だ?
特技って一発芸か?…んな訳ないが。
これは聞いておくべきだな。
「あの~、この特技と一言って何を書けばいいんですか?」
「特技はそのままで、得意とする事、剣が得意なら剣術、魔術が得意なら○○魔術などですね。
一言は書かなくてもいいんですが、大体の人がやる気や意気込み、パーティメンバー募集中などを書かれていますね。
これは、この後お渡しするギルドカードに反映されます。
しかし後からでも変更は可能なのであまり悩まずにお書きください」
「ありがとうございます」
とりあえず特技と戦闘方法は魔法っと。
一言は…………すぐに思いつかないから保留で。
名前 シュージ
年齢 15
特技 魔法
戦闘方法 魔法
一言
……よし、変なところはないな。
苗字はない人の方が多かったので外した。
事前に【知る権利】で調べておいた俺に隙はない。
2度確認して受付嬢に渡す。
「はい、ありがとうございます。
確認させていただきます。
…………えっ?」
俺から受け取った用紙を見た受付嬢の顔が、驚きと残念なものを見る時の感じが混ざり合ったような色に変わる。
な、なんだと。何をミスしていたというんだ。
特に問題はないはず。
この時、俺は当たり前になっていたから気づかなかったが、普通の人なら彼女と同じような反応をするだろうということをやらかしていた。
このことがのちに芽吹く花の種を蒔くことになるとは考えもしないで…。
さて、何をミスしたかわかりますか~?
※最後のはシリアス伏線ではありません。
活動報告にも書きましたが、来月も予定が多くあり忙しいです。(泣)
次話はできるだけ早く投稿したいですが、いつになるか…。1カ月以内には絶対します。
また大分日が空きそうですが、気長に待っていただければ、と思います。




