ep.16
今回は普通に間に合ったかな。
文字数も戻りました。
はいそこ、「珍しい!槍でも降るんじゃないか」って言わない。
そういえば、まだ誤字脱字報告されたことないんですよね。
無いならいいんですが、怪しいです。
放置しても大丈夫そうな誤字脱字なら放っておいてもいいんですが、あまりにも気になるようなものは報告よろしくお願いします。
矛盾。
辻褄の合わないこと。
つまり、一方で肯定し、もう一方で否定する状態のこと。
この言葉は中国で生まれた故事である。
あるところに、矛と盾を売る商人がいた。
彼は矛を売るときは、「この矛はとても鋭いため、どんなに硬い盾でも突き通せるよ」と言い、
盾を売るときは、「この盾はすごく硬い。だからどんなに鋭い矛でも突き通せない」と言った。
これを聞いていた客はすごい商品だと驚いていた。
しかし、一人の客がこう尋ねた。
「その矛で、その盾を突いたらどうなるのだ」
商人の男は返答に困ってしまった。
この話から、矛盾という言葉が生まれた。
矛盾は両立させることは不可能なものを示すとも考えられる。
一人の人に、前を向いたまま180度後ろを向けというように。
“絶対に両立しないもの”
もしそれを両立させたとき、はたして何が起こるのか、想像が出来るだろうか。
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~修二side~
ルンを仲間にしている間にずいぶん時間がたったようで、もうだいぶ日が落ちている。
日本でもよく聞いたような虫の音が聞こえる。
急いで街を目指そう。
街の場所は【知る権利】で調べてある。
アイテムポーチとクーシィが落ちないか確認して、街のある方向へと走り出す。
ここから町まではずっと草原で、障害物がないから楽でいい。
ただ、人に見られるのはまずいと思うから、その辺は気を付けて行こう。
街までそれほど遠くないのでスピードは控えめで。
自転車と同じくらいの速度で走る。
これくらいなら、30分もしないで着くだろう。
走っている間暇だったので、周囲を警戒しながら先ほど思い出したことを考えていた。
【知る権利】についてだ。
実はこの【知る権利】、いつの間にかバージョンアップしていたのだ。
何度も使い、力に慣れてきたからだそうだ。
アップした内容は、敬語になり、知りたいことに関連性が高いものは自動で追加説明してくれる機能。
紙の辞書からPCの検索機能みたいな感じだろうか。
他に、ちょっとおまけみたいな機能で、名前の変更もできるようだった。何度でも可能。
特に機能に影響はないので、本当におまけなのだが。
面白そうだったから、“知る権利”の初めと終わりを取って、S○riとつけようとしたらエラった。
エラーって……。
名前はとりあえず保留。
もう少し使いこなせば、またバージョンアップするらしいから、その後にでも決めよう。
それまでは【知る権利】のままで。
蛇足だが、【知る権利】の知識はどこから来るのか聞いてみたら、神ペディアと返ってきた。
様々な神が変更、更新しているそうだ。
神ェ。
閑話休題
漸く町が見えてきた。
もうとっくに、空は真っ赤に染まっていた。
この時間でも中に入れるのだろうか。
入れなかったら野宿だ。
まぁ、そんなに気にしてはいないんだが。
街に近づくにつれ、街を覆う壁の輪郭がはっきりしてきた。
高さは5mはあるだろう。
ここからでも分厚いことが分かり、中々の威圧感だ。
街に入るための門らしきものを見つけたのでそこへ向かう。
そこには門番だろうか。鎧を着た男が一人立っていた。
「ここから街に入れるのか?」
「…ああ、そうだよ。
ここは“ファーディス”の東門さ。
っと街に入る前にこいつに触ってくれ」
そう言い、門番の男は懐から半透明の結晶を取り出した。
「これは?」
「あんた知らないのか?
どこの町でもだいたいこれを使っていると思うのだが」
「すまんね。
田舎からこの町を目指して来たから何も知らないんだ」
結晶について【知る権利】で調べておけばよかったかなと少し後悔。
しかし、あまりにも細かい常識などは調べるのが大変なのだ。
【知る権利】がバージョンアップしたと言っても、調べるのは知りたいと思ったことだけなので、こういう細かい知識には弱い。
とにかく、テンプレ展開にテンプレな返答を返しておく。
「田舎から出てきたのか。
やっぱり冒険者になりに来たのか?」
「ああ、そうだ」
「にしても、この先には魔巣しかなかったはずだが、あんたはどこから来たんだ?」
しまった、普通に東門に来てしまったが、こっち側の門の先には俺が今まで住んでいた魔巣しかないんだった。
しかたない、これでいくか。
「いや実は、普通に村から西門を目指していたんだが、いつの間にか迷っていてな。
ようやくたどり着いたと思ったら東門だったという訳だ。
だからこんな時間になってしまったんだよ」
「どんだけ迷ってんだよ。
まぁいい。
色々駄弁っちまったが、とにかくこれ、判別の魔晶石に触ってくれ」
かなり脱線してしまったがようやく本題に戻った。
彼が持っていた半透明の結晶は“判別の魔晶石”というらしい。
ちなみに魔晶石とは魔石の結晶版だ。
「判別の魔晶石?」
「そう、この魔晶石は触れた者を犯罪者かそうでないかを判別するんだ。
犯罪者なら赤色に変化する。
そうでないなら青色に変化する」
「分かった。
これに触って、青だったら入れるんだな?」
門番が頷いたのを確認して、結晶に触れる。
すぐに変化は起きなかったが、徐々に変化していく。勿論青色に。
まぁ、当たり前だよな。
今まで人とのかかわり自体がなかったんだから。
「よしっ、入っていいぞ」
「どもー」
問題なく?街に入れた。
結構あっさりしているな。
辺りはもう暗い。
早く宿を見つけたいところだ。
さっきの門番にきけばよかったな。
大通りをぶらぶらと歩き回る。
こんな時間だからか人はほとんどいない。
…お?あれは宿かな?
看板が出ていてこの世界の文字で“宿”と書いてあった。
さっそく入ってみる。
入ってすぐの目の前にカウンターがあった。
そこでは女将が受付をしているようだ。
「おや、客かい?」
「はい、宿を取りたいのですが」
「あいよ、1泊銀貨2枚だよ」
銀貨2枚=2000円だ。
金の価値は、
銅貨1枚=10円
銀貨1枚=1000円
金貨1枚=100000円
他にも硬貨はあるが庶民が使う硬貨はこの3種だ。
「3泊分お願いします」
神にもらった金貨を1枚出す。
出来れば銀貨で出したかったがないものは仕方がない。
「はいはい、お釣りの銀貨94枚ね」
女将から大量の銀貨を貰い、数えもせずそのままアイテムポーチに入れる。
アイテムポーチに入れた時に確認しているから問題ない。
「こっちが部屋の鍵だよ。
部屋は205号室を使っておくれ」
205と掘られた鉄の鍵を受け取り、部屋に向かう。
部屋はそこまで広くはないが、狭いとも感じない。
あるのは、机、椅子、ベッドぐらいだ。
机の上にアイテムポーチを置き、ベッドに腰掛ける。
「あぁ~疲れた~。
でも、何とか野宿は免れたな」
何が疲れたって、初めての異世界人との接触だからな。
若干緊張していた。
まぁこれでやっと羽が伸ばせる。
アイテムポーチがガサガサと動く。
クーシィがビックリしてビクッてなった。
アイテムポーチからはルンが出てきた。
…あれ?色が白の透明になってない?
前は緑じゃなかったっけ?
ステータスを見ればわかるかな。
ベッドの近くに来たルンのステータスを開く。
名前 ルン (1)
種族 理外のスライム
職業 修二の従魔
能力 体力 100(?)
魔力 30(?)
筋力 10(?)
俊敏 10(?)
知力 20(?)
…原因らしきもの発見。
種族の“理外のスライム”ってなんだよ。
能力には全部(?)が付いてるし。
【知る権利】で調べるか。
………
調べたことを簡単にまとめると、
理外のスライムとは、この世界の理から外た存在のスライムのことである。
理から外れた理由は、
そもそもスライムは一定時間経つと、魔力さえあれば細胞を増幅させることが出来る。
だからルンはアイテムポーチの中で増幅した。
しかし、それがアイテムポーチの中なのが不味かった。
アイテムポーチの中は時間が止まっている。
だがルンは一定時間がたったので増幅させた。
そう、矛盾だ。
時間が止まった世界で、時間が経たないとできないことを行ったルン。
つまりルンは矛盾を乗り越えてしまったのだ。
だから理から外れたらしい。
能力の横に(?)が付いているのは、ステータスの能力はこの世界を基準に表示しているため、この世界の理から外れてしまったルンの能力があっているとは保証できないからだ。
…ある意味正確だな。
何でこんなことが起きるのかは不明だ。
さすが、神でもよく分かんない生物。
そんなわけで、いつの間にかルンが強化されていた。
中々進行が遅いです。
しかし、進行を早くしてしまうとすぐにエンディングになってしまうんですよね。だからこのままでいきます。
次話の投稿もいつも通り頑張ります。




