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錬金術を売り歩く商人  作者: 独蛇夏子
錬金術を売り歩く商人
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宇宙万華鏡

即興小説トレーニング(http://sokkyo-shosetsu.com/novel.php?id=222077)から転載 お題:賢い冬休み 制限時間:15分

 おや、少年。道に何か落ちているかい?

 星を拾っているのかね。随分粉々になってしまっているね。え?星じゃなくてこんぺいとう?それはなんだね。ああ、じいさんは知らないとも。甘くて美味しいお菓子か。なるほど。通りで簡単に砕けてしまうわけだ。

 甘くて美味しいお菓子がどうして粉々に砕けてしまっているのかね。不思議なことがあるものだ。

 なんだい、少年、泣いているのか?

 そんなすぐに泣いちゃ、男じゃないな。しっかりしなさい。

 よしよし、立ち上がりたまえ。そのうち雪が降ってくる。そんなところにじっと這いつくばっていちゃ凍えてしまうよ。


 何だね、その目は。怪訝そうな。

 失敬だね少年。私の帽子を「変」だなんていうのではない。これは由緒正しき黒いシルクハットなのである。

 この片眼鏡も由来のある真実スコープなのだ。古めかしい銅製のゴーグルというだけではないぞ。片目につけているだけで真実を暴く優れものなのだ。

 この黒いトランクの中には古今東西の錬金術師から買い取った商品がたくさん詰まっている。

 胡散臭そうな顔だな。泣き虫のくせに。

 どれ、ひとつ商品を見せてやろう。


 こいつはただの薄っぺらい、きれいなレンズに見える。

 だが驚くことなかれ。これはどこでもそこでも、覗き込めば銀河を見ることができる「宇宙万華鏡」なのだ。

 万華鏡というものはくるくると回すと中の模様が廻って次々と模様を変える玩具だね。

 これはその宇宙版。宇宙の星々とその巡りを、くるくると回さなくても見ることができる。


 ほうら、覗き込んでおいで。すぐに星雲がもくもくと盛り上がる。

 やや、電光石火だ。次々に星が生まれ、巡っていくぞ。あれはガスの塊だから青い。これは土星のように輪をもっている。小さな氷の粒や石粒を周りに侍らせてね、ドレスアップしている。こちらはギラギラと光る太陽のような火の玉だ。見てみろ、その近くに黒く赤くマグマを噴出させている星があるだろう。こういうのが火星や地球になるんだ。

 火星も大昔はこうして噴火を繰り返していたのだよ。知っていたかい?

 穏やかな、静かな死の土地になるまでに滾るエネルギーを存分に暴れさせていた。

 地球なんか、今だってマントルのエネルギーで地盤が動いているんだ。

 そのエネルギーが世界中に雪を降らせ、寒気を連れてくる。

 星が落ちてくるのも、宇宙全体が動いているからだ。


 決して、宇宙はめそめそしないのだぞ。

 こんぺいとうを奪われて、踏まれて、泣いていたって、その間にも物事はめぐる・めぐる・めぐる。

 命は生まれる・生まれる・生まれる・・・



 どうだい?

 おもしろいだろう、宇宙万華鏡は。

 少しは気を紛らわせたかね。

 これを持って行くといい。

 きっと君の冬休みの宿題に役立つだろう。


 冬の寒い夜は星を見上げてみるといい。

 孤独な錬金術師だって、きっとそうしたんだ。

 黙っていても、一人でいても、夜空は動いている。

【真実スコープ】やや分厚いゴーグルのような銅製の片眼鏡。見えるものや人の真実を映像にして見せてくれる。


【宇宙万華鏡】薄いレンズのように見えるが、覗き込むと宇宙に星雲、惑星などが渦巻き生れる再現をしてくれる。一度として同じ星を再現することはない。

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