その5
「ねえ 瞬 私ねプロポーズされちゃったよ 返事はまだ してないけどさあ ねえ どうしたらいいと思う?」
<カオリンが決めなくっちゃ とても大切なことだから カオリンは どうしたいの?>
「結婚っていう言葉が すごく重いの 今まで あまり身近なものじゃなかったから だから 迷ってるんだ 私 あの人を 本当に愛してるのかなって」
黙ったまま 聞いてくれる瞬
「それとね あの人が 私を必要だと ずっと一緒に居たいって 言ってくれたこと 嬉しかったけど 本当なのかなあって 自信ないの」
<人から自分のこと 必要だよって言われて ましてや好きな人からなら 嬉しかったでしょ そんな言葉をかけてもらえることって 一生のうちで 何回もないんじゃないかな 勇気を出して前に進んでみたらどうかな>
そう 瞬は判ってる 私がどうしたいのか
数日後 プロポーズを お受けした
自分を必要としてくれる人の胸に飛び込もうと決めた
半年後の結婚に向かって 準備が進んでいく
時々 他人事のように感じてしまったりもする
旧友から連絡が来た
「美樹 久しぶり ところでさあ 美樹と付き合ってた高木瞬さん 入院してるって 知ってる?重い病気らしいよ」
私 本名は美樹
高木瞬
私の初恋の人
中学の同級生
社会人になったころ 偶然 再会して お付き合いが始まった
一年くらい半同棲したけど 少しずつお互いの気持ちが離れていった
「俺のこと 必要な存在だと思ってないんだろ 俺だって お前がいなくても 平気だ」
大きな喧嘩をした
そして別れた