その4
その日から 私には人には秘密の楽しみが出来 仕事では自分でも解るくらい生き生きとしていた
「瞬 ただいまぁ 待っててね すぐテレビつけるからね」
人が その様子を見たら 寂しいOLの独り言と映ると思う
テレビをつけると 瞬が微笑んでる
<お帰り〜 疲れたでしょ?とりあえず着替えなよ>
「あ〜 上手いこと言って 着替えを見たいんでしょ?」
<うん 見たい見たい カオリンの着替え>
心の健康ポイントがぐっとアップしてるし
「もう しょうがないなぁ ちょっとだけだからね」
私 何してんだろ
<カオリンの肌 綺麗だね>
「何を期待してんの エロ瞬 ここからあとはダメだもん」
お風呂場の脱衣所で手早く着替えを済ませ テレビの前に座る
心の健康ポイントが通常の位置に
これって つまり アレ?
ゲージの変化を見ながら 照れてる私
<コンビニ弁当ばかりじゃ体によくないよ たまには自分で作らなくっちゃ>
ズキン
痛いところをついてくるなあ
「私 自慢するわけじゃないけど 以外と料理上手なんだからね 最近 忙しいから これで我慢してるだけなの」
ニコニコしてる瞬
「本気にしてないでしょう その顔 嘘って書いてある」
<怒った顔も可愛いね>
「はいはい よく言われます」
私の日常において 瞬は大きな存在になっていった
この頃 よく同僚の男性から飲み会に誘われる
付き合い程度に参加してるけど
「最近 雰囲気 変わったよね 明るくなったし 元気だし」
たくさんの人から言われるから きっと そうなんだろう
取引先の社長が
「うちの息子が 貴女のこと気に入ってるんだけど無理にとは言わないけど 一度食事にでも 付き合って貰えませんか」
と お願いされた
二度ほど 一緒に仕事をした その会社の息子さん
私も このまま テレビの瞬だけとの生活を続けるのは まずいと 気になり始めていたとき
お義理半分で 食事に行った
世間で言うボンボンとは違って しっかりした考え方を持っていて かといって高圧的な性格ではなく 好感の持てる男性だった
自宅に戻り 瞬に相談した
<カオリン次第だよ お付き合いするのも しないのも>
「瞬は それでいいの?私が他の男の人と付き合うのに」
<気にしなくて いいから>
初めて 瞬のほうからテレビのスイッチを切った
社長の息子さんには 数日後 お付き合いしますと 返事をした
瞬には きょう彼が こんなこと言ったとか こんなところへ遊びに行ったとか 私からの報告ばかりを話す日々が続いた
テレビの瞬は いつもニコニコしながら 聞いてくれた
ある日 社長の息子さんから プロポーズされた