その3
会社の同僚に ネットゲームに詳しい男性が居るので 私が体験したことを話した
信じてもらえてない
ゲームの やり過ぎだよ
そのうちに リアルとバーチャルの区別がつかなくなったりして
面白がってる
ネット検索しても そんなゲームは見つからなかった
帰宅して 寂しさからテレビをつけて 空きチャンネルにした
瞬くんは まだ下を向いたまま
「瞬くん 聞きたいことがあるの このゲームって有料なんでしょ?いくらぐらい かかるのかなぁ?」
<ゲームと言えばゲームかな でも料金はかからないよ すべての決定権は カオリさんにあるのは確かだけけど>
下を向いたままの瞬くんは 元気なさげに答えた
「私 どうしたらいい? どうしたら こちらを向いてくれるの?」
<カオリさんが僕を必要としてくれるうちは 僕は存在していられるんだ 画面の左下に 二つのゲージがあるでしょ 上のは 僕のライフポイント 下のは 僕の心の健康ポイントだよ>
見てみると 二つのゲージがあった
ライフポイントのゲージは長いけど 健康ポイントのゲージは短くて赤くなってる
「ねえ 私 なにをしたらいい?瞬くんを必要とするって意味が解らないよ」
<特別なこと 要求してないよ 毎日何時間か こうして会って カオリさんといろんな会話をしてくれれば 健康ポイントも回復するんだよ>その夜は テレビに映る瞬くんと いろんな話しをした
会社のこと 趣味 初恋の人の名前が瞬くんだということも
途中から 瞬くんは顔を上げて私を見てくれるようになった
いつの間にか 私たちの距離は縮まっていた
健康ポイントも回復してきていた
「ところでさあ 瞬くんに聞きたいんだけど いつもテレビのリモコンがテーブルの下に移動してるんだけど 何か知らない?」
<だって カオリン 全然 僕を見てくれなかったじゃん だから気がついて欲しかったんだ>
どうやって そんなことが出来るのかとか 何故か気にならなかった
おやすみなさいをして その日の会話は終わった
翌朝 リモコンは テーブルの上に 立ててあった
イタズラしたなぁ 瞬ったら
朝は慌ただしかったので
瞬とは会わなかったけど テレビに向かって
「瞬 行ってきまあす」
と 声をかけ出かけた
リモコンが カタカタと動くのが見えた