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第五章、第六章

 次の投稿で完結?の予定です。予定は未定らしいですけど。


第五章

 あたしは胸苦しくなっている。

 あなたといっしょのときが一番安らぐ。

 そう思うと、いてもたってもいられなくて……静かに携帯を取り出し、あなたに電話をかける。

 着信しているけど、あなたは出ない。

 淡白な着信音が続く。

 誰かと話しているみたい。

 誰?

 この世界に誰か親しい人がいたのかしら。

 じれったさを感じながら、動悸が激しくなっていく。

 早く出て、いつものように話しかけて。

 嫌な感じがする。

 あなたに戻れとでも言っているのかもしれない。

 あなたはいつもすぐ電話に出たのに。

 あたしとともにいたいとまだ思っているはず。

 だからあたしがこうして電話をかけているの。

 これではだめだわ。

 あたしの耳元の携帯は変形していき、漆黒のカラスになって、飛んでいくの。

 あなたを呼びに。

 あなたのもとへ。

 あたしの想いを、すべて運んで伝えるのよ。




 そこはたぶん逢瀬の森。そんな気がしている。

 枯れ木がオレのまわりを取り囲んでいて、その風景がたぶんオレの心を表していて、そこで腰を下ろし、オレは人を待っている。

 それが誰なのか、思い出せない。だが、来たらわかるのだろう。

 オレの頭上を一羽のカラスが舞っている。

 誰かの想いを運んできているようだ。

 やがて旋回して、近くに倒れている潅木に止まる。

 涼しげな濃度はオレとカラスの息遣いを丹念に吸収している。

 カラスと眼が合う。

 オレはしばし見つめ、カラスの運んできたものを察するが、オレが待っている人ではなさそうだ。

 でも、オレを待っているような想いがひしひしと伝わってくる。

 しかし、それはオレには呑み込めない想いに感じ、拒否反応を起こして、カラスを追い払おうとする。カラスは宙を小刻みに舞い、逃げるが、また寄ってきて、オレを見つめる。

 あっちいけって!

 オレは苛立ちを覚え、近くにあった太い木屑をとり、なおも追い払おうとする。

 一瞬、強烈な怒りを、そのまま込めて、振り下ろした。

 かわそうとしたカラスはそのまま殴打された勢いで、のた打ち回り、やがて息絶える。




 例えば人間が何か事件を起こしてしまったとき、極端なありふれた事例として殺人事件を犯してしまったとき、その事件が怨恨のような単純のようなものではなくて、どこか猟奇的な様相を呈しているとして、そこまでに至る過程において何か兆候らしきものはあったのだろうか。美奈の姿を見ていると最近、僕のまわりの空気が薄れていくような不安を僕は感じている。呼吸は不規則になってくる。

 これは兆候だろうか。

 いや、考えすぎだ。きっと疲れているのだ。僕はそう言い聞かせて、押さえ込んでいる。漠然としたものは広がっている。

 僕は大抵、美奈の部屋でくつろいでいるのが日常だが、今日はバイトから帰ってきてから自分の部屋に帰り、隣の部屋へ行く気になれなかった。何も手につかなかった。

 僕が周囲に放つすべてが、この部屋に詰まっている。

 壁際のベットは最近美奈の部屋で寝泊りしていたから、妙にきれいで、その分僕は休めてないと思う。テレビは埃を被り、その上には寒い季節というのに九月の暦のままのカレンダー。雑然と重なっている雑誌やエロ本、コタツの上のカップラーメンの食べかすやコンビニ弁当のごみ、黒い箸は汚くカビて落ちていて、コンビニでもらった割り箸も何膳もあってどれが対なのかも分からぬまま、コタツの上ではあきたらず床にまで氾濫している。あたりに散らかるビール空き缶やペットボトル、チョコレートの包み紙、安っぽい灰皿から吸殻と灰が零れ落ち、窓際に投げ出された鞄、そして、フローリングの床にそのまま横たわる疲れきった衣服。

 隣のドアが開く音が聞こえ、僕の部屋のインターフォンが響く。美奈がきたのだ。僕は「待ってて!」と外へ叫んで、慌てて部屋の片付けを始める。

 中途半端なゴミが入っているコンビニ袋に思いのままにゴミを詰め、カップラーメンの残ったスープを流し台に流し、箸はそのまま流し台に放り出し、それをコンビニ袋に入れつつ部屋に戻り、ゴミ袋をむしりとるように用意し、空き缶やペットボトルを分別しながら、詰めてはいっぱいになる袋を結んではそれを角の方に投げ出し、新たな袋を取り出して、ゴミを詰め込み、何度かその動作を繰り返し、あらかた終わると部屋の隅に雑誌類を重ね、衣服を納戸に押し込み、僕の思考はとにかくいらないものを片付けようと瞬時の判断で埋め尽くされ、コタツの上が汚いと流し台に再び行き、くたびれたタオルを雑巾として水に浸し、踵を返して、コタツの上を拭き、一心に雑巾をかけ、コタツにつやが戻ったところで、床が汚いと掃除機を取り出すため、納戸を開け、先ほど押し込んだ衣服が溢れ出し、かまわず衣服を掻き分けて奥の方に掃除機を見つけ出し、豪快に取り出し、再び衣服を押し込み、納戸を閉めて、掃除機のコンセントをつないで、荒々しく起こった音を頼りに掃除機の吸引口を移動させ、コタツの下も汚いとコタツを退かしそこをかけ、終わったのでコタツを戻し、ベットの下も汚いとベットも退かし、氾濫していたゴミを袋に詰め込み、溜まった埃を掃除機で吸い取って、雑巾がけを重ね、概ねきれいになった床にベットを戻して、テレビの埃も取らねばと丹念に拭き始め、薄く画面に映った満足げな自分な顔を見て、微笑んだ。

 僕はそこで美奈が来ていたのを思い出し、慌てて玄関に駆けてってチェーンロッカーをはずして鍵を開け、ノブを回して扉を放ち、美奈を迎え入れる……はずだった。

 美奈はドアの前にはいなくて、暗くなった外の空気が視界を覆う。いつのまにか片付けに没頭し、その動作をもたらした動機に気づいたときはすでに美奈はあきれて自分の部屋に帰ってしまったのだ。

 僕は一端部屋に戻り、幾分きれいになった部屋を眺め、テレビの上のカレンダーに目をやる。「今日は何日だっけ……」と口にしつつ、美奈のことを思い、そのままにして隣の部屋へ向かった。




 人の心の奥底にはおそらく閉域というものがある。それは人に踏み込んでもらいたくない領域という暗黙の了解事項も含まれると思うが、それだけではなくて自分をよく見せようとする欲求的自我の領域をも含み込んだ、もっと広範な域で、何かしらの良心が押さえ込んでるものであり、かつそれは本来開けてはいけない負の魂の在り処でもある。

 余程優秀な心療内科の医師以外にはそれは覗けない。他人には覗けないし、普通の医者が診ても変だなという意識とともに彼らはそれを醸し出す 人間が診療に訪れた時、その人間を患者として扱いはするが、そこに積み重ねられる症状を説明するときどこか解釈学みたいな傾向をもたらしてしまうのは医者が悪いのではなく、患者の世界を理解しようとするあまりにどうしても感覚的なものが退いて科学的なもので判断し鈍化してしまうからではないだろうか。いくら統計的な数字や経験からもたらされるものであっても、本来人にはその人が持っている世界があり、それを他人が理解し切ることは出来ない。患者は医者の説明に違和感を感じても医者をよき理解者として信用するしかない。そうすべきなのだろう。美奈を担当する医者はどこまで美奈を理解出来たのだろう。医者の説明に美奈は納得しているのだろうか。薬は飲んでいるようだが、僕には良くはなっていないように感じる。むしろどんどん美奈は自分の世界を自閉していき、内部で冷たげで恐ろしげな世界を構築しているような気がする。医者はその傾向みたいなものは読み取り、適切と思われる処方をしているはず。でも、効果的な解決策があるとすればやはり自分で現実に翻弄されながら、耐えながら、それでも無理してでも生きていこうとする自分を発見し、無理にでも行動し、その結果もたらした現象を実感することだと思う。そこで充実感が得れれば人は戻っていけると思う。こんなことを考える僕はやはり甘いのだろう。そう簡単に戻せるものであったら心の病なんて持つ人は必ず社会に戻っていけるはず、現実には戻れるのはわずかだ。

 生きていくうえで顕になる美奈の吐息、そこに滞留するような痛苦に僕は恐れを感じている。僕はそんなことを考えながら、お互い服を着たまま抱き寝転んでいた。

「タクの部屋のベランダにカラスの死骸があったね」

 美奈は僕から身体を剥がし、ベットから出る。そして、机に二つ湯呑茶碗を並べ、ポットのお湯を急須に入れている。その動作は温もりを感じさせるというよりは無機的なものだった。

「えっ!そんなものあった?きもちわりーな、どうしようかな」

 僕は部屋に行って確認しようかと腰を上げかけたが、美奈は事も無げに言う。

「そうお?あたしには別になんとも思わないわ。一瞬剥製にしたらどうかしらと思ったの。でも、もう腐りかけていたからだめね。それに剥製にするなら猫ね。たぶんかわいいわ」

 美奈はいつ僕の部屋に来たのだろうかと疑念を浮かべる僕を気にせず、楽しげにして語る美奈はやはりちょっと怖さを覚える。

「きもちわりーよ」

 冷めた気持ちを抑えようとして、陽気な言葉を返そうとしたが、僕の声は震えてしまっていた。

「出来れば黒猫がいいわね」

 そんなことを口からこぼしながら、お茶を差し出す美奈の表情を量りかねた。何かに憑かれたような使途不明の美しさがあった。僕は身震いをして、全身に鳥肌が立つのを感じながら、僕はまた誤魔化すために湯呑茶碗を離した手を掴み、促すように手繰り寄せ、静かにキスをした。美奈に触れた僕はその冷たさに一気に心が冷めていくのを、受け止めようとしていた。



 

 第六章

 職場にいる僕はいつも憂鬱だった。すぐ傍では正社員同士が通路で打ち合わせらしきものをしている。それはこの営業店舗の朝番、夜番の引継ぎの光景だった。取引先の社員が来訪する時間だの、僕は棚の商品を整理しながら、耳をそばだてる。年齢的には僕より若く、溌剌とした印象のある社員たちだ。

「また、店長に怒られるだろう。ちゃんと引継ぎしているのに、いつも細かいところに話持ってって、ちゃんとしてないだの、一方的に怒鳴り散らすんだもんな」

 朝番の小太りの社員が嫌そうに文句を言っている。

「そうだよな。ちょっと反論したら、こないだもそうだったとか言い始めて、過去の話を持ち出してきて、いつの話だよっていう感じだし、そんなにやって欲しいなら、社員を切ってばかりいないで、残せよってなー。こちらは黙って相槌を打ったり、返事しながら終わるまでいるしかない。こないだなんて、二時間だぞ。話してんの!おかげで余計仕事できない。あの馬鹿っ!」

 神経質そうな表情で笑みを交えて語る夜番の社員。しばらく店長の悪口を言いながら、盛り上がっていたが、

「それじゃ、帰るから。あとヨロシクネ。引継ぎしたからね」

 小太りの社員はそう言って帰る。

「お疲れ様!」

 夜番の社員は何事もなかったように、パネルやら取り付け作業をし始める。そこへ店長がやってきて、夜番の社員に問いかける。

「苦情の件は聞いたか?」

「聞いております」

「どうなった?」

「なんかお客様に連絡取れなかったらしいです」

「連絡が取れないじゃないだろう。そういうところもちゃんと引き継ぐなりしとけ!あいつが処理するんだな?」

 まくし立てる店長は柄が悪い。

「たぶん…」

「たぶんじゃない。そいうところだ。おれがおまえらに何度も言うのは。何度言わせるんだ!おまえもおまえだが、あいつも使えん奴だ。仕事はあまいもんじゃねえ。普通の会社だったらクビだ。クビ!前々から言っていたろう。あいつはもうパートにでもしてしまえ、うんざりしているんだ。ようするにあいつがお前にちゃんと引き継がなかったということだな。いつもそうだからイヤなんだ!」

「そうですね。そうですね。引き継がれないですね。いつも」

 調子よく店長に相槌を打つ。

 僕は聞いていても関わらないようにしていた。

「わずらわしい。それはないじゃないの。かわいそうだよ。その件はちゃんと言って帰ったじゃない。仲がいいのだか、悪いのだか、よくわからない。苦痛すぎる。妙に意気投合したと思うと、それだし……」

 僕の中では独り言を繰り返している。

引継ぎが出来ないような人の少なさと忙しさもあるが、たまにこういうことも重なっているし、店長が怒るのも無理はないが、店長も店長でたまに裏に連れて行って手や足を出すので、社員やパートは嫌い、話をろくに聞かなくなっている。この店は経営が傾き、他の会社の支援を受け、やってきたのが店長である。確かにこの店の組織はボロボロだ。提出物は期日を過ぎてから上がってくるし、下手をすると店長が催促するまで上がらないときもあった。苦情処理をやっとけと店長が指図しても、社員は気持ち的にも溜まっていく仕事の量的にも、もう聞く耳のない状態だし、指図も実行しようとしても、店長が滔々と怒声を浴びせ、時間がなくなってしまうし、そこに新たな問題も発生してくるし、本来やるべき毎日の業務もあるのに出来ないし、問題は山積していくのだ。それが現れてくる現象なのだ。僕には結局人の放つ重力に翻弄されるだけで、到底理解できない。それが世間なのだ。仕事に手がまわらないならとやってあげても「調子こいてる」とか陰口を叩かれ、不愉快にさせないために前向きな発言をしても、「かっこつけてる」と言われるし、なんだかどんどんむなしくなるだけで、それでもやろうとするのだが、やったはいいが自分に向けられる中傷ばかりがまとわりつく。

「どうしようもない。見たくない。関わりたくない。こんなところにいたくはない。そんな心境が態度に出ている。危ない。戻れ!……もうどうでもいい」

 僕の心中の独白は葛藤を抱えながら、結局物事を投げ出している。

合理的に分かるということが正しいと信じてきたが、どうも違う。それに世の中合理的に分かるという事実はあまりにも少なすぎる。今の自分を取り巻く状況がそうだ。そういうものだという諦めみたいなものが漂っている。

擬態と擬装を繰り返しながらも、人はそれを糧として、成長するのだろうか。僕はそんな人間になれそうな気がしない。自分の弱さがモロに出てしまって、やる気が戻ってこない。

 どこかで立ち止まるべきなのだ。必要なのは外向きの視線であって、しかし僕の態度は逆に世間から逃げている。現実に対して弱腰で浮いてしまう僕は生きるために何が足りないのだろう。実は分かっているのに出来ないだけ、それが世間的な価値観からみた僕の実力。それが人から馬鹿にされる要因なのだ。




 コンビニ、ラーメン屋、飲み屋、大型スーパーなど、行く先々で店の名前は違うのだけどどれもありきたりで、何か変化が欲しいと僕は思った。 都市風景の郊外化は進んでいるとどこかテレビに出演していた学者が指摘していたが、自分の生活に困らなければ便利に越したことはないと思っている僕には理解できなかったが、それにしても車窓から見える風景は代わり映えがしなくて、なんだか憂鬱になってくる。僕はバスに乗っていた。

 どこを走っているのか、そんなことを思いながら、薄暗い風景に頼りを求めていた。ごくありきたりなネオンサインが流れて行く。やはり自分の居る場所が見当が着かず、中ほどの座席に座っていた僕は仕方なく、前に座るスーツ姿の男性に声をかけた。

「すいません。ここ、どこですか?」

「どこまで行こうというのかな?」

 うつむいているが酔って眠っていたのだろうか。しゃがれた声で聞き返してくる。

「たぶん終点まで、そこが僕の下車するところだと思うのですが」

「終点?方向が逆だ。このまま行けばいつまで経っても着きやしない」

 笑うように返ってくる言葉は不思議と違和感はなかった。

「間違って乗っているのかな」

「間違ってはいない。たぶんあなたにとって終点はすぐそこなのだよ」

 何か会話がかみ合わないが、僕はなぜか懐かしさを感じた。

「あなたはどこで降りるのですか?」

「私はまだかわからない。わからなくなってしまったんだ」

 哀しげに男性は顔を上げた。僕は不快にさせないように、男性を観察した。どこかで会ったようなその顔に戸惑いを覚え、僕は少々大げさに話を続ける。

「何言っているんですか。このバスに乗ったのはあなたでしょう。バスはお客を目的地に運ぶ交通機関です。お客は当然目的地に向かって走るバスを選び乗車する。どこかに行くためにあなたも乗ったのでしょう?」

「でも、あなたも目的地がわからないで乗っているではないですか。でも、あなたの言うとおりかもしれません。でも、違うかもしれません。私はわかりません。ただ、あなたは私よりマシだ。ああ、私はなんてことをしてしまったんだー」

 男性は手で顔を覆い、苦悩の表情をして続ける。

「こうしてあなたと出会ったのは偶発的なのです。でも、何か力が働いてるのか。私にはもう永遠に解けないような悩みだ。本来私はあなたとも出会う資格はないのに、ないはずなのに……たぶんあなたが目的地と逆方向に行っているからだ。でも、あなたは気づく。そんな気がする。あなたが羨ましくて、妬ましくて、どうしようもなくなっていく」

 僕はこういった人々を呼び寄せるのだろうか。類は友を呼ぶらしいが、そんなものは信じたくもない気分だ。男性は僕の存在を通り越して、独り言を繰り返す。

「過ちを犯してしまった。実につまらないことをしたものだ。欲望渦巻く世界だったのだ。妬み、憎しみ、争い、そうした争いを潜り抜けて自分が勝ち残るための世界にいたのだろう。そうなのか。過ちでもなんでもない。むしろそういう世界を生まれたのが間違いだったのだ。……言い聞かせても晴れないこの気分はなんだ。どんどん沈んで落ちていく。さ迷い続けるのはつらい。妻はどうしているのだろう。そうだ、子はどうしてるのか。私のかわいい子。目に入れても痛くないほどかわいがった子。探さねば、連れて行かねば」

 男性に聞いたのも間違いだった。でも、人には違いない。いろんな人がいるものだとどこか疲れた表情を隠すように、半分浮かしていた腰を下ろし、僕は背もたれに身体をあずけた。僕は人を批判するつもりはないし、この男性だけではなく、他の疲れた人にも敬意を表したいが、そんな僕を世間は馬鹿だの、頭おかしいだの言うし、それを聞いているのはわずらわしいから、僕は何もなかったという態度で出して、結局自分も変な奴にならざるをおえない。僕の偏った態度で婉曲に心を示すのは僕を理解して欲しいという願望の現われに過ぎなくて、そんな奴を世間の人々が理解できるはずもなく、僕は次第に孤立していく。そんな僕は負け惜しみにつぶやくしかできない。

「生き方なんてさ。人がとやかく言うべきことでもない」

 そんなことを考えながら、偏頭痛と胃もたれが僕の身体を硬くさせる。






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