クルシミマスケーキ
スーパーでクリスマスケーキの予約ポスターを見て、思い付きました。
全部書いてから、チャッピーに読んでもらいました。
志乃さん、本当の体型とは無関係です。
怒らないでね。
ーーもうシングルベルは聴きたくない。
今年、四十五歳になるジュンは、そう決意する。
かれこれ見合い三十九連敗中。
「愛してるよ、志乃。君に全てをかける」と言いながら、志乃がアプリ経由で
送ってきた、スマホのかなりポッチャリ系の写真をベッチョリ舐める。
この時、スマホが鳴った。相手は分かっている。志乃だ。
「もしもしジュンさん、クリスマスイブは、私のマンションで過ごしませんか。
いつもごちそうして頂いているから、イブには私の手料理を食べて欲しいの」
ついにこの時が来たか、とガッツポーズをしながらジュンは、
「ありがとう。じゃそうさせて下さい。何か欲しいプレゼントとかありますか。
遠慮なく言って下さい」と声だけは平静を装い、料理より君を味わいたいという
ホンネは言わずにすんだ。
イブ当夜。
ジュンは、花束とワインを持って、志乃のマンションを訪れる。
「お待ちしていました。さっ、どうぞ」
志乃は、笑顔でジュンを向かい入れテーブルに案内する。
テーブルの上には、唐揚げ、焼き肉、コッテリとした中華や、
ブドウや桃の甘い果物など、カロリーが高そうな料理ばかり並
んでいた。
げっ、まいったぁとジュンは引いた。
というのも彼は糖尿病で、主治医から、カロリーの高い食品
を控えるよう言われていたのだ。
しかし、この場では志乃の気持ちを想像して、
「わぁ、美味しそうですね。頂きます。ありがとう」と、
多少引った笑顔を見せ、これどうぞと花束とワインを差し出す。
テーブルに着くと、志乃はこれ美味しのよ、どうぞ、とジュン
にグラスを持たせ、ワインボトルの様な瓶から飲み物をつぐ。
ありがとうと言い、ひと口飲んだジュンは、その甘さに、ヤベえ
と思わず吐き出しそうになったのを我慢する。
糖尿病になってからジュンは、全く甘い飲料は飲まないように
していたのだ。
これを志乃は、美味しそうに喉を鳴らして飲み、料理を何かに
憑かれたように食べている。
この人、こんな食べ方だから、相撲取りみたいな体型なんだと、
やっぱりこの人とは、結婚は止めておこうかと一瞬チラッと頭を
よぎる。しかし、もうシングルベルは聴きたくない、絶対、結婚
するんだ、と無理やりクソ甘い飲料を飲み、脂ぎった料理を平らげた。
料理を食べ終わり、ヤレヤレと安堵していると、志乃は、
「お待ちかねのケーキです。どうぞ」そう言って、ジュンに
取り分ける。
「今夜くらい、いいじゃない。カロリーとか気にしないで、思い切り
食べて」
ジュンは、志乃の笑顔が閻魔大王に見えた。
彼のケーキ皿を受け取る手は、小刻みに震え始める。
世の中、糖尿病患者だって、たまにはケーキ食べたいんです。
だけどねーー、
読んで頂きありがうございますm(_ _)m




