狩る者たち
世界最高機関世界政府本部、狩人協会本部。重々しい名前とは裏腹に荒れきった課。
課と言っても名前ばかりで、会議はないし、責任者も名ばかり。
「おろ?協会長だけ?」
応接室のような部屋で豪奢な椅子に座って紅茶をすする人影に緋色は軽く頭を下げる。
「真面目に来てくれるのは貴女くらいのものですよ」
長い金髪に縁取られた顔は女とも男とも見える。その口から発せられる声も、高くもなく、低くもなく。顔にも特に目立った特徴もない。
よく言えば普通、悪く言えば地味。
それとは対照的に、緋色は目を引く容姿だ。金糸のような髪と、金色の目は僅かな光の下でもキラキラと輝く。身長は155センチ程で小柄だが、逆にそれが猫のような可愛らしさを印象づけている。
「何人狩ってきましたか?」
「三人。一人は元人間で二人は純血種。えーっと、こいつと、こいつで、あと、・・・・・・むー、あいつ!」
顔を確認しながら掲示板に貼られた顔写真をはがしていく。最後の一人は高いところにあったので、指で示すかたちになったが。
「二人は死体処理班呼んだけど、一人は喰っちゃった」
可愛らしく舌を出して「えへへ」と笑う。
「まぁ、いいでしょう。殺したことには変わりないのですから」
ドサリ、と椅子に腰を下ろすと机に積み上げられた資料を適当に取ってめくる。
「おー、緋色がいるー」
扉が開き、入ってきた男が気の抜けた声でそう言うと緋色にすり寄る。
「おはよ、氷」
黒髪に赤い虹彩の長身の男、氷を軽くあしらいながら資料に目を通す。
「ちょっと、氷!置いてかないでよ!」
勢い良く扉を開けて入ってきた少女は緋色と協会長を見ると頬を赤らめて頭を下げる。
「おはよ、弥生」
「何人狩ってきましたか?」
「5人ー、凄いだろー」
緋色に笑顔を向けて氷が自慢気も無く言った。