金色の月と血色の少女
Iris mangiare una ragazza vampiro, la luce della luna splende in un colorito spento.
妖しく、美しく光る月の下で赤い飛沫が舞う。金糸の髪が揺らめき、金色の虹彩が光を失う。
木霊するのは、卑下な笑い声。背筋が凍るような、体中の毛が逆立つような、人が嫌悪するような、笑い声。それを発するのは、この世の者とは思えないほどの美貌の女。
艶やかな黒髪に包まれた白い顔に美しい笑みが蔓延る。形の良い唇の端を持ち上げ、ぞっとするほど妖艶な紅い目を細めて、誰もが見惚れるような表情を顔面に彩って。
「本当に、ハンターなんて大嫌い。洋服は汚れるし、忌々しい薔薇十字形のせいで治癒力は落ちるし。でも、」
たった今倒した少女の傍にしゃがむと、少女を抱き寄せる。少女の白い首を指でなぞりながら、少女の傷口から溢れ出る血の香に恍惚とした表情となる。
「こんなにも美味しそうな血が飲めるのだから許してあげる」
そう言って、女は口を開け、鋭すぎる犬歯を少女の首に近づけた。
――ブツリッ
肉を突き破る鈍い音が響き、血の香がいっそう充満する。
「ひっ、あ、ああ」
女が苦痛に喘いだ。
女の首に少女の犬歯が埋まっていた。月光に、少女の目が血の色に煌く。
「くっ・・・・は、なせぇっ!」
女は自分の首から無理矢理少女を引き剥がすと、よろよろと後退する。
怒りと驚きに見開かれた目で、少女を見る。
少女は立ち上がると、微笑んだ。美しいその笑みが呪わしく見えるのは、恐らく顔に飛び散った血のせい。
「お前、いったい・・・っ」
少女は口元の血を拭うと、冷たく女を見つめた。そして、一歩前に進んだ。
「私?そんなことも分からないの?」
そして、少女は女の視界から消えた。
「っ!?」
「私は、貴女の敵よ」
ソプラノの声がそう告げ、女の首に再度痛みが奔る。
一瞬にして女の背後に移動した少女は女の白い首筋に牙を埋め、本能のままに血をすする。
「くっ!こ、のっ」
少女の牙から逃れようと、もがく女の体を少女の腕が貫いた。
一度女の胸を貫いた腕を引いて、女の心臓を鷲掴む。
「っ!!!!」
痛みに声にならない悲鳴をあげる女は、もう先刻の美しさを持ってはいなかった。
「はっ、吸血鬼って、本当に醜い生き物ね」
女の首から顔を上げてそう笑うと、少女は腕を引き抜いた。手には、しっかりと女の心臓が握られている。微かに脈打つそれを握りつぶすと、地面に横たわる女を見下ろす。
「哀れね」
そう呟くと、女の頭を踏み潰した。