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「隠しても無駄じゃ! 童もソフィアも、あの手の物語を浴びるほど読んできたからのう!
そなた、どこの誰じゃ?
どこかの作品の世界から来たのか?
それとも、ただの転生者か!?」
ノクティアがアウレリアの肩を掴んで揺さぶり、ソフィアが背後から逃げ道を塞ぐ。
王女の威厳も、侍女の生真面目さもどこへやら、二人の顔は完全に
「推しについて語る同担を見つけたオタク」
のそれであった。
「ま、待って! 降参、降参だから!
……そうよ、私も別の世界の記憶があるわ」
アウレリアが観念して白旗を上げると、ノクティアは「やはりか!」と歓喜の声を上げた。
ソフィアは深々と、しかしどこか誇らしげに頷いた。
「やはり、殿下の目に狂いはありませんでしたね。
アウレリア様のあのアクティブな動きと、魔法が効かないという特異体質……もしや『主人公補正』ではないかと睨んでいたのです」
「……ソフィア、それはちょっと言い過ぎじゃない?」
思わぬところで正体がバレてしまったアウレリアだったが、この二人と「前世の価値観」を共有していると分かったことで、不思議な連帯感が生まれたのも事実だった。
「……で、殿下。まさか私を断罪するために呼んだわけじゃないわよね?」
「当たり前じゃ!
転生者は貴重ゆえな。……しかし、話はここからじゃ。アウレリア、そなたにこれだけは聞かねばならん。
……この世界は、乙女ゲームの世界か? それとも、ミステリー小説の世界か?」
ノクティアが真剣な表情で問いかけたがアウレリアは、呆れてため息をついた。
「はぁーーーあのね!…」
アウレリアが話し始めたところで
コンコンと扉を叩く音が響いた。
ノクティアは、生き生きとした表情でアウレリアの言葉を待っているが、時計の針は15時を指していた。
「王女様、王女主催のティータイムですよ。
主催者が遅れては話になりませんから、この話はまたあとで。」
アウレリアは、2人の視線を振りはらい、扉まで歩く、「はい、ティータイムですよね?」
戸を開きなが答えると、そこには食堂車のウェイター兼コンシェルジュが品よく立っており
「談笑中申し訳ありません。そろそろ皆様がお集まりになりますので。」
ノクティアは、アウレリアに急かされるように部屋を出て、食堂車へ向かうことに納得してないようで
「アウレリアよ!必ず先の質問には答えて貰うからな!!」
アウレリアもほとほと呆れて
「わかったわよ!それよりゲストを待たせるような王女は嫌われるわよ」
ノクティアを食堂車へ連れ出した。




