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「ソフィアちゃんね。
じいちゃんの代から来てる常連だよ。
転生者の本が好きでさ、うちの“異世界棚”に入り浸ってた」
ルークが頷く。
「ノクティアが言ってた通りだな」
マックは続ける。
「そんなに裕福じゃないみたいで、本を買うのは数ヶ月に一度くらい。
でも、読むのは好きでね。
買わなくても、よく見に来てたよ。
……ここ数週間、顔を見てないのが逆に不思議なくらい」
アンディが眉を寄せる。
「行方不明……というほどではないにせよ、気になりますね」
プロビーは本の山に寄りかかりながら言う。
「で、ソフィアちゃんはどこに住んでんだ?」
マックは指を店の外の方へ向けた。
「この近くの長屋だよ。
田舎から出てきて、薬草屋で働いてたはず。
あの子、真面目で優しい子だったから……
変なことに巻き込まれてなきゃいいんだけど」
アウレリアは静かに息を吸った。
――ソフィアの輪郭が、少しずつ見えてくる。
「ありがとう、マックさん。
その長屋、案内してもらえる?」
マックは頷き、カウンターの奥から鍵束を取り出した。
「もちろん。
ソフィアちゃんのこと、気になってたんだ。
力になれるなら、案内するよ」
こうして、次の手がかり――
ソフィアの住んでいた長屋へ向かうことになった。
ソフィアの住んでいた長屋に着くと、ちょうど大家が外に出てきた。
プロビーとアンディが前に出る。
「すみませーん。ソフィアちゃんの部屋、ちょっと見せてもらえません?」
プロビーが軽い調子で声をかける。
大家は眉をひそめ、警戒したように二人を見た。
「はぁ? あんたら誰だい。勝手に部屋なんて見せられるわけないだろ」
アンディが丁寧に頭を下げる。
「事情がありまして。行方を心配している者がいまして……」
しかし大家は渋い顔のままだ。
「そう言われてもねぇ……勝手に鍵を渡したら、あとで何言われるか……」
そこでプロビーが、わざとらしくため息をついた。
「そっかぁ……
最近この辺、移民が勝手に住みついてるって噂あるんですよねぇ。
管理局に“確認”入れたら、ここも調査入るかもしれないなぁ……」
大家の顔色が一瞬で変わった。
「ちょ、ちょっと待ってくれよ!
管理局なんて来られたら困るんだよ!
ほ、ほら、鍵だ鍵! 見るだけならいいから!」
慌てて鍵束を差し出す大家。
アンディは額に手を当ててため息をついた。
「兄さん……脅すような真似はやめなよ。
大家さん、すみません。兄は口が悪いだけで、悪気はないんです」
「悪気はないけど効果はあるんだよなぁ」
プロビーは肩をすくめながら鍵を受け取った。
大家はまだ落ち着かない様子で言う。
「ほ、本当に見るだけだぞ? 壊したりするなよ?」
「しませんって。俺ら、こう見えて仕事は丁寧なんで」
アンディは苦笑しながら兄の背中を押した。
「……はぁ。行こう、兄さん」
こうして、双子は鍵を手に入れ、
ソフィアの部屋へと向かうことになった。
ルークとアウレリアは2人をジト目で見ていた




