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ルークはアウレリアに向き直り、
「ノクティアは、昔から何をやっても完璧にできるから、こーんなに偉そうに育ってしまったのさ。
それに、ここ数年は変な趣味も増えて、さらに“変わり者”と言われてる」
「はぁ〜」と、ルークもほぼ杖をついて呆れていた。
ノクティアは真剣なのにふざけた口調で、
「言いたい者には、言わせておけばよいのだ。
それに、妾の趣味は変わっておらぬわ」
アウレリアは興味津々に、
「ノクティアさんの趣味って、なんですか?」
「よくぞ聞いてくれた!」
と言わんばかりに前のめりになったノクティアは話し始めた。
「それこそ、妾の依頼にも繋がる趣味じゃ。
妾は、転生者の研究や、書物を集めるのが趣味なのじゃ」
アウレリアははっとして、ルークを見た。
ルークは、首を横にぶんぶん振って「言ってない」と否定の身振りをした。
ノクティアは二人のやり取りに目もくれず、言いたいことを語り始めた。
「……そなたらに話しておきたいことがあるのだ」
ノクティアはワイングラスに触れもせず、遠くを見るような目をした。
「妾はな、セラフィーナとも親しくしておるゆえ、転生者の話は前から耳にしておった。
興味半分、物語として楽しむ程度であったのだが……ある日、家臣の一人が“巷で話題の転生者の半生を描いた書物”を持ってきてな」
ノクティアは小さく息をつく。
「それを読んで、妾はいたく感動してしまったのだ。
それからは、似たような書物を集めるようになった。
フィクションも、実話も、妾にとっては宝物のようでな」
アウレリアは黙って耳を傾ける。
「行きつけの本屋で新しい本を探していた時のことだ。
一人の少女と出会った。ソフィアと名乗ったその子は、妾が王女とは知らず、ただ“異世界ものが好きな者同士”として話しかけてきたのだ」
ノクティアの表情が、ほんの少し柔らかくなる。
「ソフィアは純朴で、本当に転生できると信じておった。
妾は……その素直さが可愛らしいと思っておった」
しかし、ノクティアの声は次第に沈んでいく。
「だが、ある時からソフィアの言葉が変わっていった。
“転生するためには、この世の生を終わらせなければならない”
“転生にはお金が必要だ”
……そんな危ういことを口にするようになったのだ」
アウレリアは息をのむ。
「妾は心配した。
誰かにそそのかされているのではないか、と。
だが、それ以来ソフィアは姿を見せなくなった」
ノクティアは真剣な眼差しで二人を見つめた。
「――ソフィアの行方を、探してほしい。
妾が頼みたいのは、それだけだ」
その声音には、王女としての威厳ではなく、一人の少女としての切実な願いが滲んでいた。




