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エミルの告白が途切れたとき、
アウレリアは静かに息を吸い込んだ。
「……でも、エミル。
リディアの遺体は……森で見つかったの」
その言葉に、母親がびくりと肩を震わせた。
アウレリアはゆっくりと母親の方へ視線を向ける。
「――あなたが、リディアさんの遺体を動かしましたね」
部屋の空気が一瞬で凍りついた。
ルークがはっとして母親を見る。
「……まさか……」
母親は唇を震わせ、
次の瞬間、崩れ落ちるように床に膝をついた。
「……ごめんなさい……ごめんなさい……!」
エミルは目を閉じ、
「……やっぱり……」
と小さく呟いた。
アウレリアは黙って母親の言葉を待った。
母親は涙を拭うこともできず、
震える声で語り始めた。
「……あの子は……小さいころから病気で……
昼間は外に出られない……
友達もできない……
人並みの人生なんて……送らせてあげられなかった……」
その声には、長年積み重なった罪悪感が滲んでいた。
「だから……夜に出かける集会だけは……
止められなかったんです。
あの子が……唯一、外の世界と繋がれる場所だったから……」
母親は顔を覆い、嗚咽を漏らした。
「でも……集会に行くと……いつも様子がおかしくて……
薬物を使っているんじゃないかって……疑っていました……
でも……何も言えなかった……
言ったら……あの子の居場所が……なくなる気がして……」
ルークは拳を握りしめ、
アウレリアは静かに耳を傾け続けた。
母親は震える声で続けた。
「……あの日……いつもより帰りが遅くて……
心配になって探しに行ったんです……」
その先を言うのが怖いように、
母親はしばらく言葉を失った。
「……見つけたとき……
エミルは……血まみれで……
そばに……女の子が倒れていて……」
エミルは顔を伏せ、
母親の言葉を止めようとはしなかった。
母親は涙を流しながら続けた。
「私は……川でエミルの体を洗って……
家に連れ帰って……寝かせました……」
そして、震える手で胸を押さえた。
「リディアさんの遺体は……
荷台に乗せて……森まで運んで……
そっと……寝かせました……」
ルークは目を閉じ、深く息を吐いた。
アウレリアはただ静かに、母親の苦しみを受け止めていた。
母親は泣き崩れながら言った。
「……あの子を守りたかったんです……
でも……私は……取り返しのつかないことを……」
エミルは弱々しく母親を見つめ、
「……お母さん……僕のせいだよ……」
と呟いた。
その声は、
誰よりも自分を責めている少年の、
深い深い絶望の響きだった。




