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「ドラキュラ……?」
カインの口からその単語が出た瞬間、
セラフィーナの目がキラッと輝いた。
「ちょ、ちょっと待って! 今“ドラキュラ”って言った!?」
受信機を抱えたまま、彼女は興奮気味に前のめりになる。
アウレリアとルークが思わず顔を見合わせた。
レオンがカインの注意を逸らさないように会話を続けている横で、
セラフィーナは小声で早口にまくしたてた。
「ドラキュラってね、ただの吸血鬼じゃないのよ!
“夜の王”って呼ばれる存在で、
古い伝承では人の精神を支配したり、
恐怖や欲望を増幅させる象徴として扱われてるの!」
ジュリアンが呆れたように眉を上げる。
「セラフィーナ、今は講義の時間じゃないぞ……」
だが、セラフィーナは止まらない。
「しかもね! 最近調べてたんだけど――
あの橋を抜けた先の廃教会、覚えてる?
あそこ、今は“夜の王を崇める宗教団体”が拠点にしてるの!」
アウレリアが息を呑む。
「宗教団体……?」
「そう! 正式名称は“夜影の聖堂”。
ドラキュラを“真の進化した人間”として崇拝してる集団よ。
ミラーの噂が広がり始めた頃から、
あの橋の周辺で信者の出入りが増えてるって記録もあったの!」
ルークが険しい表情で腕を組む。
「つまり……カインが見た“ドラキュラ”ってのは、
その宗教団体と関係してる可能性があるってことか」
セラフィーナは力強く頷いた。
「そうかもねー」
アウレリアが考え込む様につぶやく
「ミラーの作用で“本能が暴走したカイン”が、
ドラキュラのイメージをまとって見えたのかもしれないし……
あるいは、宗教団体がミラーを利用して
“ドラキュラの再現”を試みてる可能性もある」
ジュリアンは深く息を吐き、
「……リディアの事件も、そこに繋がってるのかもしれないな」
と呟いた。
アウレリアは胸の奥がざわつくのを感じた。
橋の下、ミラー、ドラキュラ、そして宗教団体――
すべてが一本の線で繋がり始めていた。




