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異世界転生したら子供探偵やってみた  作者: 紬衣琉


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売人から「カイン」の名を引き出したあと、取り調べ室を出たハロルドは、

 観察室にいる三人へ軽く手を挙げた。


 「……よし。核心に近づいたな。

  カインについては、うちの課で徹底的に洗う。

  記録も、足取りも、仲間も全部だ」


 その声は疲れていながらも、どこか頼もしさがあった。


 アウレリアが心配そうに近づく。

 「ハロルドさん……大丈夫?無理しないでね」


 ハロルドはふっと笑い、アウレリアの頭を軽く撫でた。

 まるで自分の娘に向けるような、優しい仕草だった。


 「心配してくれてありがとな。

  でも、こういうのは俺の仕事だ。

  君たちは君たちのやるべきことをやってくれればいい」


 ルークが腕を組んで頷く。

 「頼りにしてる。カインの情報が分かれば、事件は一気に動く」


 ハロルドは資料を抱え直し、背筋を伸ばした。

 「じゃあ、俺は規制薬物対策課に戻る。

  カインの過去も、仲間も、潜伏先も全部洗ってくる」


 ジュリアンが敬礼するように軽く頭を下げた。

 「お願いします、ハロルドさん」


 「任せとけ。……アウレリアちゃん、無茶はするなよ」


 そう言い残し、ハロルドは廊下を歩き去っていった。

 その背中には、父親としての優しさと、刑事としての覚悟が同時に滲んでいた。



アウレリアは背中を見ながらさみしく思う

「あの人みたい…」

規制薬物対策課の事務所へ戻っていくハロルドの背中を、 アウレリアはしばらく黙って見つめていた。



ルークは静かに、アウレリアの横顔を見つめた…










 アウレリアのハロルドを見つめる視線について、ルークが、帰り道でふと尋ねた。


 「……さっきから、ハロルドさんのこと見てたね。 何か気になるのかい?」



 アウレリアは歩みを緩め、少しだけ目を伏せた。

 冬の風が髪を揺らし、彼女の横顔に淡い影を落とす。


 「……前世のことを思い出したの」


 ルークは驚いたように眉を上げたが、急かさずに黙って耳を傾けた。


 「前の世界で……私には夫がいたの。

  正義感が強くて、困っている人を放っておけない人だった。

  それに……子どもが生まれてからは、すごく子煩悩でね。

  いつも笑って、家族を大事にしてくれた」



 アウレリアは小さく笑った。

 懐かしさと、少しの切なさが混ざった表情だった。



 「ハロルドさんを見ていたら……思い出しちゃったの。

  あの優しい目とか、家族の話をするときの声とか……

  なんだか似てる気がして」


 ルークはしばらく黙っていたが、やがて穏やかに言った。


 「……この世界にも、その人がいるって感じてるんだろ?」


 アウレリアはゆっくり頷いた。


 「うん。どこかに“いる”って分かるのに……探せない。

  名前も、顔も、全部ぼんやりしてて……

  でも、確かに愛していたってことだけは覚えてる」


 ルークは空を見上げ、吐く息が白く消えていく。


 「前世の記憶なんて、俺には分からないけど……

  君が大事にしてるものなら、きっと意味があるんだろうな」


 アウレリアは少し照れたように笑い、ルークの前に歩き出てひらっと振り返り。


 「ありがとう、ルーク。

  ……大丈夫。今は“今の私”として、やるべきことをやるだけだから」


 その背中は、冬の空気の中で静かに強さを帯びていた。


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