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セラフィーナが魔力解析機をミラー検出機に変えるため研究室へ戻っていった。
「後は、頼んだのよーアウレリア!」
ルーク、アウレリア、ジュリアンの三人は、取り調べ室の隣にある観察室へ案内された。
分厚いガラスの向こうでは、ハロルドが椅子に腰を下ろし、
腕を組んだまま売人の男をじっと見つめている。
男はフードを深くかぶり、黙り込んだまま動かない。
質問にも一切答えず、ただ机の一点を睨みつけていた。
ジュリアンが小声で呟く。
「完全黙秘か……」
ジュリアンも腕を組みながらガラス越しに目を細める。
「取り逃がした奴の情報を持ってるはずなんだがな」
アウレリアは不安そうに唇を噛んだ。
「このままじゃ、犯人に辿りつけない……」
そのとき、ハロルドがゆっくりと身を乗り出した。
「なあ、お前。黙ってても状況は悪くなるだけだぞ」
売人は鼻で笑った。
「どうせ俺は終わりだ。何を言ったって変わらねぇよ」
ハロルドはため息をつき、資料を閉じた。
そして、まるで雑談でも始めるような穏やかな声で言った。
「……お前、家族はいるか?」
売人の肩が、わずかに揺れた。
「娘がいるんだろ。まだ小さいって聞いた。
お前が長く刑務所に入れば、面会も難しくなる。
だが――“比較的緩い場所”なら、家族が会いに来やすい」
ルークが驚いて。
「ほぉ……取引か
さすがだな。情に訴えるのが一番効く相手だ」
売人はしばらく沈黙していたが、
やがて、机の上で握りしめた拳が震え始めた。
「……本当に……家族に会える場所にしてくれるのか」
ハロルドは静かに頷いた。
「お前が“全部”話すならな」
売人は顔を上げ、観念したように息を吐いた。
「……取り逃がしたのは、俺たちのリーダーだ。
“カイン”って呼ばれてる。
ミラーを仕入れてたのも、売りさばいてたのも全部あいつだ」
観察室で、アウレリアが息を呑んだ。
ジュリアンが低く呟く。
「やっと核心に触れたな……」
ルークはガラス越しにハロルドを見つめ、
「あの男、ただの刑事じゃないな」
と感心したように笑った。
――こうして、事件の黒幕の名がついに明らかになった。




