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アウレリアは立ち上がり、橋の下の暗がりを見渡した。
ジュリアンが拳を握りしめる。
「犯人はここで彼女を……」
ルークが静かに言葉を継ぐ。
「そして、何らかの理由で遺体を森へ運んだ」
冷たい風が橋の下を吹き抜ける。
その音が、四人の背筋をさらに冷やした。
――事件は、まだ始まったばかりだった。
橋の下の血痕を確認したあと、ジュリアンたち警察は周辺の聞き込みを始めた。
昼間でも薄暗いこの場所は、どこか人を寄せつけない空気が漂っている。
近くの住民は、皆そろって同じことを口にした。
「……あの橋の下には、近づかない方がいいですよ」
「夜になると、妙な連中が集まってね」
「最近は警察が来てたけど、また戻ってくるんじゃないかって噂で……」
ジュリアンが眉をひそめる。
「妙な連中、か。何をしてるんだ?」
住民は声を潜めて続けた。
「ドラッグの売買ですよ。ここらじゃ有名な話で……つい最近、警察が大きな取り締まりをしたばかりなんです」
ジュリアンが地図を見ながらアウレリアとルークに報告した。
ルークが話を聞いて、渋い顔を見せた
「薬物の売買……。この橋の下が“たまり場”だったってことか」
アウレリアは橋の下を見上げ、冷たい風に身をすくめた。
「じゃあ、リディアは……そんな場所に偶然迷い込んだの?」
ジュリアンは首を振る。
「いや、彼女は森に行く理由も、この橋の下に来る理由もない。
帰宅途中に“巻き込まれた”と考える方が自然だ」
セラフィーナが魔力解析機を片付けながら言った。
「薬物の売買があった場所……。
そして、リディアの血痕が残っていた場所……。
偶然とは思えないね」
四人の間に、重い沈黙が落ちた。
――リディアは、ただ帰宅しようとしただけだった。 だが、この橋の下には“別の闇”が潜んでいた。




