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四人は王都警察署の会議室に集まり、机の上には現場写真と簡易報告書が並べられていた。室内の空気は妙に重かった。
ジュリアンが椅子に深く座り込み、額に手を当てながら口を開く。
「……解剖に立ち会ってきた。腹部の損傷は、死後のものじゃなかった」
アウレリアは息を呑む。
「じゃあ……生きたまま?」
ジュリアンは苦しげに頷いた。
「そうなる。しかし腹部を食べられたのは、意識がない状態だった可能性が高い」
ルークが資料をめくりながら続ける。
「後頭部に鈍器で殴られた跡もあった。
強い衝撃だ。それで意識を失ったんだろう」
アウレリアは胸の奥が冷たくなるのを感じた。
「……どうしてそんなことを」
誰も答えられなかった。
セラフィーナが静かに立ち上がり、ホワイトボードに被害者の名前を書き込む。
――リディア・フェーン
高校二年生。王都北区在住。
「彼女がなぜ狙われたのか、まだ手がかりは少ないわ。でも……これは偶然の襲撃じゃない」
セラフィーナの声は落ち着いていたが、その奥にある緊張は隠せなかった。
「人の内臓を食べている。
そして死後ではなく、生きたまま。」
会議室の空気がさらに冷え込む。
アウレリアは机の上のリディアの写真を見つめた。
制服姿の少女は、まだ昨日まで普通の生活を送っていたはずなのに。
――なぜ彼女だったのか。
――誰が、何のために。
答えはまだ、どこにもなかった。




