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森の入り口には、まだ朝の冷気が残っていた。木々の影が長く伸び、その手前に制服姿の少女が横たわっている。高校生だと一目でわかる。周囲には警備隊が簡易的な規制線を張っていた。
その中央で、セラフィーナがしゃがみ込み、少女の遺体をじっと観察していた。
「セラフィーナ!」
アウレリアとルークが駆け寄る。ジュリアンも肩で息をしながら続いた。
「どうして私たちを呼んだのか、説明してくれない?」
アウレリアが問いかけると、ジュリアンも頷く。
「そうだよ。理由も言わずに迎えに行かされたんだ。状況を教えてくれ」
セラフィーナは顔を上げ、どこか興奮を抑えきれないような目をしていた。
「見ての通りよ。少女は腹部を大きく損傷している。服ごと、深くね。ぱっと見は動物に襲われたように見えるわ」
アウレリアは思わず息を呑む。
「……動物の仕業なの?」
セラフィーナは首を横に振り、遺体の胸元に視線を戻した。
「内臓がほとんど食べられている。でも――問題はそこじゃないの」
彼女は肋骨の一部を指し示す。
「肋骨に歯型が残っているの。
森にいるどの動物とも一致しない。形状が違いすぎる」
ルークが眉をひそめる。
「じゃあ、何の歯型なんだ?」
セラフィーナはゆっくりと立ち上がり、三人を見回した。
「……人間のものよ」
その言葉が落ちた瞬間、森の空気が一段と冷たくなったように感じられた。




