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その後、マネージャーのダミアンはジュリアンによって静かに連行された。
セラフィーナはアウレリアとルークに異常なほど感謝し、
「本当にありがとう……! 本当に……!悪魔的に良かったよ!!」
と涙ぐみながらなかなか離れようとしなかったが、
最終的にはジュリアンに半ば引きずられるようにして帰っていった。
ミラは田舎に住む両親のもとへ戻され、
小さな教会で静かに埋葬された。
その葬儀には、ミラの働いていたレストランのスタッフが数名だけ参列したという。
モデルのアリシアは、ヤラセのゴシップだったことが明るみに出て
一時的に話題になったが、
世間の興味はすぐに別のニュースへ移っていった。
カメラマンのレオンは、以前から噂されていた女性関係のトラブルが
今回の件をきっかけに表沙汰となり、
複数の女性から被害届が出されることになった。
――事件は終わり、
ようやく平穏が戻ろうとしていた。
そんなある日の夕方。
アウレリアのもとに、ルークから一通のメッセージが届いた。
『少し話したいことがある。
……来てくれると嬉しい』
その文面は、事件の緊張とは違う、
どこか静かで、真剣な気配を帯びていた。
アウレリアは胸の奥がざわつくのを感じながら、
ルークの待つ場所へ向かうことにした。
アウレリアはルークに呼ばれ、静かな墓地へと足を運んでいた。
ひとつの墓石の前で、ルークはそっと花束を手向ける。
「やぁ、来てくれてありがとう」
手をひらりと振り、いつもの柔らかい声で言った。
アウレリアは胸に手紙を抱えたまま、小さく首を振る。
「いえ、いいのよ」
ルークは近くのベンチに腰を下ろし、アウレリアも隣にちょこんと座った。
しんとした空気が流れ、風が木々を揺らす。
やがてルークがゆっくりと向き直る。
「アウレリア、この前はすまなかったね。
君を止めようとしたのは……僕の経験がすべてだと思い込んでいたからだ。
押し付けるつもりはなかったんだ」
アウレリアは静かに息を吸う。
ルークは視線を墓石へ向けた。
「……ここは、その。友人が眠る場所なんだ」
その声は、普段の彼からは想像できないほど弱く、痛みを含んでいた。
アウレリアは胸が締めつけられるような気持ちになり、言葉を探した。
少し時間を置いて、ようやく口を開く。
「ルーク、話してくれてありがとう。
あなたの気持ちはわかったわ……でも、私が力を持ったことは運命だったと思うの。
もし私にしかできないことがあるなら、やり遂げたい」
ルークは空を見上げ、ふっと笑った。
「そうか……君も同じなんだね」
そして、アウレリアの方へ向き直る。
「なら、僕は君を守るよ。
君が傷つかないように。
……もう、誰も失いたくないんだ」
その表情はいつものルークなのに、
どこか静かで、強い決意が宿っていた。




