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ダミアンは唇を震わせ、 しばらく沈黙していた。
アリシアもレオンも、息を呑んだまま彼を見つめている。
アウレリアが静かに促した。
「……話してくれませんか。
何があったのか」
ダミアンは拳を握りしめ、震える声で口を開いた。
「……俺は、アリシアを守りたかったんだ」
アリシアが驚いたように顔を上げる。
「守る……?」
ダミアンはうなずき、続けた。
「あの日、ミラさんにアリシアが水をかけるのをみて謝らないといけないと思ってあとを追った…
そしたら、それを隠し撮りしてたのを知った。
ゴシップ誌に渡す算段をしてて、これは止めないとと思って、声をかけた、
ミラさんは違うと言ったが、怒りで口論になってあの非常階段でもみ合いになった」
アウレリアが息を呑む。
ダミアンは苦しげに目を伏せた。
「アリシアは落ち目だなんて言われてたけど、
俺にとっては……ずっと輝いてる存在だった。
だから、守りたかった。
ミラさんにやめてほしくて、追いかけたんだ」
ルークが静かに尋ねる。
「非常階段で何があった?」
ダミアンは深く息を吸い、震える声で続けた。
「ミラさんは写真を消す気がなかった。
“これで私も注目される”って……
そう言って笑ってた。
だから……取り上げようとした。
でも、返してくれなくて……
もみ合いになった」
アウレリアの手が震える。
「その時……」
「……ミラさんが、手すりを飛び越えて落ちたんだ」
ダミアンの声はかすれていた。
「とっさに手を掴んだ。
絶対に離すもんかって……
でも……俺の力じゃ……
支えきれなかった」
アリシアが唇を震わせる。
「ダミアン……そんな……」
ダミアンはゆっくりと顔を上げた。
その目には涙が滲んでいた。
「殺すつもりなんてなかった。
ただ……アリシアを守りたかっただけなんだ……」
ラウンジは、誰も言葉を発せないほど静まり返った。
アウレリアは胸に手を当て、
ミラの最後の瞬間を思い浮かべていた。
――助けを求めて伸ばした手。
――必死に掴んでくれた誰かの手。
――でも、届かなかった。
ルークは目を閉じ、静かに言った。
「……真実は、いつも残酷だな」
その言葉は、
誰の胸にも重く沈んだ。




