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アリシアは続けた。
「だって――私が“撮らせた”んだもの」
アウレリア「……え?」
アリシアは笑みを深めた。
「水をかけるのも、怒鳴るのも、全部“演出”。
ミラにはちゃんと説明してあったわ。
『これで話題になるから協力して』ってね」
ジュリアンが眉をひそめる。
「話題……?」
アリシアはあっさりと言った。
「私は売れっ子よ。でも、最近ちょっと落ち目でね。
だから“炎上商法”ってやつ?
ゴシップ誌に写真を渡して、
“気の強いモデルがウェイトレスに水をかけた”って記事にしてもらうつもりだったの」
ルークがため息をつきながら
「そんなことしていたのか‥」
「もちろん、ミラにはちゃんと謝礼を払うつもりだったわ。
彼女もモデル志望だったし、
『名前が出ればチャンスになるかも』って、
まんざらでもなさそうだったわよ?」
アウレリアは震える声で言った。
「じゃあ……演技だったの?」
「もちろんよ、怒る理由なんてないわ。
むしろ協力してくれて感謝してたくらいよ。
殺すなんて、ありえないわ」
アリシアは堂々とした態度で言い切った。
ジュリアンは深く息をつき、
アリシアの表情をじっと見つめた。
「……つまり、あなたはミラさんを突き落としていないと?」
「当然でしょ。
そんなことしても、私にメリットないもの」
アリシアの声には揺らぎがなかった。
その自信は、嘘をついている人間のものには見えなかった。
ジュリアンはゆっくりと息を吐いた。
「……分かりました。今日はここまでにしましょう」
アリシアはふんと鼻を鳴らし部屋を出ていった。
残された四人の間に、重い沈黙が落ちる。




