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アリシア・ヴェルネッタは、その美貌にふさわしい自信を全身から放っていた。
プラチナブロンドのストレートヘアは肩までの長さで、
光を受けるたびに銀糸のように揺れる。
細く引き締まった体つきは、モデルとしての努力を感じさせるが、
その立ち振る舞いには“努力よりも自分の価値を当然と思っている”傲慢さが滲んでいた。
白い肌は照明を反射して輝き、
露出の多い高級ブランドの服を身にまとい、
まるで「見られて当然」と言わんばかりの態度でソファに座っている。
ラウンジの空気は張り詰めていた。
白と金の上品な内装が、逆に冷たさを際立たせている。
ジュリアンが椅子に腰を下ろし、淡々と口を開いた。
「では、まずアリシア・ヴェルネッタさん。
ミラ・ハートフィールドについて、覚えていることを教えてください」
アリシアは退屈そうにプラチナブロンドの髪を払った。
「死んだウェイトレスの子でしょ。
……正直、あんまり覚えてないわ。
撮影の邪魔になったから注意したことはあるけど、
それだけよ。別に深い関わりなんてないし」
アウレリアが眉をひそめる。
「本当に、それだけですか?」
アリシアは肩をすくめ、爪を眺めながら答えた。
「ええ。私、忙しいの。
いちいちウェイトレスの顔なんて覚えてないわ」
ジュリアンは表情を変えず、次の質問へ移る。
「ミラさんが亡くなったのは、昨日の午後4時頃です。
その頃、何をされていましたか?」
アリシアはあくびを噛み殺しながら言った。
「んー……部屋で一人でいたわよ」
アウレリアがすかさず問い返す。
「誰か、それを証明できますか?」
アリシアは大げさにため息をついた。
「いないわよ?
なんで子供に聞かれないといけないのよ」
ルークが小さく舌打ちしたが、ジュリアンが手で制した。
「……分かりました。では、次の方に移ります」
アリシアはつまらなそうに脚を組み替えた。
ジュリアンはダミアンをラウンジに案内する
「ダミアン・クロフォードさん。
あなたにも、ミラさんとの関係とアリバイを伺います」
ラウンジの空気が、さらに重く沈んだ。
「では、次はあなたに伺います。
ミラ・ハートフィールドさんとの関係、そして昨日の行動について教えてください」
ダミアンは姿勢を正し、落ち着いた声で話し始めた。
「ミラさんは……アリシアに、かなり派手になじられていました。
“邪魔”“空気を読め”など、強い言葉を浴びせられていたのを何度も見ています」
アウレリアが驚いて目を見開く。
「そんなに……?」
ダミアンは小さく頷いた。
「ええ。昨日も、アリシアが怒ってミラさんに水をかけたんです。
その場は私が間に入り、ミラさんにも話をして……
なんとかトラブルにならないように収めました」
ジュリアンは淡々と続ける。
「他に気になることは?」
ダミアンは少し声を潜めた。
「……カメラマンのレオンが怪しいと思います。
ミラさんと親しくしていましたし、
彼女がモデル志望だと知ってから、妙に距離が近かった」
ジュリアンは頷き、次の質問へ移る。
「では、昨日の午後4時頃――死亡推定時刻ですが、
あなたはどこにいましたか?」
ダミアンは自然な仕草で腕を動かし、時計を見るように手首を返した。
だが――そこには時計がなかった。
アウレリアが気づき、首をかしげる。
「時計……してないんですか?」
ダミアンは一瞬だけ動きを止めたが、すぐに笑顔を作った。
「ええ、今日は忘れてしまって。
昨日は部屋でスケジュール管理をしていました。
一人でしたので、証明はできませんが……」
ジュリアンは記録を止め、静かに言った。
「分かりました。
では、次はレオン・マクブライドさんにお話を伺います」




