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事件の概要
被害者の名前は――ミラ・フィールド。
街でも評判の綺麗なウェイトレスで、働いていたレストランでは常連客が彼女目当てで通うほど人気があった。
明るく、誰にでも優しく、夢のために貯金をしていたという証言もある。
そんなミラが、レストランの非常階段から転落して死亡した。
魔法捜査では“事故”と判定されたが、セラフィーナは他殺の可能性を強く疑っている。
ジュリアンは資料をめくりながら、淡々と説明を続けた。
「ミラ・ハートフィールドモデルになりたいと田舎から出てきていた。
レストランで働きながら、撮影会に参加したり、ポートフォリオを作ったりしていたらしい」
アウレリアは小さく息を呑む。
「……ミラ、」
ジュリアンは頷き、次のページを開いた。
「事件のあった日、レストランでは有名モデルのアリシア・ヴェルネッタが撮影をしていた。
彼女の専属マネージャーのダミアン・クロフォード、
そしてカメラマンのレオン・マクブライドも一緒だった」
ルークが眉をひそめる。
「レオン……あのレオンか」
ジュリアンは苦い顔をした。
「そう。腕は一流だけど、女の子に手を出すことで有名な最低野郎だ。
ミラにも何度か声をかけていたらしい」
アウレリアの表情が曇る。
「……嫌な予感しかしないわ」
ジュリアンはさらに続けた。
「アリシアは性格が悪いことで有名だ。
その日も、ミラに難癖をつけてトラブルになっていた。
“視界に入るな”とか“仕事の邪魔”とか、そんな理由でね」
セラフィーナが横から口を挟む。
「ジェラシーじゃない?
ミラは綺麗だったし、モデル志望。
アリシアにとっては目障りだったのかも」
ジュリアンは肩をすくめた。
「レオンはミラに優しくしていた。
アリシアはミラを敵視していた。
ダミアンは二人の間に入っていたトラブルにならないように必死だったみたい」
アウレリアは唇を噛む。
「つまり……ミラの周りには、動機を持つ人が三人もいたってこと?」
ジュリアンは静かに頷いた。
「そういうことだ」
ジュリアンの説明が終わると、アウレリアが勢いよく手を挙げた。
「じゃあ、三人の事情聴取とアリバイの確認をしましょ。
できれば現場も見てみたいの。何か見落としがあるかもしれないし」
その前のめりな姿勢に、ルークは思わず目を丸くする。
「アウレリア……?」
アウレリアは真剣な表情で続けた。
「ミラさんのこと、もっと知りたいの。
魔法じゃ見えないものがあるなら、私が見つけたい」
ジュリアンは少し驚いたように笑った。
「いやあ、助かるよ。
実はアリシアたち三人も協力する気はあるみたいでね。
事情聴取も現場確認も、すぐに手配できる」
セラフィーナが満足げに頷く。
「いい判断。
魔法捜査は事故と出たけど、科学的には他殺の可能性が高い。
現場を見れば、もっと分かることがあるはず」
ルークは腕を組み、アウレリアを見つめた。
「……本気なんだな」
アウレリアは迷いなく頷く。
「うん。ミラさんのためにも、真実を知りたい」
ルークは小さく息をつき、諦めたように微笑む。
「分かった。なら俺も一緒に行こう」




