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クラリッサの救出に向かう数時間前。
ヴィクターの書斎で、ルークは契約書を広げていた。
そこには、港建設の工期に関する厳しい条件が記されている。
「……着工が遅れた場合、権利は二番手の会社に移る、か」
アウレリアが眉をひそめる。
「つまり、ヴィクターの仕事が遅れれば……?」
「二番手の会社が得をする」
ルークは静かに言った。
アウレリアは契約書の端に書かれた会社名を指差した。
「この会社の社長の名前……どこかで見たような」
ルークはすぐに調べを進め、員名簿を確認した。
その瞬間、彼の目が鋭く細まる。
「……これ。ダン・ハートマン」
アウレリアが息を呑む。
「ハートマンって……庭師の名前と一緒よ!」
ルークは別の資料を机に置いた。
「この会社の社長は、ダリルの叔父だ」
ジュリアンは拳を握りしめた。
「じゃあ……最初から計画的だったってことか」
「おそらくな。
ヴィクターが仕事を続けられなくなれば、工期は遅れ、
叔父の会社に権利が移る。
ダリルはそのためにクラリッサを利用した」
アウレリアは震える声で言った。
「じゃあ……クラリッサさんは、まだどこかに……!」
ジュリアンは地図を広げ、叔父の会社が所有する不動産を確認した。
その中で、ひとつだけ人けのない場所があった。
「森の外れの……古い小屋」
アウレリアが立ち上がる。
「きっとそこよ。行きましょう!」
三人は急いで屋敷を出た。
庭師小屋にも、屋敷の敷地にもダリルの姿はなかった。
「逃げたな」
ルークが低く言う。
アウレリアは拳を握りしめた。
「クラリッサさんを……助けないと」
三人は馬車に飛び乗り、森へ向かった。
夕暮れの光が沈み、森は不気味なほど静かだった。
小屋が見えた瞬間、ジュリアンは手を上げて合図した。
「ここだ。気配がある」
ジュリアンは剣に手をかけ、アウレリアは息を整える。
「クラリッサさん……どうか無事で」
三人は小屋へと駆け寄った。
――その直後。
アウレリアは中から、何かが倒れる音が聞こえた。
「大変よ!何かが倒れる音がしたわ!」
それを聞き、慌ててルークが扉を蹴り破り、
三人は小屋の中へ突入した。




