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ヴィクターには部屋で休んでもらい、三人でパーティーでの様子を聞くことにした。
パーティーで給仕をしていたメイドは、三人を前に緊張した面持ちで立っていた。
「あの夜のことを聞かせて欲しい、奥さんの様子に変わったところは?」
ルークが落ち着いた声で問いかける。
メイドの一人が、おずおずと答えた。
「奥さま……時々、庭の方を気にしておられました。誰かを待っているような……」
「庭?」
アウレリアが小さくつぶやく。
メイドが続けた。
「ええ。パーティーの最中に、何度か席を立たれて……。戻ってこられた時は、少し顔色が悪かったように思います」
ジュリアンは眉をひそめる。
「誰かと会っていた可能性がある、ということか」
メイドは気まずい表情をしつつ、否定しなかった。
ルークは冷ややかな笑顔で静かに問いかけた。
「その時、庭師の姿は?」
一瞬、空気が張りつめた。
「……見かけませんでした」
と、メイドが小さく答えた。
その沈黙が、何より雄弁だった。
邸宅の庭に向かう途中にアウレリアはルークに聞いた。
「ルーク、どうして庭師が怪しいと思ったの?」
ルークはニヤッと笑い
「簡単な推理だよ、以前はあんなバラの咲き誇る庭園ではなかった。庭師の腕だけではあんなには変わらないだろう。
あれは奥さんの趣味、奥さん自ら庭の手入れをしていたなら、庭師と親しくするのは、必然だ。」
庭園の奥、バラのアーチの下で、庭師は黙々と剪定をしていた。
三人が近づくと、彼は手を止め、無表情のまま振り返った。
ルークが軽く挨拶した
「やぁ、少し聞きたいんだがいいかな?」
庭師は外で仕事をするにしては色白で日光でキラッと輝く金髪に茶色の瞳が魅力的な好青年。
「なんですか、僕が知っていることなんて大したことないですよ」
ルークは目を細めて
「名前を聞いてもいいかな?」
庭師はめんどくさいといいたげな表情で答えた
「あぁ、ダリルだよ」
ルークはあっさりと受け流して、切り出した。
「奥さんの失踪について、少し話を聞かせてほしい」
庭師は肩をすくめた。
「俺に聞くことなんてありますかね。あの夜は休みでしたし」
アウレリアはじっと彼を見つめた。
「でも、奥さんは庭を気にしていたそうよ。あなたと何か話した?」
ダリルの瞳が一瞬だけ揺れた。
だがすぐに、薄い笑みを浮かべる。
「奥さまは優しい方でしたよ。よく庭に来ては、花の話をしてくれた。
……旦那さまより、よほど俺たちに気を配ってくれていました。」
ジュリアンが一歩踏み出す。
「それは、どういう意味だ?」
庭師は剪定ばさみを閉じ、パチンと金属音を響かせた。
「別に深い意味なんてありませんよ。ただ……奥さまはいつも寂しそうでした。」
その“寂しさ”が、何を生んだのか。
三人はまだ知らなかった。




