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異世界転生したら子供探偵やってみた  作者: 紬衣琉


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30

ヴィクター邸にて

屋敷の門をくぐり庭を抜けると、ふっと空気が変わった。


そこには、バラの香りがほのかに漂う庭園が広がっていた。

色とりどりのバラが咲き誇り、手入れの行き届いたアーチや小道が、まるで物語の一場面のように続いている。数人の庭師が繊細に作業していた。

屋敷の外観も、どこか柔らかい印象を与える淡い色調でまとめられており、重厚さよりも優雅さが際立っていた。


「……こんなに綺麗だったっけ?」とルークが思わず声を漏らす。



この屋敷は大きく、格式もあるはずなのに、どこか“優しく温かさ”が漂っている。

それは、ただの装飾ではなく、誰かの想いが染み込んだ空間のようだった。




ジュリアンが小さく言う。

「この庭園は、奥さんが好きだったものだ。ヴィクターは、あまり感情を表に出す人じゃなかったが……屋敷のあちこちに、彼女の好みが反映されている」



アウレリアは足元の白いバラに目を落とす。

花弁は柔らかく、触れれば崩れてしまいそうなほど繊細だ。


――愛情を言葉にしない人ほど、こういう形で残すのかもしれない。





三人は庭園を横切り、離れへ続く小道を進んだ。

バラの香りが背中を押すように漂い、しかしその美しさとは裏腹に、胸の奥には静かな不安が広がっていく。



使用人が3人をヴィクターのもとに通し、ジュリアンがルークとアウレリアを紹介した

「ヴィクター、こちらはルーク、俺の兄だ、優秀な探偵なんだ、そしてこの少女は兄の助手のアウレリア。奥さんの誘拐事件を解決したい。」




真剣な、ジュリアンを鼻で笑いヴィクターは話した

「ハッ、警察はお手上げなのか?そして自分の兄と子供を連れてきて妻を探すのか。…ふざけるな!」





ヴィクターは身なりは清潔に整えてはいたが、顔はやつれている。

ジュリアンの行動は無責任に感じたのか、いかりを露わにした。




ヴィクターの怒声が離れの空気を震わせた。

アウレリアは思わず身をすくめたが、ジュリアンは一歩も引かず、静かにヴィクターを見つめていた。



「……怒るのは当然だ」


ジュリアンが低く言った。

「大切な人がいなくなったんだ、気持ちはわかる、だけど君も君の奥さんも助けたいんだ!」


その落ち着いた声に、ヴィクターの肩がわずかに揺れた。

ヴィクター怒りの熱が、ほんの少しだけ冷めていく。




少しの沈黙のあと、ヴィクターは強い意志を感じさせる目を向け

「君の、兄なら何とかしてくれる、のか?」




ヴィクターは吐き捨てるように言ったが、怒りではなく、希望を含んでいた。




アウレリアはそっと前に出た。

「私たちは、あなたの奥さんを助けたいだけです。

……どうか、話を聞かせてください」




その小さな声は、怒りに満ちた部屋の中で不思議とよく響いた。


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