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その後、宝石を返したラシードは警察へ自首すると話した。それを聞いたルークが警察関係者の知り合いと話し、ラシードがこの国へ来た経緯を調べたという。
ルークはカフェの様な探偵事務所でお茶を傾けながら続けた。
「ラシードくんは密入国だったんだ。仲介人に身分証を取り上げられ、故郷にも戻れず、学校の清掃員をするしかなかったらしい」
ルークは静かに紅茶を置いた。
アウレリアは悲しげに瞳を伏せる。
「ラシードは……故郷へ帰れるのかしら?」
「安心したまえ、お嬢さん。ラシードの証言で仲介人は逮捕された。窃盗事件は帳消しになり、身分証も戻った。明日、家族が待つ故郷へ帰る馬車が出るそうだ」
ルークはアウレリアの頭をポンと撫で、柔らかく微笑んだ。
「よくやったな、アウレリア」
アウレリアは胸の奥が温かくなるのを感じ、ほっと息をついた。
「……よかった。本当に、よかった」
翌日、馬車の前でアウレリアとルーク、ラシードが顔を合わせていた。
「アウレリア、いろいろとありがとう。君と友達になれてよかったよ。」
ラシードは照れながらも、本当に感謝しているのがわかる
「友達だもの、当然よ!故郷に帰っても身体に気をつけてね、時々手紙をだすわ!」
アウレリアは溢れんばかりの笑顔をみせた。
「ルークさん、お世話になりました。寛大な処置に感謝します」
ラシードは胸に手を当て、故郷の挨拶をする
「あーいいんだよ、僕はほとんど働いていないのだから」
ルークは手をひらひらと振ってどうってことはないと言わんばかりの態度だ
ラシードとアウレリアは目を見合わせ、苦笑いしている。
ラシードは真剣な顔で口を開いた。
「僕の故郷では魔法は珍しくないんです。そのせいで密入国も多い。
そして僕の使える魔法は“認識阻害”。本当なら誰にも気づかれないはずなのに、アウレリアには毎回見つかっていました。
……もしかして、君には魔法が効かないのでは?」
アウレリアは息を呑み、心臓が跳ねるのを感じた。
ルークは灰色の瞳を細め、興味深そうにアウレリアを見た。
馬車の御者が声をかける。
ラシードは深く頭を下げ、乗り込む前にもう一度微笑んだ。
「ありがとう、親友。必ず手紙を書くよ」
アウレリアは手を振りながら、胸の奥に小さなざわめきを抱えていた。
──それが何を意味するのか、まだ分からないまま。




