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教室の隅で、すみれ色の髪を揺らしながら静かに座っている子がいた。
背は低いのに、姿勢は凛としていて、まるで小さな貴族のような雰囲気を漂わせている。
──あの子が、宝石を盗まれたセシルね。
アウレリアはそっと近づき、微笑んだ。
「ねぇ、私、アウレリアっていうの。今日からこの学校に転校したんだけど…席が近いし、友達になってくれる?」
セシルはすみれ色の瞳を瞬かせ、少し驚いたようにアウレリアを見つめた。
やがて、静かに微笑んで頷いた。
「……もちろん。よろしくね」
上品な所作に大人っぽさを感じる。不思議な雰囲気の子だわ
「セシル、なんだか元気がないわね。あっお節介だったらごめんなさい、なんだか心配で…」
セシルは困った笑顔で俯きながら
「えぇ、少し悲しいことがあってね。最近楽しく過ごせないのよ」
すみれ色の瞳に悲しみを感じた
「ねぇ、もしよかった、その悲しいことを話てみない?話すと気が楽になるかも。」
少しでも安心出来るようにと、セシルの手の甲にアウレリアは優しく手を重ねる。
セシルは言葉を探すように、すみれ色の瞳を伏せた。
「お父様や先生方に話しても、真剣には取り合ってくれなかったの。私がなくしたんだろって……でも盗まれたのよ」
アウレリアは胸が締め付けられるように感じた。
──この子は嘘をついていないわ。
「セシル、私はあなたの言葉を信じるわ。大切なものだったのね?」
セシルはぱっと顔をあげ、安堵の笑みを浮かべた。
「そうなの。高価ではないけれど、大好きなおばぁさまからの贈り物だったの。
病気で寝込んでいた時に、『勇気をくれる石よ』って渡してくれたの」
その瞳に浮かぶ涙は、ただの宝石以上の重みを物語っていた。
夕方、寮の門を出て王都の街を抜けると、アウレリアはルークの事務所へ向かった。
全寮制ではあるが、門限を守れば外出もできるようになっている。
扉を開けると、ルークはソファに腰掛け、灰色の瞳で彼女を迎えた。




