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ダンジョン最深部で「人類最強」のボスやってるけど、暇すぎて始めた配信がバズって勇者たちがファンになって攻めてこない  作者: 無響室の告白


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2/5

第2話:誤解された宣戦布告と、システムからの死刑宣告

「ふはははは! 愚かな人類よ、よく聞け!」


奈落の玉座、その中心で漆黒のフルプレートアーマーに身を包んだバルバトスが、カメラ(魔導配信石)に向かって高らかに腕を広げた。


背後では高性能な魔導照明が、禍々しい赤色の演出光を放っている。


「我は退屈した! 貴様らとの馴れ合いは終わりだ。一ヶ月後、我はこのダンジョンを出て、王都を火の海に変える! 止めたくば……死ぬ気でここまで殺しに来い!!」


ゼェハァ……。


どうだ、これなら流石に怒るだろう。


バルバトスは内心で手応えを感じていた。


人類滅亡宣言。


これこそラスボスの真骨頂。


さあ、恐怖しろ、憎悪しろ、そして剣を取れ!


直後、目の前の空中に浮かぶ半透明のコメント欄が、滝のような勢いで流れ始めた。


『キャー! まおーちゃんカッコいい!!』


『新章突入キタアアアアアア!!』


『王都焼き討ち編とか神展開すぎるw』


『【定期】これはRPロールプレイです』


『赤スパ(奉納:金貨1000枚):王都までの交通費に使ってください!』


『赤スパ(奉納:金貨5000枚):焼き討ち用の松明代です❤』


「……あれ?」


バルバトスは仮面の下で呆然と呟いた。


違う、そうじゃない。


交通費をくれるな。


松明代を支援するな。


そこは


「ふざけるな魔王!」


と激昂して、今すぐ討伐隊を結成するところだろうが。


「えー、あー……そ、そういうわけだから! 覚悟しておけよ! 今日の配信はここまで! 閉廷!」


ブツン、と配信を切る。


バルバトスはゲーミング玉座に深々と沈み込んだ。


「どうしてこうなった……」


「お疲れ様ッス、ボス! 今日の同接、過去最高更新ッスよ!」


ゴブリンADが興奮気味に駆け寄ってくる。


彼の手には本日の収支レポートがあった。


「スパチャ総額、王都の国家予算並みに入ってます! これでまた新しい3Dトラッキング機材が買えますね!」


「いらんわ! 俺が欲しいのは『殺意』だ! 勇者の『剣』だ! 金を投げつけられて喜ぶラスボスがどこにいる!」


バルバトスが頭を抱えたその時だった。


玉座の間の空間が歪み、無機質な警報音と共に、血のように赤いシステムウィンドウが虚空に出現した。


《警告:ダンジョンマスター権限に深刻なエラーを検知》


「なんだ!? 新しいスパムか?」


《規定期間内における『勇者パーティ』との戦闘行為が確認されませんでした。ダンジョン運営規定第666条に基づき、存在意義の消失と判断します》


無機質なシステム音声が、残酷な通告を続ける。


《30日以内に規定ランク以上の敵対者と『本気の殺し合い(デスマッチ)』を行わない場合、ダンジョンコアの維持魔力を停止し、マスター・バルバトスの存在を消去します》


「……は?」


バルバトスとゴブリンADの動きが止まった。


存在の消去。


それは、ただの死ではなく、魔王としての存在そのものが世界からデリートされることを意味していた。


「ちょ、ちょっと待て! 俺は戦いたいんだよ! 向こうが来てくれないだけで!」


《言い訳は無効です。カウントダウンを開始します。残り29日23時間59分……》


一方その頃、王都のネットカフェ『冒険者の休息』


「見たかセシリア! 次のイベントは『王都防衛戦』らしいぞ!」


個室ブースの中で、勇者レオナルドが感涙にむせび泣いていた。


モニターには、先ほどのバルバトスの『宣戦布告』のアーカイブが再生されている。


「ええ、素晴らしい演技力でしたわレオナルド様。コメント欄の統制も完璧に行いました。『マジレス』する不届き者は全員ブロック済みです」


聖女セシリアが満足げに微笑む。


彼女の端末には、大量の『不敬なアンチ(=真面目に危機感を訴える人々)』を書き込み禁止にしたログが並んでいた。


「一ヶ月後か……。それまでに装備ペンライトを新調し、王都の広場で最前列を確保せねばならんな。


ああ、待ちきれない!」


「公式グッズの『滅亡Tシャツ』も予約しませんとね」


彼らは気づいていない。


推しが「ガチで」


命の危機に瀕しており、今度こそ本当に殺し合わなければ、彼が消滅してしまうという事実に。


奈落の玉座にて、バルバトスは震える手で兜を押さえた。


「……やるしかない。あいつらに、本気で俺を憎ませて、殺しに来させる」


生き残るために、死ぬほど戦いたい。


矛盾した、しかし切実な目的がここに確定した。


「ゴブリン、緊急企画会議だ。どうすれば炎上商法ではなく、ガチの『炎上』ができるか……これまでの『いい人キャラ』をすべてドブに捨てる最悪の悪行を考えるぞ」



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【登場人物】

- システム音声: ダンジョン管理システム / 警告者


【場所】

- 王都のネットカフェ『冒険者の休息』: 高速の魔力回線を完備した施設。本来は情報のやり取りに使われるが、現在は勇者パーティを含む多くの冒険者が、ダンジョン攻略をサボって配信を見るための聖地となっている。


【アイテム・用語】

- システムウィンドウ: ダンジョンの運営状況を告げる赤い警告画面。ボス権限の剥奪を通知してきた。


- ダンジョン運営規定第666条: ボスが長期間戦闘を行わない場合、その存在を消去するというダンジョンの絶対ルール。


- 滅亡Tシャツ: バルバトスの「人類滅亡宣言」を受けて即座に企画された(と思われる)ファングッズ。

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