えーっと……言いたい事はそれだけですか?
王立魔法学園――国内最大規模の由緒正しき学園の魔導具研究科に属する私は、その日も自由研究の魔導具発明に勤しんでいた。
普段なら生徒数名と共用の研究室で好き勝手にパーツを広げ、魔導具――魔法を介した便利道具の製作に没頭するのだが、今いる場所は生徒会室。
私には研究とは別に、生徒会会計としての役割があった。
とはいえ今月の経費計上については既に完了している。
放課後決まった時刻から開始される生徒会会議にのみ出席すれば早々に研究室へ戻ることが出来るだろう。
私はそう思っていた。
「ん? 殿下遅いですね。遅刻なんて珍しい」
会議の開始予定時刻から五分が経過した頃、隣に座っていた書記の伯爵子息がそう言った。
この学園には王族も通う習わしだ。そして私の一つ上の学年には王太子殿下がいらっしゃる。
この生徒会を主だって運営している――つまりは、生徒会長の座についているのも、他の生徒会役員の選出に一役買ったのも全て彼だ。
「そうですね」
私は興味を示す事もなく伯爵子息の声を聞き流しながら、自身の発明品をカチャカチャと弄りまくる。
すると今度は正面に座っていた公爵令息――生徒会副会長から、長い溜息と共に問いが投げられる。
「殿下に興味を示さない女性も貴女くらいだろう。……にしても、本当にいつでも発明に熱心だな。今度は一体何を作っているんだ」
「写真機です」
「写真機……って最近高値で出回るようになった、時間を切り取って紙面に残すことが出来る魔導具か」
「はい。その知識と技術を少々お借りして、切り取れる時間を膨らませようと思いまして」
「どういうことだ」
視線は製作中の魔導具から一切離さず、片手間で私は会話する。
淡々と答える私の言葉には公爵令息以外の、その場に集まった生徒会役員全員も興味を示していた。
「現在の写真機では起動させたその瞬間の景色しか残すことが出来ません。この一瞬という制約を取っ払い……数秒、数分と継続した時間を記録できるようにします」
「で、出来るのか、そんな事が!」
「一応試作品はあります。数分間に渡る記録――映像という呼称を使わせていただきますが、それを複数所持する事には成功しています。ただ……少々映像の粗が多くて見にくい点が納得いかないんですよね」
「すぐにでも発表すれば多大な名声と莫大な資金が手に入りそうなものなんだけどねぇ。どこかの研究お馬鹿さんはそういうの後回しだから~」
左斜め前に座っていた庶務の侯爵令嬢は穏やかな口調で話しつつも肩を竦めた。
「ラッツェル嬢。その、映像とやら……少しだけ見せて頂けませんか?」
「うーん、構わないのですが、少々ショッキングなものが――」
伯爵令息はうずうずとしながら私にお願いをする。
私が承諾を悩み、ずっと動かしていた手が止まったその時だ。
生徒会室の両開きの扉が開けられ、中に金髪にサファイアのような青い瞳を持つ美青年が足を踏み入れる。
彼こそが学園の生徒会長にしてこの国の次期国王、ヴィルヘルム・オリヴァー・フォン・ハイリヒト王太子殿下だ。
殿下は入室するや否や、長机に広がった細かなパーツと私の発明品を見て苦笑する。
小言を言われるかもしれないと思った私は、慌てて散らばっていたパーツたちを自分の前にかき集めた。
「ハンネ嬢、それはいい」
「いい……とは?」
集めたパーツが机の外に転がらないよう両腕でせき止めていると、殿下が大きく肩を竦める。
彼は親指で廊下を指した。
「エントランスまで向かってくれ」
「クビですか?」
「違う。君のような優秀で愉快な人材を簡単に切り捨ててたまるか」
生徒会室を出ろと命じられた私が立てた予測はどうやら外れたらしい。
一体何なのだと目を丸くしている私へ、殿下は更に続けた。
「君にとある嫌疑が掛けられているそうだ」
その場の視線が私へ集中する。
全員が目を丸くし、何度も瞬きを繰り返して不思議がっていた。
しかし一番不思議に思っていたのは私だ。
私は研究で爆発騒動を起こした前科を除けば至って優秀で清廉潔白な生徒なのだから。
「ケンギィ?」
だから不意を衝かれた私はとんでもなく素っ頓狂な声を漏らしてしまった。
ついでにとんでもないあほ面でも晒してしまったのか、殿下がグフゥという音を立てて崩れ落ちていた。
***
「――ハンネ・フォン・ラッツェル! 貴様に婚約破棄を言い渡す!」
そして言われた通りやって来たエントランスの大階段下。
私は突然そんな言葉を吐き捨てられた。
自分の方が立場が上だと言わんばかりに階段を数段登った殿方が、片腕を別の貴族令嬢と絡めながら私を見下ろしている。
彼はヘンリック・ゾンバルト伯爵令息。私の婚約者だ。
「はぁ」
突然すぎる展開に置いていかれた私が返した言葉は何とも間の抜けたものだった。
騒ぎを聞きつけたのか、事前にヘンリックが言いふらしていたのか。
周囲には大勢の野次馬が集っていた。
さて、突然婚約破棄を言い渡された理由にはとんと心当たりのない私であったが、彼に対する未練も婚約を解消できない理由も私にはない。
何故ならば私はラッツェル辺境伯家の三女であり、婚姻を特別急ぐ理由もなく、ゾンバルト伯爵家よりも政治的地位は高く確立されていたから。
婚約を決めた両親が構わないと頷くのならば婚約が破棄されても困りはしないのだ。
そして何より、ヘンリックは元来、話が長い男だった。
婚約破棄はどうとかよりも、彼との話し合いに研究や発明の時間を割かれる事の方が私には許容し難かった。
「わかりました。では後日そのご意向を記した正式な書類をわが家へお送りください」
「な……っ」
「お話は以上でよろしいでしょうか。では失礼いたします」
私は一礼すると生徒会室へ戻ろうと踵を返す。
しかしそれは鋭い声によって止められる。
「待て! ハンネ!」
逃げ切れなかったことに私は内心で溜息を吐いた。
渋々、ヘンリックへ向き直る。
「まだ何か?」
「何だその舐めた態度は……っ! か、彼女を見ても何も思わないのか!」
ヘンリックは『彼女』、と言いながら腕を組んでいる令嬢を示す。
桃色の長い髪に、小動物のように小さな顔と大きく愛らしい瞳を持つ女性。
彼女は私とヘンリックと同学年であった為、名前程度なら把握していた。
「ダニエラ・ツィックラー男爵令嬢ですね。ご挨拶が遅れて申し訳ございません。ご機嫌よう……それで、ヘンリック様は何を仰りたいのでしょうか」
「き、貴様……よくもそんな白々しい振る舞いが出来たものだな! 彼女を死へ追い込もうとしたのはお前だろう!」
「えぇ……」
初耳でしかない、何やらとんでもない言いがかりをつけられているようで、困惑や呆れから漏れる声を止められなかった。
「まず、お前は日常的にダニエラへ陰湿ないじめを行っていた! 彼女の学業に支障を来す程にな!」
「お言葉ですが……」
「おい、まだ話の途中だ! 発言の許可は出していない!」
第一声から滅茶苦茶な言い分だった為に口を開いたのだが、それはヘンリックによって遮られた。
ここですぐに反論をしても彼は私の話に聞く耳を持たず、声量で私の声を掻き消し、自分の言い分だけを並べ続けるだろう。
もしくは私が口を挟んだことに対して、取り乱しているだとか、必死に弁明しようとしているだとかそういった言い掛かりを更に重ねて来るだけだ。
不毛なやり取りは少ない方が良いに決まっている。
故に私は――
「失礼いたしました。どうぞ、続けてください」
穏やかに微笑んで、聞き手に徹することにした。
ヘンリックは私を鼻で笑うと声高らかに、私の悪事とやらを列挙した。
やはりとでもいうべきだろう。彼の話はとても冗長だったので要約すると、
・物を隠す、魔法や魔導具でダニエラ嬢へ怪我を負わせようとするなどのいじめを行った
・それだけでは飽き足らず、高所から突き落としたり、彼女の頭上から植木鉢を落としたり、命に係わるような悪事も働いた
・ダニエラ嬢の悪評を言いふらして学園内や社交界で孤立させ、彼女の心を追い詰めた(死を考える程)
・ダニエラ嬢のいじめの度合いが悪化したのは、ヘンリックが孤立しているダニエラ嬢を気に掛けてからだった
・また、ヘンリックという婚約者がいながら、王太子を始めとする男子生徒に色仕掛けを行い、不貞行為を働いた
・以上のことから、ヘンリックは婚約破棄を申し出た。
といったもの。
これらをヘンリックが話し終えるまで、私は一切話す事はせず聞き手に徹していた。
さて。
早口で捲し立てたからかやや息が上がっている様子のヘンリック。
ここまで話した彼が次に言ったのは。
「おい! 黙ってないで何か言ったらどうだ!」
だった。
最早一種の喜劇でも見せられているような気持ちになりつつも「貴方が話すなと言ったのですが?」という言葉は呑み込んだ。
話が余計長くなるのが目に見えていたからである。
とはいえ、彼を刺激しないような言葉を選ぶには時間が掛かる。
返す言葉に悩み、口を閉ざしていると、ヘンリックが更に声を荒げた。
「聞いているのか!? これだけのことをしておきながらよくもまぁ尊大な態度を……っ!」
「ヘンリック、いいの! きっと私の心が弱かったせいなのだわ。ごめんなさい、私が弱かったせいで、貴方に迷惑を掛けて……っ」
私はこの時、ダニエラ嬢に心底感心した。
彼女は涙を流して見せたのだ。
出そう出そうと思って涙を出せる者は役者を除けば多くはないだろう。私は少なくともできない。
なるほど、涙は女の武器とはよく言ったもので、可憐な容姿を持つ彼女が涙を流せば確かに心揺らぐ男性が現れるかもしれないと私は思った。
まあ、それとこれとは話が別なのだが。
「ああダニエラ、そんな風に自分を責めるのはやめてくれ。誰かがいじめられていい理由なんてあるはずがないんだ。ましてや、君の心優しさや醜女の嫉妬が原因なんて」
「ヘンリック……ありがとう」
婚約破棄するとは言われたものの、書面での手続きが済んでいない以上、私とヘンリックの婚約関係は現在も一応は続いている訳なのだが。
そんな事はお構いなしに……そして周囲の野次馬に自分達の愛を知らしめるように、二人はイチャイチャし始めた。
「それで、私の嫌疑についてヘンリック様が述べたいお話というのは以上でよろしいのですね」
「…………ああ」
私があまりにも態度を変えず、淡々と話すのが気に入らないのだろう。
ヘンリックは嫌悪を隠しもせず顔を歪めながら私を睨んでいた。
「ではまず、いじめについて。これはダニエラ嬢やヘンリック様を除いたどなたかによる目撃情報などはありますか?」
「ハッ、そんなもの――」
「目撃情報なんて、いちいち集められる訳ないでしょう! 私、毎日何かされる度に怖くて怖くて……なのに、何時何分にどこどこで何された。周りには誰がいた……なんて、いちいち覚えてられない!」
自信満々に答えようとするヘンリック様の隣で、ダニエラ嬢はヒステリックに叫んだ。
ヘンリックはダニエラ嬢の嘘に加担しているというよりも騙されている立場らしいと、ここで私は悟った。
だとしても、私のすべき事は変わらないのだが。
「そ、そうだ! 無茶苦茶なことを言って逃げようとするつもりだな」
「証拠のない罪を突き付けられている、という事実を明確にする事は逃げる事にはなりませんよね? とにかく、証拠はないけれど自分がいじめられてたと言っているのだからそうだと。わかりました」
「ハンネ!」
「すみません。少々意地の悪い言い方をしましたね。事実ですが。……それと、広められた悪評というものについて詳細をお伺いしても?」
「まだしらばっくれるのか! ダニエラが色仕掛けで不貞を働いていると! お前が流したんだろう」
「ああ、そうなのですね。……不思議ですね、先程ヘンリック様が私に掛けた嫌疑とやらの中にも全く同じ内容の罪がありましたが。まあこれは一度置いておきましょう。婚約者でもない異性に接触したり、敬称抜きでお名前を呼び合うような真似を公に行うような方々の方が、よっぽど不貞を疑われても仕方がないと思いますが」
「俺を愚弄するのか! 不貞を働いていると!?」
「いいえ、現時点ではただの忠告です。一応書面上では、私たちの婚約関係はまだ続いているのですから」
私は更にその後、そもそもダニエラ嬢とは専攻が異なるので接点が殆どない事、ヘンリックがダニエラ嬢に肩入れしているのすら最近まで知らなかった事なども一応伝えはした。
しかしこの辺りは『口ではどうとでも言える』と返されてしまった。
「さて、私からの主張は以上です。証拠がなければ罰する事は出来ませんから……あとは明日以降、私たち以外の方々の反応を窺い、どちらの言い分が正しかったのか判断せざるを得ませんね。では――」
勿論結果などわかり切っているのだが。
そして今度こそこの長話が終わると安堵したのも束の間。
全く動じない私の様子が気に入らなかったヘンリックが声を荒げる。
「ハンネ!」
何度目だこのやりとり。
勘弁してくれと内心で頭を抱えながら私はヘンリックを見据えます。
「逃げるなよ! 俺たちには証拠を求める癖に、お前は何一つ、無実の証拠を提示できていないじゃないか!」
「そ……そうですわ! 私たちにだけ証拠を出せなんて、ずるいです! そうやって私たちを陥れようとしているんだわ……っ!」
「はぁ」
無実なのだから罪を犯した証拠はない。そして無罪の証明程困難なものもない。
というか今回の場合、そもそものヘンリックたちの主張が破綻している様なものなので、私がわざわざ無罪を証明するまでもない話のはずなのだが……。
何故かヘンリックはそれでは引き下がれないようであった。
「怖いのか? 口先だけでしか否定できないからさっさと話を切り上げようとするのだろう! 大体いつもお前はそうだ! 幼少の頃から俺の言葉には耳も貸さず、今みたいにさっさと尻尾を巻いて逃げる事しかしない! その悪癖はいつまで経っても治らない様だな!」
「……はぁ~~~~〜〜〜〜〜〜〜〜〜」
もう限界だった。
同じ様な話の繰り返し。終わりが見えない地獄のような時間。
私は大きな溜息を吐く。
漸く見せた、機械的に話す以外の私の側面。
それに驚いたのかヘンリックは思わず話すのを止めた。
私の苛立ちが滲んでいたのだろう。辺りも息を呑んで見守り、周囲には重苦しい静寂が訪れた。
その中で私は――
「えーっと……言いたい事はそれだけですか?」
と言った。
「……は?」
返された言葉が意外だったのか、ヘンリックが呆けている。
彼が話を続ける気がないのならば私が話しても問題はあるまい。
そう判断し、私は話を続けた。
「残念ながら、無罪を証明する為の確固たる証拠というものは現状すぐにお出しする事が出来ません。アリバイなども……具体的な時間をお二人に提示していただかない限り調べられませんから。ただ――」
私はポケットから小型の魔導具――自分が発明したものを取り出した。
「お二人の悪事とも呼べる行いについてでしたら、証拠がございます」
「あく、じ……? は? お前、一体何を言っているんだ」
ヘンリックもダニエラ嬢も私が話す『悪事』にも証拠にも一切心当たりがないようで、互いに目を丸くしていた。
「ヘンリック様があまりにも証拠をと仰いますので、致し方なく提示させていただきます。……その後の生活までは保障出来ませんが」
「おい、一体何をしようとしている……っ、待て!」
何か嫌な予感を覚えたらしいヘンリックが制止の声を上げた時には、私は魔導具のスイッチを押していた。
瞬間、エントランスの天井にでかでかと半透明の画面が浮かび上がる。
それはヘンリックとダニエラ嬢が学園内の裏庭でこっそり落ち合っている場面だ。
二人は互いに愛を囁きながら体に触れ合い、抱きしめ合い、唇を重ね――果てには外であるにもかかわらず衣服をはだけさせてその先まで行おうとする始末。
「こちらは私が開発した魔導具の試作品です。設置場所を遠隔で操作でき、また指定した期間の過去を視覚情報と音声情報の二種を融合した記録として保存できます」
ヘンリックには本当に未練などなく……というか、好意を抱いたことがなく、ダニエラ嬢とどのような関係であろうとどうでもいい話ではあった。
とはいえだ。流石に仮にも婚約者という身近だった者の品が無さ過ぎる行為――醜態を直視し続けるのには耐え難いものがある。
「これで充分でしょう。ではお先に失礼します。……あ、殿下。こちらを預けますので後程お返しいただけますか?」
羞恥と絶望に戦慄くヘンリックとダニエラ嬢を尻目に、私は野次馬に紛れていた殿下の姿を見つける。
そして未だ二人の醜態の映像を流し続ける魔導具を殿下に預けた。
「仮にも王族に、とんでもないものを押し付けるんじゃないよ」
「私も今は持ち歩きたくないので。では、今度こそ失礼します」
声にならない悲鳴を上げて崩れ落ちるダニエラ嬢。
震えが止まらないヘンリック。
二人へ淑女らしく優雅なお辞儀を披露し、私は背を向ける。
「ああ、そうだ。私と彼女が不貞関係にあるなどというデマを話していた気がするが、不敬罪だからね、君達。後日、家に届く知らせを楽しみにするように」
「ひ、ヒィ……ッ」
「な、な……っ、そ、んな……っ、ッ、は、ハンネェェェエエエエエエエ――ッ!!」
立ち去る時、殿下のとんでもない(当然のことではあるが)宣告を受けたヘンリックは、下品な音声が流れる中、気が触れた獣のような絶叫で私の名を呼んだのだった。
***
数十分後。
生徒会室では大笑いの嵐が起こっていた。
「全くとんでもないことをしてくれたな君!」
「さいっこうですよ、さいっこう! あんなのもう二度とお目に掛かれませんからね!!」
殿下が腹を抱えて蹲り、伯爵令息が机をバンバンと叩いて笑っている。
「不本意ですよ。あんなに無駄に時間を使ったし」
「ハンネさんは、お二人の浮気に気付いていたのぉ?」
「いえ、映像は人気のない場所で動作確認をしていた時に偶然」
侯爵令嬢の問いに平然と答えている傍では公爵令息が顔を青くさせて溜息を吐いていた。
「貴女は絶対に敵に回したくないな」
「研究の邪魔さえしないでいただければ、こんなに怒ったりもしませんよ」
「全く、君が来てからは本当に予想外のことばかりだな。流石は『魔導具研究科の天才』だ。……ところで、今回の件で君は独り身に戻る訳だね」
「はぁ、そうですね」
殿下からの問いに答える頃には、私は既に魔導具の製造に取り掛かっていた。
だから、その場にいる生徒会の面々が互いに顔を見合わせた後、鋭く目を光らせ、意味深に私を見ていた事など気付いてはいなかった。
「まあ何はともあれ、一件落着だ」
殿下が咳払いを一つする。
そして魔導具いじりに集中していた私の視界にそっと手を差し出した。
不思議に思い、顔を上げると、パーツを精巧に組み立てたかのような美しい顔が間近にある。
彼は不敵に口角を釣り上げると、無邪気さを孕んだ笑いと共にこう言った。
「これからもずっと、私を楽しませてくれよ。ハンネ嬢」
「……? はい」
私は首を傾げながらその手を握り返すのだった。
最後までお読みいただきありがとうございました!
もし楽しんでいただけた場合には是非とも
リアクション、ブックマーク、評価、などなど頂けますと、大変励みになります!
また他にもたくさん短編をアップしているので、気に入って頂けた方は是非マイページまでお越しください!
それでは、またご縁がありましたらどこかで!




