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第21話 七緒少年のチートスキルは成長中


リュイエールの鼻から、血がぽたぽたと流れ始めた。

ぼくはそれを見つめて動揺し、目を閉じてしまう。


もうほとんど時間が残されていない。

誰が見てもそう思うだろう。


だけどしかし――

固く目を(つぶ)るぼくはまだ諦めたくない。


くわっと目を見開き、ぼくの金色(こんじき)の瞳が妖しく光る。

まん丸く開いていた瞳孔が、縦に一筋、細いスリットになった。


通常、闇夜なら乏しい光量を求めて、瞳孔は限界まで開かれる。

けれど妖狐の見つめるモノは、この世ならざる光。


通常の光など、むしろ邪魔でしかなかった。

光を排除し光を視る。


ぼくの見つめるモノは、魔力の流れ「気脈」だった。

リュイエールの姿が色を失くし、透明なガラス細工のように見える。


全て透けて、リュイエールに流れる気脈がハッキリと見えた。

血流のように流れる体内の気脈は、白銀に輝いていて、その中に赤い気脈が数多く混じっている。


ゾンビに嚙まれた右腕から赤い流れが広がり、リュイエールの全身に回ろうとしているのだった。

腐蝕死(ゾンビー)の呪いは腕を登り、首筋を通って、脳に達し覆いつくそうとしていた。


「くっ、リュイエールっ」


それを見て、ぼくは気持ちがくじけそうになる。

だけどまだだっ。

まだリュイエールは完全なゾンビになっていない。


ぼくは下唇を噛みながら、辺りをきょろきょろと見まわした。

そんなぼくに十数体のゾンビが襲いかかる。


吞気にしゃがみ込んできょろきょろする獲物など、ゾンビが見逃すはずもなかった。

しかしその(ただ)れた腕がぼくへ届く前に、お師さまの「悪霊の鎖(ゲーストチェーン)」がゾンビの頭を粉々に打ち砕く。

お師さまは残りのゾンビも粉砕しながら、ぼくへ鋭く声をかけた。


「何やっているのナナオっ!」

「お師さま、この子をお願いしますっ!」

「えっ!?」


ぼくはそれだけ言うと、脇の階段を駆け上がり家の中へ入る。

後ろからお師さまの声が聞こえた。


「ちょっとナナオどこへ行くの!?」


ぼくは家の中に入ると、迷わず台所へ向かった。

家の者はとっくに逃げて無人だった。


運が良ければこの大凶事を逃れて、どこかで生き延びているだろう。

屋内は星明りも届かない暗闇なので、ぼくは瞳孔を通常に切り替えて、目当てのモノを探す。


「あったっ!」


ぼくが見つけたモノ。

それは台所の高い場所に飾られた、星形のオブジェだった。


五政教会のシンボルである五芒星☆を(かたど)った代物で、「家内安全」「無病息災」をうたい文句に、教会が販売している御守りだ。

結構なお値段がするけれど、大概の家の台所にはこれが飾られてあった。


ヒノモト風に言うなら、台所に(まつ)られた神棚と言った感じ。

ぼくは背が届かないので、(ほうき)の柄で引っ掛けて落っことす。


神使(しんし)にあるまじき行為だけど、今は緊急を要するのだ。

むんずと掴んで、まん丸な瞳孔をスリットへと切り替えた。

☆型の御守りの中には魔法陣が描かれており、魔法陣の気脈(魔力)の動きが見える。


「えっとえっとこの線が、あーだからっ」


ぼくにはお師さまの教育の下、魔法陣の知識が叩き込まれていた。

魔法陣は魔道具作りには不可欠で、将来お師さまをお手伝いしたいぼくとしては、必須科目なのである。


まだ勉強中でちょっと知識があやふやだけれど、そんな事を言っている場合じゃない。

魔法陣に書き込まれた神代文字と気脈の動きから見て、この御守りがそこそこ、魔道具として機能しているのが分かった。

お値段分くらいは、家の中へ幸福を招き入れてくれると思う。


「でもやっぱり弱いっ」


ぼくは単品では使えないと判断して、また物色し始めた。

テーブルの椅子にかけてあった買い物カゴをひっつかみ、星の御守りを突っ込む。


その他には塩の詰まったガラス瓶と、包丁を3本カゴに突っ込んで、深夜のお買い物は終了だ。

急いで玄関先のリュイエールの元へと戻る。


「リュイエール待っててっ、ぼくが絶対死なせないから!」




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