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第16話 七緒少年、お尻に一撃する


屋根伝いに進み、とにかく巨大魚の落ちた現場を目指す、お師さま、フーリーさん、ぼくでした。


だけど行く先々の通りでは住民たちが襲われる「現場」だらけで、一向に先へ進むことが出来なかった。

「武器をとり戦え」と突っぱねるお師さまだったけれど、さすがに目の前で襲われていると、無視する事ができない。


ぼくは獣人とゾンビが入り乱れる現場に、ゾッとする。

そこは三方からの通りが合流する、小さな広場だった。

その広場が今や地獄絵図と化していた。


三方の通りから、それぞれ逃げ込んできた獣人たち。

押し合い()し合い行き場が無くなった所へ、三方それぞれから追いかけてきたゾンビの群れが合流し、完全に袋のネズミになっていた。

獣人の絶叫とゾンビの咆哮(ほうこう)が渦巻く広場に、ぼくたちは屋根上から飛び降りる。


「大きくフーリーンを振るなよ、住民に当たる」

「はい、フーリーさんっ」


剣の師匠はぼくの返事に軽く頷き、闇夜に刃をきらめかせてゾンビを小間切れにしていく。

フーリーさんなら上段からばっさりと切り伏せられるけれど、ぼくは背が低くかった。

大人の腰当たりまでしかない。

なので徹底的に足を狙っていく。


「ふー、ふー、ふーっ」


ぼくは呼吸を整え、獣人を襲うゾンビのお尻へまずは一撃。

初めに足を狙わないのは、いきなり足を断ち切ると、ゾンビに掴まれていた獣人ごと倒れてしまうから。


だからまず尻に一太刀。

何だこいつと振り向かせた所で、足を狙う。


「ふうふう、ふっ」


短く息を吐きながら、脇を締め、腰の動きで振り抜いた。

狙うのは膝か、(すね)あたり。


切断しなくても深々と切り込みを入れれば、自重でへし折れた。

ばたりと倒れて、なーぬーと言った顔を向けるゾンビに止めを刺す。


上段から愛刀を振り下ろし、横たわるゾンビの首を断つ。

転がる頭を見つめながら、ぼくは「できた」って小さく呟いた。


妖狐という力を持つぼくだけど、刀を使った動きはこの世界に来て一から教わったものだった。

フーリーさんから教わった通りに体が動く。

これが単純に嬉しかった。


一体きっちり仕留めた事により、周りの空気が変わる。

まずはこやつからと、ゾンビたちが先にぼくを襲い始めた。


「うん、それならそれで、やりやすい」


ぼくは息を整えひたすら足を狩り続ける。

ぼくが一体を仕留めている間に、お師さまとフーリーさんは密集した戦場を縫うように移動して、十数体をバラバラにしていた。


お師さまは鎖の長さを20㎝にして、ほとんどステゴロのようにゾンビを屠っている。

フーリーさんも刀ではなく短刀(2本持ち)に切り替え、ゾンビを解体していた。

2人が通り過ぎた後には、原型を留めない肉塊が石畳にごろごろ転がっていて壮絶だった。


広場のゾンビを一通り片付けて、残りはフーリーさんに任せつつ、お師さまは一息つく。

もう全身、腐肉まみれだった。

黒いローブはずっしりと血を吸って重くなり、もう要らないとばかりにそこら辺へ放り投げた。


「はあ……お気に入りだったのに……

おーいナナオー」


名前を呼ばれて、ぼくは子犬のようにお師さまの元へ駆ける。

ぼくも返り血を浴びて、全身が赤黒くまだら模様になっていた。


「はいお師さまっ、はあ、はあ、はあっ……」


「すっごく目が、キラキラしてるわね。

子供ならもっと、どうしてこんな事にーっとか、動揺しなさいよ。

まあ無理か、中身が中身だけに。

それよりナナオ、どこもゾンビに嚙まれてない? 大丈夫?」


「はい大丈夫ですっ」

ぼくはハキハキと答えて、腐肉で汚れた尻尾を振った。


「それならいいわ」

「でもお師さま……」


ぼくはここで初めて言いよどみ、ちらりと周りを見た。


「そうね……生き残った獣人たちの中に、かなり嚙まれた者がいるでしょうね。

でも私たちが、気にしてもしょうがない。

嚙まれた後、呪い(ゾンビ化)の症状が出るのはだいたい40分後。

それまでに、聖属性の浄化魔法をかければ大丈夫よ。

私たちに聖属性の魔法は使えない。

そこは教会の僧兵に頼るしかない。

発症初期でも、教会が何とかしてくれるわ。

その教会が、ちゃんと動いてくれればの話だけれど」


そこでお師さまが周りを見て、きりりと眉を上げる。


「あいつら僧兵を出し惜しみして。

今はちゃんと、出しているんでしょうねっ。

出してなかったら許さないんだからっ、まったくっ!」


ぷりぷりと怒るお師さまが、自分で言っておいてふと心配になった。


「……本当に大丈夫よね? 出しているわよね?

僧兵を出していなかったら、この街、積むわよ!?」





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