他人、すなわち地獄
姑姑:中国語で、父親の妹、すなわち叔母さんのこと。
L'enfer, c'est les autres.
私は、他人と目を合わせるのが好かない。
いつからそうなったのかは覚えていない。どんなきっかけがあったのかも思い出せない。ただ、中学の頃にはすでに、先生の目を見て話さなかったせいで、何度も放課後に呼び出されて説教された記憶がある。
幸い、何度かそんなことが続いた後、先生たちも慣れてしまったのか、それ以上強くは言わなくなった。というのも、私は基本的に素直で真面目な生徒だったからだ。ただ、「人の目を見て話さない」という一点だけが、礼儀を欠いた態度と見なされていた。そして、彼らは私のその態度を「内向的」と解釈した。
「胸を張って、自信を持ちなさい。」
当時の担任は、いつも私にそう言っていた。私の視線は、相手の胸よりも下に落ちがちだったからだ。
「いつも下を向いていると、表情が見えなくて、誤解されやすいのよ。それに、首にも悪いわ。」
彼女は、私がクラスの中で浮いていることを知っていた。
いじめられていたわけではない。でも、組を作るときはいつも、クラス31人の中で私だけが余るのが常だった。
3年間、何度ツッコミを入れたか分からない。組分けするなら、人数が奇数なのは仕方ないにしても、よりによって素数とは。どんな方法で割り振っても、必ず余る人が出るのではないか?
どうやら校長や教務主任は、数学が苦手なようだ。きっと、進学校への合格者数や、コンクールで獲得したメダルの数を計算するときだけ、計算能力を発揮するのだろう。
しかも、コンクールには生徒が自主的に申し込んでいるのに、学校は交通費すら出さないくせに、結果だけはしっかり持ち帰る。例えば、私が県内のスポーツ大会で準優勝したときのように。
──在籍している限り、生徒の成果はすべて学校のもの。
それが名誉であろうと、不祥事であろうと、誰も「その生徒自身」に関心を持たない。ただ、「どこの学校の生徒か?」とだけ聞くのだ。
学校に入った瞬間、「私」という個人は、「○○中学の生徒」に置き換えられる。
他人はもう「私」を見てはいない。彼らが見ているのは、制服を着た「○○中学の一員」だ。
そして、彼らは学校の評判やイメージに基づいて、まだ名乗ってもいない私に、すでにレッテルを貼っていた。
「胸を張って、目を見て話しなさい。そうすれば、自信があるように見えるわよ。」
担任はそう言った。
だが、それは本当に「私の自信」なのか。それとも、「この学校の一員としての私が、学校の自信を体現すること」なのか。
とにかく、私は次第に胸を張ることに慣れていった。
だが、わかっていた。発育の早かった私が胸を張れば、肋骨の上で膨らんだ脂肪の塊が、男たちの視線を集めることも。
同年代の女子の多くが猫背気味だったのも、理由はこれだ。男たちの視線──好奇、疑念、無知、卑猥……あるいは、思考すら介さない、生物としての本能的なもの。成長しつつある胸に向けられる、当たり前のような視線。
だが、それがきっかけだったのかもしれない。
相手の視線が私の目ではなく、胸に向いているとわかったとき、私はむしろ、彼らの顔をまっすぐ見られるようになった。
面倒なのは、同性や、少数ながら私の体を見ない男子と向き合うときだった。彼らと話すときだけは、私は無意識のうちに、相手の耳か、その後方に視線を向けていた。
「もしかして斜視なの? 一度、両親から連れられて、眼科に行ってみたら?」
担任は、何気なくそう口にしたのだと思う。彼女は私の家庭環境を知っていたから。
でなければ、どうしてこのクラスの生徒の中で、私にだけ特別な気遣いを見せるのか。
私は、両親がいない。
もちろん、石から生まれたわけではないし、二人とも生きている──はずだ。
ただ、一人は私が一度も会ったことがなく、もう一人は私を一度も見たことがない。
見えないもの、触れられないもの、聞こえないもの、それは存在しないのと同じだ。例えば、幽霊のように。
あるいは、地球の裏側に住む誰か。
彼には家族や友人がいて、地元では名の知れた存在かもしれない。それでも、私たちが知るすべを持たない限り、私たちの世界には彼の存在はない。
広義には、月の裏側すら存在しないかもしれない。
だって、私たちは月の表側しか見たことがないのだから。
たぶん、あの頃の私は、まだ哲学の講義で学ぶ前から、すでにこのことを本能的に理解していたのだろう。
──相手を見なければ、その人は私の世界には存在しない。
人は、他者の視線、認識、思考の中でしか存在できない。
同様に、「私」を見る者がいなければ、私はこの世界に存在しない。
私は、存在しない。
なぜなら、彼らが見ているのは、素直で真面目な生徒、不幸な家庭の少女、あるいは、ただの胸の膨らみだから。
だから、私は両親がいない。
私は彼らを見ないし、彼らも私を見ない。
この世界には、私を見てくれる人が、誰一人としていないのかもしれない。
しかし、「私」を見ている人が一人でもいる限り、この世界から私の存在は消えない。
相手を見ることができるのは私だけです。私しかいない。
だからこそ、他人の視線など、何の意味もなくなる。
そして、ジャン=ポール・サルトルの「地獄」から逃れることができるのだ。
※
「──いらっしゃいませ、アメリカンコーヒーはただいま二杯目が割……あっ、店長。」
コンビニの自動ドアが鳴る音が、私の思考を遮った。そして、目の前に現れた人物は、私が無意識のうちに繰り返していた販促の決まり文句さえも中断させる。
そこに立っていたのは、中年を過ぎたやや小柄でふくよかな女性。彼女は不機嫌そうに私を見つめた。
「またレジでぼーっとしてたの?」
「……いえ、ただ──」
「私、外で結構待ってたのよ。気づかなかった?」
黒髪にいくつもの白髪が混じる彼女は、私が咄嗟に捻り出そうとした言い訳をあっさりと封じ込めた。
店長はじっと私の目を覗き込む。── いつも人の視線を避けてしまう、この目を。
そして、彼女は深々とため息をついた。
「まあ、この時間は客も少ないし。お客さんの前でぼーっとしないならいいわ。交代の時間よ、もう帰っていいわよ。」
実際、私はバイトを始めたその日から今まで、クレームを受けたことは一度もないし、普段の仕事ぶりにも特に問題はなかった。そのせいか、店長も私がレジ前で時々ぼんやりしていることには、黙認するようになっていた。
それに、店長自身もわかっているのだ。── この時間帯に、レジ前でぼーっとしないなんて無理だって。
私が働いているこのコンビニは、少し微妙な立地にある。銀行が立ち並ぶビジネス街に位置してはいるものの、コンビニが飽和状態の首都圏では、すぐ近くの交差点にも三軒のコンビニがある。そのため、ほとんどの客はそちらへ流れてしまうのだった。
私のシフトは午後三時からの夜勤。たまにコーヒーを買いに来る人はいるが、一般的なコンビニのピークタイムである夕食の時間帯も、周辺の会社員はきっと帰宅途中に自宅近くのコンビニで買い物を済ませるのだろう。だから、六時や七時になっても、この店にはほとんど客が来ない。
客が来なければ、クレームもない。
そして深夜十時、十一時ともなれば、何度も床を磨き上げ、食品の消費期限を何度も確認した後は、もうすることがなくなってしまう。
ただレジの中で立ち、ホットスナックを入れていないホットケースが虚しく回転するのを眺めながら、ぼんやりと頭の中の記憶を掻き混ぜるしかない。
制服を脱ぎ、私はいつものように、数個の期限切れ弁当を自分のエコバッグに詰め込んだ。そして、店長に一言声をかける。
「店長、この期限切れの弁当、もらっていきますね。」
「おう。」
レジの内側に入った店長が軽く相槌を打ち、それから私のエコバッグに目をやる。
「それにしても、お前そんなに細いのに、毎回そんなに持って帰って食べきれるのか? まあ、いくら持って行ってもいいけどさ。どうせ毎日山ほど余るんだし。」
客が少なければ、当然、廃棄される食品も多くなる。すでに発注数をかなり絞っているにもかかわらず、だ。
本来、これらの食品は食べてはいけない決まりになっている。だが、店舗ごとの店長の裁量によって対応は異なる。厳しくルールを守る店長もいれば、期限切れから数時間以内であれば休憩時間に食べることを許可する店長もいる。
私の店長の場合── それを寛容と呼ぶべきか、それとも客の少ないこの店舗では細かいことを気にするのも面倒なだけなのか── 期限切れの弁当やおにぎりをいくつか持ち帰るのを黙認してくれていた。ただし、一つだけ条件がある。
「どんな理由があろうと、これを食べてお腹を壊したとしても、絶対にそれを理由に欠勤するな。」
……正直、その条件は少し理不尽だ。お腹を壊す原因が必ずしもここの弁当とは限らないのに。
でも私にとっては、この期限切れの弁当以外に、食糧のあてはほとんどなかった。
私は乾いた笑みを浮かべながら答える。
「大丈夫ですよ。意外と食べるんです。高校のときは体育会系でしたし。」
── もっとも、入学してすぐ、学校の運動部と体育クラスはどちらも解散したのだけれど。
結局、スポーツ推薦で入った私は、学力試験の点数では到底及ばない普通クラスへ編入され、どうにかこうにか、成績が中途半端な私立大学へと進学したのだった。
「ならいいけどな。」
店長は面倒くさそうに手をひらひらと振る。
「夜中だし、女の子なんだから帰り道は気をつけろよ。張若曦。」
「うん。じゃ、お先に。」
私は店を出るとき、軽く手を振り返した。
── 夜は、女の天下。
かつて、私の同居人がそう言った。
けれど、私はそんなことを口にするつもりはないし、そもそも誰かに話す必要もない。
この弁当が、私一人のものではないことも。
余計なことは、言わない方がいい。
……ねえ、姑姑?