クラス分け試験
勢いで投稿しました
正直ここからは要所要所しか考えてないので、その要所に辿り着くまでの話を考え付いたら書こうかと思います。
「せいっ!」
気合の入った掛け声。その直後、
「バッチーン!」
大きな衝撃音。そして、「すげーなー」「いいなー」などの羨ましがる声。
だが、その対象となっている少女の表情は冷たく、まるで今自分がやったことが当たり前どころか、満足のいかない物だったかのようだ。
「いやー、この学園に10年以上勤めていますが、このクラス判定試験の時点どころか、卒業時点ですら雷撃でレベル60を超えた生徒は間違いなくあなたが初めてですよ、私の知るなかでは」
その言動から試験官と見られる壮年の男性が少女に近付いて言う。
「流石は”雷の黄森”ですね。驚きました」
「いえ。この程度は当たり前ですから。それで先生、私のクラスは?」
「え・・・あっ。もちろん、あなたは文句なしにSクラスです。おめでとう」
自分のクラスを聞いた少女は、それ以上なににも関わりたくないかのように足早に去って行った。
「なんだありゃ?」
遠目からその光景を目にしていた俺は、隣に顔を向け尋ねる。
「今先生も言ってたろ?あいつが今年この学園に入ってくる”六術家”が一つ、黄森家の直系。黄森稲穂だ。それにしても・・・嫌なヤツっぽいな」
「六術家ってみんなあんな冷たいヤツだけなら嫌だな。そう思わね?」
「なぁ、お前わざとか。わざとなんだな?折角説明してやったのにその言い草はないだろー、双木」
「うわ、さっき知り合ったばっかりのヤツにそんなこと判断されたくねーよ、”氷の青野”くん」
青野晶。クラス分けの時から話しかけてくる気さくなヤツだとしか思ってなかったから、コイツが”青野”だと聞いたときはビックリした。
六術家は皆、それこそ黄森稲穂のように性格がひねくれてると思ってたからな。
そんな応酬をしてる内に、俺達の順版が回ってきた。
六術家は試験の順番が遅いのだろうか、今のところSクラスに入ったのは黄森ただ一人のようだ。
現時点でSクラスに入った六術家以外の人間がいたら、そいつは化け物だ。
それもそのはず、Sクラス定員は何を考えてのことかたったの七人。
それでも定員割れすることがあるくらいだ。世間の推測通り、六術家の子息一人ずつと、それに匹敵するほどの優秀な生徒が居れば一人だけ、というのを考えて作られたんじゃなかろうか。
そして、目の前にはそのクラスに入るべき家柄の人間がいる訳で、
「はぁぁっ!」
と、青野は巨大な氷の鳥を作り出してみせた。
「氷雪のレベル56。文句なしのSクラスね」
試験担当の教師にクラスを聞いて、こちらにピースしてくる青野。さっきの黄森の姿と比べてしまい、苦笑する。
「さ、次の生徒どうぞ」
「あ、はい」
教師に呼ばれて前へ出る。指定された位置につくと、俺の周囲10メートルくらいを透明な膜のようなものが覆った。教師による術式で結界が張られたのだ。
「では、はじめてください」
教師の合図があった。早速、俺は目を閉じ、右手に意識を向ける。
右手に力を集め、右手が固く、石になるようにイメージする。
手に力が集まるのを感じる。でも更に固く、もっと固く・・・
そして、
「うるぅぁ!」
ガンッと地面に拳を振り下ろす。
「ドガアァァン」
俺の周囲の地面に、地割れのように5メートルほどの亀裂が数本入った。
「これは、岩石のレベル20台前半。といった所でしょう・・・、え」
地割れの具合を見てレベルの予想を言いながら測定機を見て、教師が絶句し、俺の方へ顔を向けた。
そこで俺は、苦笑いを浮かべながら血だらけになった手をキョンシーのように掲げる。
「まさか・・・」
教師はそれをみるなり「残りの生徒は他の担当教師に試験を受けさせてもらってください」と残った生徒に言って去って行った。
「あちゃ~、やっちまったな。あれじゃレベル25がせいぜいだぞ」
能天気なこと言いながら近付いてくるのは青野である。
「それにしても何だよ今の。地割れ起こして手から血が出るなんて見たことねぇぞ?先生も慌ててたみたいだし」
「先に怪我の心配するとこだろ、今は」
「あーはいはい、大丈夫でちゅかー」
会ったばかりなのに長年の友人のように茶化してくる青野に苦笑しながら問いに答える。
「はいはい、大丈夫ですよっと」
そういって手を見せると、血は沢山出ているが傷自体はあまり深くなく、かすり傷のようだった。
「あれ、あんま傷ひどく無いじゃん。心配して損したー」
「アホ、傷だらけになるような自滅魔法なんてあってたまるかよ」
「確かに。でも普通岩石系統は傷一つつかないはずだぜ?なんで傷ついてんだよ」
「それは・・・無系統魔法だからでしょ」
「はぁ?試験で無系統使うとかアホの極みだろ。レベル低い上に怪我するとか・・・」
本当に驚いているのか、茶化しているのか、後ろにのけぞる青野。
「マトモに無系統使ったこともねぇくせによく言うぜ。無系統の身体強化も鍛えればあの程度までできるんだよ」
「キモ、普通に魔法使えよ。五素因のどれが使えんだ?お前」
「おっしえねぇよ、授業ん時にでも見とけ」
「アホ、クラス違うのに見る機会なんかねぇって・・・おい、先生戻って来たぞ」
青野に言われて見てみると、さっきの担当教師がこちらに向かってくるのが見えた。
会話を中断して教師の言葉を待つ。
「双木巧、あなたを暫定のSクラスとします。ただし、この試験で系統関係無くレベル45以上の魔法を使う生徒がいた場合には、あなたはその下のAクラスになってもらいます。わかりましたね」
「・・・あ、はい。わかりました」
「よろしい、ではクラスへ向かいなさい。さ、青野くんも行きなさい」
若干放心したまま俺は言われた通りクラスに向かって歩き始め、青野は「・・・・あ、はいっ。すぐ行きます」と焦った様子で答え、俺に続いた。
* * * * *
この世の中に魔法というものがポピュラーになってきたのは、ここ五十年のことだ。
元々、世間に隠れて魔法を使役していた世界の魔法使い達は、自分たちの絶対数が減っていることに危機感を感じ、世界の表舞台にその存在をアピールした。そして、絶対数を増やすために魔法の使い方を広めたのだ。
そうして魔法が広がり、世間に魔法が浸透したころ人々は気づいた。魔力の強さに圧倒的な幅があることに。
弱いものは魔力があるだけ、というだけで魔法を使うことは不可能なレベル。強いものは一国を滅ぼすほどの魔法を行使することが可能なのではと思われるレベル。それほどに差があった。
そして、やはりというべきか、魔力の強い者は、魔法が世間に広まる前からいた古き魔法使いの家系に属する者が多かった。
その上、その者達の中でさえ大きな開きがあった。その頂点に君臨するのが”六術家”だ。
その全てが、魔法使いにとって必要不可欠な車にとってのエネルギーといえる”魔素”の濃度が高い極東の島国に存在していたのは当たり前といえるだろう。恐らく彼らの家系は濃度の高い魔素を何代にも渡り取り込んできたことで大きな力を手にするに至ったのだから。
”火の赤石”、”氷の青野”、”雷の黄森”、”岩の茶谷”、”風の緑井”の各五素因において頂点に君臨する五家系と、不思議な力を使うといわれ、その情報は六術家の中でも一握りしか知らない秘匿されたものとされる”闇の黒羽”。彼らは国ではなく世界の頂点に君臨しており、尊敬と畏怖を込めて”魔術師”と呼ばれる。
それを理由として、魔法は小さな極東の島国にルーツを持つと言われているのである。
そうして、世界で魔法が完全に普及した三十年前、世界で魔法高等学校の設立が決定された。全世界で十校しかないその学校に入った者は、日々魔法を学び、魔法のための学生生活を送れるということで、世界中の受験資格を持つ生徒が殺到した。
だがしかし、募集人員は一つの学校でたったの五百人。全世界でも五千人しか入れない難関も難関、超難関なのだ。
そこに洪水のように生徒の応募がきたために、その年の合否の判定には二ヶ月もかかり、合否発表のころには既に別の高校に入って授業が開始されていたという生徒も現れてしまったのだ。
そのため、次の年からは受験資格に、「中学卒業年度が当年である生徒」以外にこう決まった。「魔力1000以上」。
この資格の変更だけで、応募者数は激減した。まず、世界の平均的な一般中学生の魔力は300程度なのだ。むしろ大人になってやっと1000に届くかどうかだ。極東の島国の人間であっても、その1,5倍程度が平均なだけで、到底1000には届かない。
そのため、魔力1000だなんて滅多にいなかった。それでも魔力の高い者は一般人の中にも稀ではあるが、いるにはいたし、古くから魔法を使っていた一族の中学生達の魔力は大体1000に届くかどうか位だったので、ちょっとデキる子なら受験資格を満たせた。
そういった所謂魔法のエリート達を迎えて世界にたった十校の魔法高校の運営は開始されたのだ。
そんななか、かの島国の魔法高等学校にだけは、ルーツである国の学校ということもあり、特別なクラスが作られた。それが「Sクラス」。つまりは・・・・・ここだ。
「おい、何ボーッとしてんだよ。俺の話聞いてるか?」
「すまないが、今俺は現在進行形で悩んでんだ。頼むから話すならあとにしてくれ」
「バカいってんじゃねぇよ、どうせ(何でこんなところにいるんだ俺は・・・)とかって思ってんだろ?あんなバカな事するから学校側も判断に困ってんだろうがよ、自業自得だ」
頭を抱え込む俺の背中をバシバシ叩きながら、痛いところを突いてくる青野。
「・・・わかったよ、もういい、開き直るっ!俺は世界のトップに君臨している六術家の子息と共に学べるんだ、いい経験になる!と考えれば多少は気が楽になるだろう」
よしっ!と気を取り直して改めて顔を上げてみると、そこには錚々たるメンバーが揃っていた。
赤石家の赤石猛、黄森家の黄森稲穂、茶谷家の茶谷耕介、緑井家の緑井楓、そして忘れかけていたが、青野家の青野晶、の五人。全員が全員、この年齢にも関わらず、世界に名の知れた”魔術師”である。
「それにしても、こいつらに会うのも久しぶりだな。六術家の会議に一回連れ出された時以来だから十年近く・・・あれ?黒羽の子がさっきまでそこに・・・」
こっちを見て首をかしげてきた青野に対し、
「俺は見てないぞ?トイレかどっか行ってんじゃね?」
推測を述べていると
「まさか・・・巧?」
背後から声がした。
感想よろしくです。
どんな話よ読みたいか言って頂ければ、考えてる話の流れに合えば反映していこうと思うのでよろしくです。