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城伯末女だけど、案外したたかに生きてます  作者: 遥風 かずら
第一章 お城と巡りあい

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第8話 お目付け役はからかい上手?

「……で、末女。小屋の中の奴を外に出さないのか?」

「や、やろうと思ってたところです」

「お~やる気あるねぇ」


 石工職人ぽいけど、ミラーから頼まれるということは配下か部下、もしくはお城の仕事に関係する人かもしれないけど、だからといっていい人には到底見えない。


 ともかく、ミラーに期待されてる以上はルーシャとしてきちんと魔法兵たちを真面目に動かさないと。


 お目付け役のジェニスが後ろで見ている中、ルーシャは小屋の中を覗いて外へ出てくるように促すことにした。


「私はブルグ城の城主にして将軍の娘、ルーシャ・コヴァルです。戸惑っているかもしれませんけど、さっきまでここで休んでいた兵士長に代わってみなさんに指示を与えることになりました。まずは外へ出てください!」


 ここにいる子のほとんどはルーシャと同い年か幼い子がほとんどで、まだ戦い方を知らない少年少女ばかり。


 ミラーの話では、魔法の素質がある子がここにいるという。ということは、実戦に出られるレベルには達していなく、想像するに裏門であるグリューヌ門に立たせて外を知ることから始めさせているのではないかと思われる。


 彼らを見ると兵士というよりもまだ見習いのように扱われていて、とりあえず外での経験を積むためにいる感じ。


「外に出たけど……何をすれば?」

「ルーシャさま、ボクたちをどうするの?」

「敵はどこ?」

「休んでいいんじゃなかったの? 何で?」


 何人かは素直に外へ出て整列してくれたものの、未だ小屋から出てきてない子もいて、全然言うことを聞いてくれない。こういう時、どこまで厳しくしていいものなのか。


 城ゲーではコマンド一つで簡単に動いてくれたものだけど、こうして生身の人間相手を目の前にすると、そう簡単に言うことなんて聞いてくれない。


 少年少女相手だと分かっていれば、城からお菓子とかを持ってこれたのに。


 せっかくのお目付け役がいるので、ルーシャは後ろで暇そうにしているジェニスに助言をもらおうと思って話しかける。


「ん~? なんだ、もう分かんないのか? 将軍末女なんだから、自分で考えて命令してみたらどうだ? 指揮を執りたいんだろ?」


(だから何でこの人、私に意地悪するの? 最初からそれが出来たら苦労はないってば)


「末女じゃなくて、私はルーシャです! お母様に頼まれてここにいるのなら、あなたこそちゃんとしてほしいです!」

「あれっ、末女じゃないのか? もしや……偽の娘?」

「ま、末女です。そうじゃなくて、知らないことばかりだから私にきちんと――」

「――まず、将軍の娘ってのは相手がどれだけ年下だろうが上だろうが、お願いしては駄目だ。さっきルーシャは小屋にいる連中に丁寧に説明をしただろ? あれじゃあてんで駄目だ!」


 急に真面目な顔して指摘してきたかと思えば、ルーシャに対して駄目出しをしてきた。意外にちゃんとしてる感じがするけど、ルーシャが言ったことの何が悪いと言うのだろうか。


「駄目って何が……」

「全部だ。少なくともミラー将軍なら、自分の兵士にお願いはしない。立場ってのが明確に分かっているからな! だけど、ルーシャ。お前は初めから自分を卑下して話しかけた。それだとあくまで同じ年の少女としか見ないし扱わないぞ」


 ここまで詳しく言えるなんて、ミラーの部下とかじゃ。


「そこまで偉そうに言うなら、お手本を見せて! 私は確かにお母様の娘だけれど、指揮どころか誰かに命令したことなんてまだないんだから」


(正確にはこの世界で、だけど。騎士団の詰め所でのアレは含んじゃ駄目だと思うし)


「い~や? オレはただの石工職人だ。正確にはまだ見習いだけどな」


 本当にただの石工職人の見習いだった。


「えぇ? じゃあどうしてそんな詳しいの?」


 あのミラーが信頼してルーシャの傍に置くくらいだから、職人見習い以外の才能があってもおかしくないけど。


「ミラー将軍の下で命令を受けて動いたことがあるってだけだ。もっとも、戦場は出てないけどな! オレの仕事はお城の石壁作りだしな」

「……そ、そうなのね。それだけでそんなに分かるなんて、ジェニスって凄いんだ」

「いやいや、ルーシャの猫かぶりもなかなか凄いぜ? 年に見合わずご丁寧に話していたかと思いきや、オレとこうして話してるだけで年相応の話し方になってるからな」


 ジェニスの言葉にルーシャは思わずハッとした。


 確かに言われなければずっと敬語で通していた。アロナとミラー相手ということもあってずっと敬語で話していたけど、今はすっかり前世での話し方になっている。


「……年相応に話しかけて、そのうえで命令をしろ――そういうこと? それで合ってる?」

「今じゃなくて、将来もしルーシャが将軍を目指すんなら兵士相手に敬語は不要だ。もちろん、このオレ相手でもだ」


 ミラーからは、だらけた兵士長がしてきたことを正せと言われた。それなのに、年が下だからと甘い考えで自分を紹介すれば、相手だってその程度で見てくる。


 慣れていないこの世界に甘えていたルーシャは、もう一度命令を下してみようと思い、小屋に近づいた。


「あなたたちはこのまま動かず待機なさい。私は小屋の中の者たちをすぐに出しますから!」

「は、はっ!」

「はい!」


 すでに外に出て待っている少年兵たちには厳しく言い放ち視線を送ると、あやふやな態度を見せていた少年兵たちに緊張が走る。


「お前たち、いつまでも甘えていられるとお思いですか? いつここが戦場の要となるか分からないのですよ? そうやって甘えを見せ、休んでいられると思っているのなら、今すぐお家へ帰りなさい!!」


 小屋の中から出てこない幼い兵士たちには、やや厳しめに言い放った。すると、中でだらけていた子らも慌てて外へと飛び出していた。


「……いいでしょう。そのままこの場で待機! 次の命令あるまで動かずにいるように!」


 ルーシャの厳しめな命令に、それまで甘く見ていた少年兵たちの表情は一気に緊張が走るものとなった。


「こんな感じだけど? あなたの感想は?」

「格好いいな! 流石はミラー将軍の娘だけのことはある。まだ十三なんだろ? オレより年下なのに、そうは見えないくらい頑張ってるのを見て惚れそうになった」

「……ほ、本当に?」


 全然年は離れてるけど、前世を考えれば年の差なんて別に関係ないって思える。


「はははは! なわけないだろ! 冗談だよ、冗談。本気にさせちまったかぁ~?」

「う、うるさい!! そんなわけないし!」

「はっはっは~! その調子なら、どういう風に指揮をするか分かるかもな」


 お目付け役のジェニスに調子よくからかわれ、ルーシャは自分がどうすべきなのか何となく分かってきたかも――なんて思った。


「ルーシャ次期将軍~! ほら、頑張れ!」

「ちょっと、黙ってて!」

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