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城伯末女だけど、案外したたかに生きてます  作者: 遥風 かずら
第一章 お城と巡りあい

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第6話 お試し指揮官、指揮を執る?

 アロナやミラーに心配されたルーシャは、こっぴどく怒られるかと覚悟していた。だけど、ルーシャの予想とはまるで違いミラーから特にお咎めはなかった。


 言われたことといえば。


「幽閉直後は弱々しい末女だと思って心配していたが、ルーシャにその心配は無用みたいだね。予想以上にじゃじゃ馬な娘、いや、行動力があると認めるべきなのかねぇ」


 一番に心配させ、怒られると思っていたのに、どういうわけか嬉しそうにしていたのが印象的だった。


 逆にアロナの方は、心配が過ぎて説教とまではいかないにしてもずっと心配の小言をルーシャに浴びせていた。


「いいですか! わたくしたちは城伯の娘でもあると同時に、お城における最重要人物なのです。ですから、今後はたとえ興味がある部屋はもちろん、気軽に立ち入れそうな場所を見つけたとしても――」


 ――などなど、アロナはかなりの心配性かつ妹溺愛がとてつもなく強いということが分かった。


(ミラー将軍はイメージがあったからそこまで違和感はなかったけど、アロナお姉様は物凄く口数も多くて小言も多いのはちょっと想定外かも)


 そもそも城ゲーの世界では、所謂城主キャラと配下の兵、指示系統のキャラくらいしか表に出てこなかった。それだけに、城主の娘だとか姉だとかの性格や言動までは分かるはずもなく。


 お姉様として接していても未だに慣れない。


「わ、分かりました。アロナお姉様」

「あら? そうなのね。ふふっ、ルーシャは流石ですね! わたくしに似て飲み込みが早いというべきでしょうか」


 話をすぐに理解したことが分かったのか、アロナは上機嫌になっている。側塔付近の部屋での一件はともかくとして、引き続きアロナと一緒に城内を見て回ることに。


 ルーシャをあまり怒ることのなかったミラーは、まだ手が離せない状況にあるようで、城塞を一通り見て回るまで相手が出来ないのだという。


 城塞を見て回るのはいいけど、本音を言えばコヴァル領内も見てみたい。土いじりは流石に許してほしいけど。


「さぁ、ルーシャ。次は……」

「そういえばアロナお姉様。お姉様も戦場で指揮を執る立場だと思いますけど、命令を下す騎士や兵士のことをどこまで知っておく必要があるんですか?」


 ルーシャの問いにアロナは一瞬だけ唖然とした表情を見せるも、すぐに笑顔を向けながら。


「そう言うと思って、次は騎士団の詰め所に行こうと思っていたところでしたわ。そこに行けば、ルーシャの求める答えをお見せ出来るはずですもの」


(もしかして分かりやすい顔をしていたのかな?)


「さぁ、こちらですよ、ルーシャお嬢様」

「ルーシャ様、騎士団の詰め所へようこそ!」


 張り切るアロナに手を引かれ、騎士団の詰め所の前に着くと護衛の女性騎士二人が重厚そうな扉を開けて、部屋の中へと案内してくれた。

 

 室内へ進むと、そこには男女に関係なく剣技を競う者たちがいたり、机上の遊戯らしきもので盛り上がっている者たちがいたりと、割と自由に過ごす騎士たちの姿があった。


 前世の知識でいうところのロッカーみたいなものがいくつも並び、奥には鍛錬するスペースがあったりと、かなり広い部屋であることが分かる。


 奥の方には騎士専用らしき扉が見えていて、急命に備えているような感じがした。


「城伯ミラー将軍の末女ルーシャ・コヴァル様がお見えであるぞ! 騎士団は直ちに敬礼せよ!」


 女性騎士の一人がそう言うと、賑やかにしていた部屋の空気が一瞬で厳かな雰囲気に変わり、ルーシャに向かって一斉に敬礼をしてみせた。


 兜をする者はバイザーを上げ、無帽の者はお辞儀を見せたり中にはその場で片膝をつく者もいる。


「ルーシャ。命令を下してみて?」

「え? えっと、ら、楽にしていいです!」


 たどたどしい命令ながらも、ルーシャの言葉を聞いた騎士団はすぐに緊張を解き、詰め所の中は再び賑やかなものと変わる。


「ふふっ。初めての指揮はどうでしたか、ルーシャ?」

「えぇ? 今のが指揮?」


(あれも指揮になるんだ……そんなことなら、もっときちんと言えばよかった)


「上出来でしたよ。ルーシャもいずれ戦場で指揮を執ることになります。お試しという意味でも、騎士団に命令を下すのはとてもよい経験になると思います。何事も経験ですよ、ルーシャ」

「は、はい、お姉様」


 ルーシャとして下された命令により、この場にいる騎士の多くは思い思いに体を伸ばしたり、手の空いた者なんかは教典を読んで静かに過ごしている。


「どこまで騎士や兵士を知っておく必要があるのか、についてですけど、側近になる者や直属の部下に関しては当然ながら、その者たちをよく知っておく必要があります。とはいえ、まだまだ戦場に出ることにはならないですから焦る必要はありません」


 そうは言いつつも、ルーシャを見るアロナの視線は期待に満ち溢れている感じがあるような気がする。


 アロナは戦う軍人といった感じで間違いないけど、食堂で話したレラは戦場ではどんな感じなんだろうか。


「ではルーシャ。次へ参りましょうか」


 騎士団の詰め所には男女合わせて二十数人ほどいたけど、その場にいない者の中には、巡回をする者や治安を守る者などが含まれているみたいだった。


 アロナに次に案内されたのは、騎士団の詰め所から階段で上がったところにある砲台場と書かれた部屋だ。


「アロナお姉様。この砲台ってまだ動くの?」


 ゲームで見たことがあるけど、攻城戦でしか使ったことが無かった気がする。こうして放置されているということは、今の世界でもメインの戦闘は騎士や兵士、もしくは弓術か魔法だけなのかも。


(魔法といえば!)


「いいえ。それを使用したことはありませんよ。それはここが城塞であることの証、あるいは名残りのようなものなの。使っていたのは、まだ母上が……コホン。とにかく、現在においては……」

「アロナお姉様! 魔法! 魔法は?」


 アロナは話好きなせいか、話が長くなる傾向がある。そのせいか、お城の内部をこうして歩き回っていても、全然見て回れていなかったり。


 それならいっそ、知りたいことを話してもらった方がいい。


「魔法ですか。母上の軍は魔法をあまり使わせていないので、コヴァル領内では魔法を使う者は少ないと思いますよ」

「えぇ~……。じゃあ使えないの?」

「全く使えないわけではありませんよ。ですが、わたくしは近接……つまり槍を手にして動く方が戦いやすいと感じていますね。ルーシャは魔法が好きなのです?」

「使えるなら使ってみたい……です」


 ルーシャがそう言うと、アロナは顎に手を置いて少しだけ考え込み始めた。


 それにしても城への攻撃手段として魔法軍団があったはずなのに、ミラー将軍の軍ではまさかの武器攻撃主体。それだけ優秀な人材がいるという裏返しかもしれないけど。


「ルーシャ!」


 しばらく考え込むアロナの返事を待っていると、ルーシャの名前を呼ぶミラーが砲台場に入ってきた。


「は、母上? 何事ですか?」

「あぁ、アロナ。ご苦労だったね。ルーシャの世話はここらで一旦終わっていいよ」


 ……何だろう、何だか嫌な予感しかしないけど。


「ルーシャ。今からあんたは、あたしと一緒にグリューヌ門に行ってもらうよ!」

「え?」

「えぇっ!? 母上、なぜ突然ルーシャを外に行かせるのですか? しかもグリューヌ門は……」


(アロナが焦っているけど、まさか戦場とかじゃないよね?)


 アロナの焦りを知りながらも、ルーシャを見るミラーからは不敵な笑みがこぼれている。


「ルーシャ。今から行くグリューヌ門で指揮を執らせる。命令相手はだらけて動かない魔法兵だ。あんたがその兵をどう動かすのか、あたしに見せておくれ!」


(えええええええ? そんな無茶な……。しかも魔法兵?)


「えーと……お母様。戦場で私が指揮を執るんですか? でもどうしてそんな……」

「さぁ、どうだかね。ただ、魔法を知りたそうな顔を見せていたからね。あの場所に行かせるのが簡単だと思っただけさ!」


 まだ何も分かってないし自分がいる城塞すら少し歩いただけなのにちょっと、いや、かなりスパルタすぎますよ、ミラー将軍。

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