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城伯末女だけど、案外したたかに生きてます  作者: 遥風 かずら
第二章 お城世界の国々と

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第14話 困惑のシアンテ王国

「平原で色々あったがシアンテ王国に着いたな! ルーシャ。よく耐えたな!」

「……べ、別に平気だったけど」


(全然平気じゃないんだけど?)


 途中で馬車に代わるかと思っていたのに、最初から最後まで馬に乗せられて王国入りするなんて思ってもみなかった。


「ま、歩いてればじきに直るよ」

「う~」


 前世より若返ったとはいえ、腰の痛みは共通。ずっと慣れない馬に乗っていただけで半端ない痛みが襲ってる。


 ジェニスの言うように歩けばそのうち痛みも治まるだろうけど、ルーシャだけ痛みを堪えてるなんて何だか納得いかない。


「ところで、ジェニス。シアンテ王国ってどういう国なの?」

「簡単に言えば商人の国だ。一応王が治めているがここは中立国。どこの国とも協力関係にはないことになっている。表向きは、だが」


 ジェニスの話と護衛騎士達の話はこうだった。


 ミラー将軍のいるブルグ城から少し離れたところにある王国には、限りない平原が広がっている。周辺には自然豊かな大地と原生林があり、その間を無数の川が流れていて、水源もあることから自然の資源が豊富とされている。


 どの国にも加担しない中立国とされているが、近くにあるブルグ城に守られているおかげとされているらしい。


「でも、ここにレラお姉様がいるんでしょ?」

「そうだな。しかし、彼女がどういう命令でここにいるのかまでは分からない。その辺を含めて、ルーシャに行かせたんじゃないか」

「……そうなんだ」


 女性騎士達もジェニスの話に頷くだけで、深くは教えてくれなかった。


 ジェニスたちに守られながら王国の中心である噴水広場に連れられてきたところで――


「――ルーシャ。三年はあっという間だ。だから、とにかく楽しめ!」


 ジェニスにそんなことを言われた。


「えっ? 三年って? どういうこと?」

「……ん? ミラー将軍から何も聞いてないのか? ルーシャはここ、シアンテ王国で三年間の自由を与えられたんだぞ?」

「――え」


(全くの初耳すぎるんだけど!)


 ジェニスの話だけでは理解が追いつかないので、女性騎士達の様子を窺うと、女性騎士の一人がルーシャに手紙を渡してくる。


「ミラー将軍からのお手紙を預かっておりました。お嬢様、どうぞこの場でお読みになってください」

「う、うん」


 手渡された手紙には封がされていて、騎士達にも読まれないようになっていた。


(どれどれ……)


【末女ルーシャへ。あんたがこれを読んでいる頃には無事に王国にたどり着いたということだろうね。あんたが王国でやることは、レラを自力で探し出すことだ。だがレラはシアンテ王国で密かに活動してるからすぐには見つかりっこないだろう。それと、王国だから危険はないと思うが、悪い奴なんてごろごろいるから油断するんじゃないよ! あんたには三年ほど自由を与えるから、そこで学ぶなり鍛えるなりして己を鍛えることだね】


(って、えぇ!? てっきり単なるお出かけ程度かと思って気楽にしていたのに、何で三年なの?)


「ジェ、ジェニス……これって」

「その顔、初めて知ったって顔してるな。全く、あの人は……。末女にそこまで期待かけてるんなら一言くらい声をかけてやればいいものを」

「さ、三年間も王国に一人でいなきゃいけないの?」

「ルーシャってまだ十三歳だったか? 三年ってことは十六か。なるほど……」


(何がなるほどなんだか)


「ジェニスひとりで納得されても困るんだけど!」

「まぁ、落ち着いて聞いてくれ。ルーシャの年齢が十六くらいになれば、各国巡りをさせる心配が減ることになる。その年齢なら相手が貴族であっても臆することはなくなるだろうと踏んでるはずだ。だが今のままだと、まだ何も知らない少女だからな。任せられることは極端に少ない」


 ルーシャは思わず女性騎士達を見るが、二人ともジェニスの言葉に納得しているかのように頷いている。


(そういえば前世の世界でも、十六歳で親への依存から自立への移行とか聞かされたことがあったな。まさかこっちで、しかも強制的に自立させられるとは思わなかったけど)


「ジェニスは助けてくれないの?」

「オレもそうだが、騎士の女性たちもルーシャを護衛しながらここに連れてきただけだ。それ以外の命令は下されてない」

「え~!?」


 幽閉から目覚めたあとはお城見学がメインで、辛いことは起きるわけがないって思ってた。だけど、想像以上にミラー将軍はスパルタすぎると思ってしまった。


 ルーシャは気を紛らわす為に思わず噴水広場の周りの人を見てみた。すると、軍人の姿はもちろん騎士の姿などは見当たらなく、ここで生活をしている人々の姿しか見えなかった。


「見ての通り、怖そうな人の姿はないだろ?」

「そ、そうだけど……」


 とはいえ、ミラーの手紙には悪い奴がごろごろといると書かれていた。そうなると表通りだけは平和そうに見えると思った方が正しい気がする。


「……では、ルーシャお嬢様。私たちはお先に失礼します」

「え」

「お嬢様。いずれ私たちをお使い頂けることを心からお待ちしております」


 そう言って女性騎士は、胸の上に手を置いてルーシャに敬礼している。


(あぁぁ……もう行っちゃうの?)


「ジェニス・ゲルソン。お嬢様をお任せします。それでは……」

「分かった。オレはオレの役目を果たすさ。アロナの為にもな」


 ジェニスだけをこの場に残し、二人の女性騎士は王国から去って行く。


「さて、と。ルーシャお嬢様。お手をお貸しいただいても?」


 呆然とするルーシャの前で、ジェニスは恥ずかしげもなく膝をついてくる。その光景を見ても、周りの人々は特に驚きもないようだ。


「ルーシャ? 平気か?」


 何をするわけでもないのに三年も王国で暮らすとか、一体どうすればいいのか。ルーシャは頭の中を空っぽにしながらそんなことを思っていた。


「だ、大丈夫。三年なんてすぐだと思うし、多分大丈夫」

「……期待してる。オレもミラー将軍もな! じゃあ、手配されている宿に案内するからお手を」

「ええ、お願いします」


 あっという間に過ぎるはず――そう思いながらルーシャはジェニスの手を掴んだ。

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