第12話 王国途中のロンド平原で 1
城ゲー世界に来てから、初めて他の国へ向かうことになったルーシャ。
アロナとジェニスの婚約破棄には困惑してしまったものの、当人達が思いの外後腐れなかったことにただただ驚くばかりだった。
ジェニスに手を引かれ、馬上で彼の後ろにしがみついていた時――
「――ルーシャ。ジェニスは単なる石工見習いなどではなく戦いの場面においてはとても頼りになりますから、くれぐれも惚れてはなりませんよ?」
などと、アロナからそんなことを言われてしまった。
「ほ、惚れませんよ!」
歳の差もあるし、いくら何でもそれはないと思う。
「……ジェニスも、わたくしの妹に手出しすることがありましたら一生許しませんから!」
「酷い言われようだな……」
二人とも冗談なのか本気なのかは分からなかったものの、お互いを信じあっている感じがした。
「それと、ルーシャ」
「はい、お姉様」
相変わらずアロナは心配性かつ、話が長くなりがちな気が。
「あなたがこれから向かう王国にレラがいますが、彼女には決して隙を見せてはなりませんよ。気をつけなさい。彼女は――」
「――心配ない。このオレがいるからな! はぁっ!」
アロナの話が長くなりそうなところで、ジェニスが馬を走らせていた。
「あっ! まだ続きが……そういうところですよ、全く!」
(レラお姉様が一体何だったの?)
護衛の女性騎士達は馬で駆け出すジェニスの横につき、ルーシャに声をかけてくる。
「ルーシャお嬢様。この先の平原で魔物、あるいはならず者が出てくる可能性がございます」
「えっ」
「ですが、我々が対処致しますのでどうか、ご安心を!」
そう言うと騎士達はジェニスの後ろに回り、後ろを固めて同じ早さでついてくる。
(う〜ん、そっか〜。魔物とか盗賊とか出てくる世界なんだよね。今の私じゃ何も出来そうにないのが何か悔しいな)
「……オレって信用されてないのかな」
「女性騎士達と違って武器を持ってないよね?」
「無いな」
「何もなくて戦えるの?」
アロナは戦いに関しては彼の腕を信用してた。だけど、今の彼は手綱こそ握っているけど、腰元に武器となるようなものなんか携えてないし、全然戦えそうには見えない。
「そこは、まぁ……期待してもらいたいものだな」
「石壁でも出すの?」
固有スキルで守りくらいは出来そう。
「ははは……全く、流石は姉妹だな」
ジェニスの背中にしがみついているから彼の表情を窺い知ることは叶わないものの、皮肉に近いことを言われた気がする。
「お嬢様! まもなくロンド平原に近づきます。この先、どうかその男から離れませぬように」
(離れるなと言われても、馬に乗ってるししがみついてるから離れようがないと思うんだけど)
後ろの女性騎士達の言葉に耳を傾けつつ、ただひたすらジェニスにしがみついていると、何となく彼の体に力が入ったような気がした。
残念なことにルーシャからは前方が全く見えず、緊張感もあまり生じない。
だけど。
「……お出ましだ」
ジェニスの緊張が伝わってくるものの、ルーシャからは全く見えず、何がいるのかさえも分からずじまい。
「え? 何が?」
「悪いが、馬を降りるぞルーシャ」
「ふぇっ?」
わけも分からないままルーシャが驚く間に、ジェニスの抱っこによって馬から降ろされていた。




