不満
不亜は平穏を望んでいた。
彼?はとある事情で人智を超えてしまった。それは偶然の産物か、必然かはわからない。
徐々にか、突然かもわからない。
彼?の役割は人員補充、いわば会社の人事のようなものである。
彼?は地上と異次元を行き来し、地上の人間を補充する。彼が補充した人間が生を受け、不自然なく誕生し、一生を全うする。
彼?は一仕事終えると地上に戻り繁華街を散歩する。一人で気分転換したいところであったが関係者と出くわす。
「不亜さん。相変わらず観察が好きですね。」
ネアンという中年スーツ男を模した何かが話しかけてくる。人ではあるが同じく人を超えた何かである。
「やっぱりなにか違うんだよな、上から見ているときに気づかないものだ。」
不亜は独り言のようにつぶやく。
「例えばあの居酒屋前で携帯を触っている男。そこそこ大きな組織を主導する役割をあたえたのに堕落して何もいかせていない。」
不亜は歴こそ浅くはあるが意識をもって人間を生み出している。ただ、彼?が干渉できるのは生前の部分だけでほとんどの人間が期待外れな存在となる。
「気持ちわかります。私たちがどんな苦労してこの世をささえているかとか微塵にもわからないのでしょうね。最近は意図しない悪意を持っているやつもいますし。」
「確かに、試練として生まれながらの悪人を配置することはあるが、想定外に悪意を持つくだらない者もいる。」
「同意です。何とかならないんですかね。このままじゃ半世紀持たないかもですよ。」
「他勢力の反発はあるがそろそろ例のプロジェクトを動かすときかね。」
「あれですか?うまくいきますか?」
不亜はうなずくとネアンと別れ、地上を後にする。