雪山ですね。そうなんですね。~テント作りの一幕~
登山サークルの女子大生たちは吹雪の山で道に迷いました。
第5回「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」大賞参加作品です。
既出小説『ランコ推参! ~キャンプ場での一幕~』の登場人物がでますが、このお話単体でもお楽しみいただけます。
吹雪の雪山で、四人の女子大生は寒さに耐えながら歩いていた。
最年少の霧宮さんは、大きな息をついて先頭を行くリーダーの女性に声をかけた。
「ちょっと、休憩しませんか?」
リーダーが頷き、一同が足を止めた。吹雪での移動は予想以上に過酷で、少しの休息が嬉しい瞬間だった。
霧宮さんは板チョコを手際よく割り、それを先輩たちに配った。
板チョコは寒い山中で食べるにはちょうどよいエネルギー源となり、みんな食べながら和やかな雰囲気が広がった。
やがて、霧宮さんは口を開いた。
「私たち、道に迷ってますよね」と言った。
他の三人は困った顔で頷いた。どうやらどこかで道を間違えてしまったようだ。
しかし、この雪山では磁石が効かないため、方向を見失ってしまったのだ。
リーダーも不安を押し殺した表情で「これはまずいね。もうすぐ日が暮れる」と言った。
そこで、霧宮さんは提案をした。
「ここで簡易テントを作ってビバークしましょう。私、ロープとガムテープ持ってます。先輩たち、レジャーシートと大きいゴミ袋がありますよね。即席テントを作りましょう!」
四人はそれぞれの荷物から必要なアイテムを取り出し、霧宮さんの指示でテント作りを始めた。
寒風と吹雪のなかで、彼女たちは協力して即席テントを組み上げたのだ。
出来上がったテントは横になれるほどの広さはない。
彼女たちはテントの中で座り、身を寄せ合って夜を過ごした。
次の日には吹雪がやむことを祈りながら。
「……みんな助かったの? ランコさん」
ソヨカちゃんがランコちゃんにきいた。
「うん。翌朝には雪はやんでた。太陽で方角がわかったから、無事に帰りつけたって」
「みんな無事でよかったね、ランコちゃん」
小学生の僕とソヨカちゃんは、町内会のイベントに来ている。
ランコちゃんは大学生で、いろいろなことを教えてくれる。
今日はブルーシートとロープで即席テントを作るんだ。
さっきランコちゃんが話したのは、ランコちゃんのおばさんのことだった。
昔、雪山で迷った時にこの方法で助かったそうだ。
僕たちはランコちゃんに教わって、木の幹にロープを巻き付けて引っ張る。
胸の高さでロープを横にピンと張らせ、反対側を離れた木に巻き付けた。
そこにフトンを干すみたいにブルーシートをかぶせた。
シートのすそを広げ、小さなクイで地面に留めると完成だ。
「できたー。ランコちゃん。簡単にできるんだね」
「ミキオくんにソヨカちゃん。次はごみ袋で入口を作ろうか」