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異世界のカルテ  作者: AO
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暗殺依頼

戦争学が詰まったらこちらを書いていきます。



「はあ…面倒臭いな…」

木製の机に座りながら、パソコンの前で1人の若い男がつぶやく。

時刻は午前6:00。もう日は出ているが、カーテンを閉め切っているせいで部屋の中は暗い。

男は横で怪しく光るゲートを少し気にしながら、氷と砂糖をドバドバと入れたコーヒーを飲んだ。

彼の名は相川 壮平。日本人、東京在住。

髪の色は青く、目の色は赤い。

部屋から全く出ないでせいで肌は真っ白だ。

彼がパソコンをいじり始めた時、

「兄、おはよう」

という声が後ろでした。

うしろにいたのは、彼の妹である相川 瑞穂。

兄とは違い、紫と白の長髪に、黄色い目、橙の瞳孔。

だが皮膚は真っ白だ。

「ああ、おはよう。じゃあ俺は仕事をしようかな。」

壮平はそういうと、パソコンに向き直った。


時は3333年。

日本国政府は困っていた。

相次ぐ天災、凄まじい不況、少子高齢化、戦争などでいつ反乱が起きてもおかしくないような状況に立たされていたからだ。

特に、とにかく金が足りない。

金がないと何もできない彼らは、どうすればよいかを各大手企業や大学に依頼した。

その結果、「何か皆がハマるようなエンターテイメントを開発して、それの使用料を取ればいいじゃないか」という結論に辿り着いた。

当時まだ大学院生であった壮平も、その依頼を受けた1人であった。

早速政府はもうほとんど残っていない有金を叩いて、それぞれに新しいエンターテイメントを開発させた。

その結果として生まれたのが、「異世界バース」である。

量子力学技術、宇宙航空技術、電子工学、情報工学、言語生成技術、ハイグラフィックなどかつての先進国としての面影を窺わせる技術達を結集して、政府は「異世界バース」を作り出した。

これはメタバース空間と工学技術を組み合わせることで、自分の好きな世界を作れ、その中に入れるというものである。つまり自分の好きなように異世界を設定して、その中に転生できるわけだ。

これは様々な不安やストレスに縛られていた人々を解放することになった。

何十万人もの人間がまるで取り憑かれたようにプレイし、国の財政はみるみる間に潤った。

当然その一部は企業や大学にはらわれたが、大部分は政治家達の懐に入った。

ちなみに壮平は一円ももらえなかった。まだ大学院生だったということで教授が全て持っていったのである。

それで政治家たちは火星に行ったり骨董品の壺を買ったりそれぞれ当たり前のように横領していた。

全てが順調かと思われたが、いつの世も新しい技術の裏には闇がガムのようにひっついてくるものである。異世界バースとてそれは例外でない。

あまりに依存性が高いので、行ったらもう二度と帰ってこない人が現れ出したのだ。


政府は困った。

人々はどんどん消えていく。

皆働かないため、そのうち貯金が尽きて税金を取れなくなる。

そこで、今度は大学や企業に中にいる人たちをこちらの世界に連れ戻すように命令した。

が、それは不可能であった。

なぜなら、研究者も多くの人が日本国を見捨てて異世界バースに入っていたからである。しかも彼らが色々と設定をいじくり回して異世界バースからこちらの世界への移動手段を封じた。

しかし、まだ残っている研究者もいた。

その1人が壮平である。

もう大学院を出て、地方大学で助教授をしていた彼は政府からの依頼に多少なりとも困惑したが、受け入れた。

彼の研究室の生徒や旧友、幼馴染、兄など知人の多くが異世界バースに行ったまま帰ってこなかったから、というのが主な理由としてある。

彼は数年をかけて知人や妹と協力して異世界バースからこちらの世界への帰還方法を確立した。

が、人々は帰ろうとしなかった。

あの辛い世界にいるくらいなら、この自分の作った世界にいたい、というのが彼らの主張である。

そこで政府は、ついに異世界バースのシステムを全て停止することにした。

が、そのためには開発した技術者達が集まっていると推測できる異世界、「パンドラの箱」に侵入して、システムの根源となっている装置全てを破壊しなければいけない。政府は壮平に「パンドラの箱」への侵入及び装置の破壊を命じている。

だが、それは当然困難なことである。

「パンドラの箱」内には教授や各企業の開発部部長などがいて、常にシステムを監視しているからだ。

だが、それはそうとしてまた別の問題が発生していた。

異世界へ旅立った人々の中で、詰み始めたものが現れたのだ。

例えば異世界で勇者に転生したものだったら、「魔王を倒せる仲間が交通事故で死んだ。これじゃ倒せない」とか、ハーレムを作る人だったら「ヒロインがヤンデレ化した」とか。

そこで壮平達は、「パンドラの箱」への侵入経路を確立するためにも、そんな人々の代わりに異世界に入り、歪んだ世界を彼らが望むように治している。


「えーと、今日の依頼は…

勇者になったのですがモブがバグでとんでもないスキルを所持しています…。

このままじゃ彼が魔王を倒してしまいます。彼を暗殺するのを手伝ってください…か。」

彼は依頼内容を確認すると、部屋の奥で怪しく光るゲートを潜った。

その後を続くように、瑞穂が入った。
















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