天才データキャラを演じるのが楽しすぎる
私はメガネが欠かせない非モテJK。
浮かない学生生活を送っている。
そんな私には楽しみが一つ。
スポーツ大会を観戦しながらデータキャラを演じるのだ。
やることは単純。
試合を観戦しながらタブレットをいじり、たまにメガネをくいっとさせて、それっぽく装う。
別に特別な意味があるわけじゃない。
でも、こうしているだけで役割のあるキャラクターになれた気がするの。
その日も、高校のバスケ部が参加する試合を観戦しながら、タブレットで数独をプレイしていた。
たまーに「ククク……」と笑って見たりして、演技も欠かさない。
今日はこれくらいでいいかなと思って引きあげようとすると――
「おい、お前さっきから何してるんだよ?」
他校の生徒が声をかけて来た。
ガラの悪いいかにも不良っぽい見た目の男。
「え? 別に……タブレットみてただけです」
「嘘つくな。
絶対見てたぞ。
勝手に撮影とかしてんじゃねーよ。
ほら、それ見せてみろよ」
不良っぽい生徒は私からタブレットを取り上げようとする。
本物のデータキャラだと思われたようで、ちょっとだけ嬉しかった。
でも誤解を解かないと酷い目に――
「おい、うちの生徒になにか用かよ?」
そこへまた別の生徒が現れた。
うちのバスケ部のエースのイケメン君だ。
「コイツ俺たちの試合を盗撮して――」
「なにか証拠とかあんの?
その画面、どう見ても数独だけど?」
「え? あっ」
タブレットの画面を見て誤解だと分かったのか、不良っぽい生徒は眉を開き、謝罪もしないまま立ち去って行く。
「災難だったな」
「あっ、うん……ありがとう」
「いつも試合見に来てくれてるだろ?
応援ありがとな。
次の試合、絶対に勝つから」
そう言って取り返したタブレットを差し出しながら、爽やかに白い歯を見せて微笑むイケメン君。
こんなん惚れてまうやろ。
それからか。
私が本気でデータを取るようになったのは。
試合を観察して、他高校の生徒の弱点を分析。
結果をこっそりと報告するようになった。
そのおかげかどうかは分からないけど、うちの高校のバスケ部はそれなりに活躍した。
「ありがとな、データちゃん」
イケメン君は試合の後、必ず私に声をかけてくれた。
他のチームも挨拶くらいはしてくれる。
いつの間にか演技ではなく、本物のデータキャラになっていた私。
今振り返ると結構楽しんでいたと思う。
こんな青春があってもいいよね。