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強情で強引で蠱惑的な触手系少女

 この世のすべての男子高校生にとって、これほど残酷な仕打ちがあるだろうか?いやない。

 この世に男児として生を受けたからには少なからずともカッコよく、そして強くありたいと願うものだろう。しかし、そんな願いも虚しく、彼女の前では無惨に飛び散り、そのまま地面に落下していく。まるで精液のように──。

 男という男の尊厳を無に返され、挙句の果てには本来の生殖のロールから著しく外れた行為を強制されているのが、今の俺だった。


「ねーえー、いつになったら私の専用苗床になってくれるの?」


「朝起きて最初に言うことがそれかよ……!」


 彼女──“肉宮にくみや 嬬樹じゅじゅ”は珊瑚みたいな、ピンクの頭をした少女だ。

 うねうねぬらりと動く、蛇のような髪(アレは絶対に髪じゃない)が特徴的で、それをツインテールにしている。

 はっきり言って気持ち悪い。人に生理的嫌悪感を与える見た目をしている。

 それなのに、顔だけは整っていて少女と言う言葉の前に“美”を接頭させてくる。正直言って最悪。

 家が隣同士なのもマイナス。極めつけは、毎朝俺の部屋に勝手に侵入してきては18禁コミック作家も裸足で逃げ出すくらいの糞みたいな告白をしてくること。

 おかげで、俺の貞操は風前の灯。しかも両方。


「俺は絶対お前なんかとヤらないからな! いい加減諦めろ!!」


「ふーん、そうやって強気なこと言っちゃってるけどさぁ……」


 肉宮が髪をくねらせながら近づいてくる。

 その瞬間、俺は全身が総毛立つような感覚を覚えた。


「ほぉ〜れぇ〜、これでもまだ言えるかなぁ〜」


「やめっ…………あひぃっ!」


 肉宮の髪? 触手? が俺の服のボタンを器用に外し、胸元へと伸びていく。


「んひっ!? あっ、そこ駄目ッ!! 乳首は駄目だって!!」


「うわぁ、男の子が出しちゃいけない声出ちゃってるよぉ?」


「おいっ! ふざけんな!! 早く止めろ!!!」


「うるさいぞ〜。ちょっと黙ろうかぁ」


「ングッ!?」


 突然口に入ってきた触手によって口内を蹂躙される。舌の上を這ったり、喉の奥まで侵入してきたりするせいで息ができない。


「おらおらー、早く私の専用苗床になるって言えー」


「ングッ! グゥウウッ!!」


「あ、口塞いでたら返事できないかぁ。ごめんごめん」


「ぷはぁっ! はぁ……はぁ……」


 この阿保……。とでも言ってやりたいところだが、酸素を求めるのに必死でそのような悪態をつく暇がない。


「それで、どう? なっちゃう? 苗床」


「…………お前のそういうところが大嫌いなんだ」


「私は君のこと大好きだよ〜。好き好き愛してる!」


 その愛はちゃんとした倫理の下で育まれたものなのか? と問いただしたくなるほど、こいつの愛の形はとても歪んでいる。

 きっと、脳内辞書の『恋人』のところが『苗床』に置換されてるに違いない。


「私は君を気持ち良くして、君は私の子をいっぱい産んで、みんな幸せになれるんだよ? 生物としての幸せ。これ以上のハッピーエンドはないと思うんだけど」


「……何回も言ったはずだぞ。俺はお前のものにはならない」


「むぅ。君は男の子である前に人間なんだよ? 生き物なんだよ? 男のプライドなんか捨てて、こんなカワイイ女の子の言いなりになっちゃいなよ」


 肉宮の甘言は続く。その一言一言が俺を惑わす。


「──私と繁殖しよ──」


 もし肉宮が普通の子だったら、俺の精神力がもう少し弱かったら、もしくは、その両方だったら。確実に理性を溶かされ、肉宮の望むままに体を差し出していただろう。


「断る」


「……えー。そんなカッコつけちゃってー。さっきまであんなに感じてたくせにぃー」


「うるさいな! それとこれは別問題だ! とにかく! このままだと遅刻するだろ!」


「ふふふ、そっかぁー。なら仕方ないねー。今日のところはこのくらいにしとくよー」


 そう言うと肉宮は窓から飛び出し、その触手を使ってさながらス◯◯◯ーマンの如く帰っていった。


「ったく……」


 肉宮がいなくなると急に冷静になり、さっきまでの自分の痴態を思い出してしまう。

 もうやだ。あいつほんときらい。

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