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レナとメゾ  作者: スダ ミツル
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世界


ディストピアな、とある惑星。

健康で長命で従順な国民だけを選び、国の繁栄を保とうとした古代人たちによって作られた、星全体を覆うシステムが、人々を体の内外から支配する、閉じた世界。

人間はシステムによって人工的に作られ、システムを埋め込まれ、システムから生まれ、システムに教育され、十七歳になると、大人しかいない社会に放り出される。

大人になると、五年おきに三年間、強制的にコールドスリープさせられる。

数千年の命を与えられているが、そんな長生きした人はいない。

六度自殺すると、システムに、国民に不適応とみなされ、排除されるため。

システムが不適応と判断する項目はほかにも、一定の学力以下、自力で歩けない、殺人者、システムを破壊するものなど。(何がリストにあるか、国民は知らない)

いくつか当てはまり、カウントが満たされると、ロボットに連れていかれ、排除される。

選別は幼児期から一生続き、人々はロボットにおびえて暮らす。

システムに妨害されるため、他の星からの救助は難しい。

人間以外の生物はいず、食物、生活物資、建物などは、全て合成品。

一年中雪がちらつくほど寒く、日中も日差しが淡い。

重力は地球より少し弱い。

一日の長さや、暦は地球とほぼ同じ。


人間


この星の人々はもともと、周囲の人の、フェロモンを含んだ体臭をかぐことによって、性別が変化する種族。

女性になりやすい人、男性になりやすい人、どちらにも変化する人がおり、一定期間、同じメンバーで毎日のように集っていると、女性が三割、男性が七割の比率で変化する。

人によってなりやすさや、フェロモンの濃度は異なるため、メンバーが入れ替わると、性別も変化する。

一人で生活し、仕事をする人は影響を受けず、性別がない。

この星は二割が女性、五割が男性、三割が性別のない人。

長く生きると、たいていの人は、どちらの性別も経験する。(生まれつき、体臭や、変化する能力が欠けている人もたまにいる)(ちなみに、体臭は微かに甘さのある香り)

ごくまれに、一生女性の祖と呼ばれる人がいる。

彼女たちは優れた政治力を持ち、大昔は国の権力者に自動的に選ばれていた。

普通の人より純度の高い、影響力の強い体臭を持ち、周囲の人を全員女性にする。

ただ、年に一度の排卵期は、全員を男性に変えてしまう。

地球より重力が弱いため、住人は皆長身。

祖の人は平均より三十センチ近く低く、160~165センチ。

外見は地球人とほぼ同じ。

システムが体中に広がっているため、半分変温で、体温は二十度ほどしかなく、体液はアルカリ性。

「……!!」

短く、甲高い悲鳴が聞こえた気がした。

路地を曲がってそちらのほうへ行くと、少年を無理やり引きずって、連れ去ろうとしている男がいた。

いや、この大人の世界に、子供がいるはずない。

「ちょっとあんた!やめなよ!」

走って二人に近づく。

「あっち行け!」

男は怒鳴り、ナイフを取り出す。

けど、使い慣れてない。鞘から刃を出すのにもたついている。

「伏せて!」

青ざめて喘いでいる短い黒髪の女性は、とっさに伏せる。

私は走ってきた勢いのまま、男を蹴り飛ばす。

男は後方へ吹っ飛んだ。

ナイフを信じすぎだ。

私はすぐに、女性に覆いかぶさってかばう。

ナイフは壁に当たり、地面に落ち、転がった。

男は気絶した。

たぶん鎖骨とろっ骨が、何本か折れてる。

でも、彼の中のシステムが、さっさと治すだろう。

私はため息をついて、立ち上がる。

「はあ……あなた、大丈夫?

……じゃないよね、怖かったよね。どこか痛むとことか……」

彼女は、私の足に抱き着いた。

「おおっと!」

よろける。彼女はしがみついて、震えて泣いている……。

「私はいいけど……。今性別ないし……。」

「……。」

「彼氏は?」

と、私は通りを振り向く。

「一緒じゃないの?もしかして、一人で歩いてたの?」

「……。」

驚いた。

こんなクズみたいに治安の悪い街を、一人で……?それで男装してるの?

「家まで送ろうか。彼氏に説明してあげる。」

彼女は、私の膝にぐりぐりと額を押し付ける。

「彼氏なんていない。」

「あ、そう。」

じゃ、女性になりやすい体質なんだ……。

私は女になったことないけど、大変そう……。

心配し、同情する。すると、彼女は言った。

「私は祖なの。だから、一生女なの。」

「え……!!?」

私は驚いた。

……この星には、ごくまれに、彼女のような人がいる。



歩きながら、彼女は指さして言った。

「切れてる……。」

「ああ、これ。」

コートの裾のほうが裂けている。

「切れたのはコートだけだよ、心配しないで。安物だし。」

私は、わざと切らせてから蹴った。

コートの裾が広がるように、飛んで回ってから、押し出すようにけりを入れた。

案の定、奴はコートの裾に気を取られ、それを薙ぎ払うように切った。

刃物と戦闘に慣れてない人がやるミス。

そんなことより……

「ここが赤い。」

彼女の眼のそばが赤くなってる。指さすと、手で隠してうつむいた。

「……叫んだら、殴られたの。」

私は舌打ちし、歯ぎしりする。

ほんっとに……

「最っ低だな……!」



彼女は、自分のアパートにつくと言った。

「上がってって。お茶入れるから。」

どうしようか迷ったけど、あんなことがあった後で、彼女を一人にするのは心配で、何か話でもして、少しでも気がまぎれればと思って、彼女の後について、部屋へ上がった。


入れてくれた温かいお茶を飲む。向かい合って座っている彼女が、ぽつりと言う。

「私の名前はメゾ。」

「私はレナバード。」

「レナバード……本当にありがとう……。」

私は首を振る。それから、

「あの、あいつにここを知られてない?」

「たぶん……。初めて見る人……。」

うつむいて、震える手でくせ毛の黒髪を引っ張った。結構強く。

私はその手を、そっとつかむ。

「やめなよ……。」

それから、彼女の袖を少しめくる。

いくつも切り傷がある……。メゾの眼を見て言う。

「これも、やめなよ……。」

ほかに、いくつ傷があるのだろう。

心に……体に……。

いたたまれない……。

メゾは……大粒の涙を落として泣き始めた。

「……レナバード……」

子供のような高い声で。

「レナバード……!」

「何?レナでいいよ。」

彼女は震えて

「レナ……!そばにいて……!」

私に助けを求める。

「……もちろん。」

放っておけない……。



メゾは、ようやく泣き止んだ。

私に寄り掛かっている彼女の髪をなでて言う。

「世が世なら、メゾは女王様なわけだ?」

彼女は鼻を鳴らす。

ごくまれに生まれる祖は、大昔、自動的に、権力者、国王、統治者、そんな立場になっていたらしい。

きっと、メゾもその素質を受け継いでいる。

「で、私は平の兵士で、お忍びのメゾ女王の窮地を救って、ナイトの栄誉をいただくわけだ。」

彼女はふっと笑う。

「……。」

一つ、気がかりなことがある。

「メゾ……、」

「ん?」

「こんなくっついてたら、私、男になっちゃう。」

この星の人は、一人で暮らしていると性別がなくなり、二人で生活していると、男女になる。

メゾが女性だから、私は男性に。

ちなみに複数人でいると、四対一の割合で男女に。


『レナ……!そばにいて……!』


辛いメゾのそばにいてやりたいけど……でも、

「会うのは時々にしないと……辛いんじゃない……?」

あんな目にあったばかりで……

私が男性化したら……

「ならないよ。」

……辛くならない?

「ほんとに?なら、私はそれでいいけど……。」

「レナは男にならないよ。」

……え?

「……祖と一緒にいると、女性になるんだよ。」

「ええ……!?

そうなの!?知らなかった……!」



私はメゾのアパートに越してきた。たいして荷物はない。

メゾは、クローゼットを半分開けてくれた。

捨てる服の中に、きれいな色の服を見つけた。

「これ、捨てちゃうの?」

「……いいの。似合わないから。」

「そうなの?着てみてよ。」

気に入って買ったはず。


キャップスリーブのワンピースをまとったメゾの姿に……

……私は見とれてしまった……。

初めて見る美しさだった……。

子供でも、男性でも無性でもない……

女の人の姿……。

身頃はぴったりフィットしていて、スクエアネック、スカートはフレア……

町でこんな格好の女性は、見たことない。

……いるかもしれないけど、みんな一年中長いコートを着てるから、見えない。

「メゾ……すごく素敵……!!

メゾは男物の服なんか、着なくていい!!」

「……。」

彼女は少し微笑んで、うつむいてスカートを揺らした。



私は窓を開け、顔を外に出して、薬を吸う。

……細いスティック状の麻薬。タバコみたいに火をつけて吸うタイプの、軽いやつ。

メゾがやってきて、私にくっつく。

「レナは…自殺したことある?」

「あるよ。」

目が丸く見開かれる。

「見えない……。」

「あはは!だよね。

……私の場合はね、あのロボットが嫌だったの。

人んちに勝手に入ってくるし、気色悪いじゃん?

コールドスリープさせようと、私を連れ出しに来たあいつらから、毎回逃げてたんだよね。」

この星では、古代人が残したシステムが、今もなお、私たちを体の内外から支配していて、国民たちを長生きさせるためという名目で、五年に一度、強制的に三年間、コールドスリープさせられる。

私は薬を一息吸って、窓の外に細く吐く。

「……。」

「それで、ロボットに追い詰められたとき、どうしてもつかまりたくなくて、建物の上から飛び降りてみたんだ。

……それから毎回。前回で四度目。

……ふふ、あと二回しかないね!どうしようかな。」

と、私は笑ってみせる。

薬を、くるくる回して指の間を往復させる。

五度までは、クローンとして再生されるけれど、六度、自殺すると、国民に不適応の烙印を押され、システムに存在を抹消される。つまり、六回自殺しないと、死ねない。

「……私も、四回自殺したことある。」

「……そっか……。」

私はにこっと笑う。

「じゃあ、あと二回は、一緒に死のうか!」

「……。」

メゾは大きな黒い瞳で私を見つめ、急に私の顔を両手で挟んで引き寄せて、キスした。

おわ!?

薬の火が危ない!

窓ガラスに押し付けて消し、はじいて外に捨てた。



祖の影響力は強いらしい。

通常性別の変化には四週間ほどかかるのに、私が女性化するまで、一週間ほどしかかからなかった。

それでいて、体調はいい。

朝起きるたび、体が変化している。

メゾの不思議な引力に反応するように、メゾと同じ体になっていく。

変化が急だし、私は戸惑っている。

「男性にはなったことあるけど、女になるのは初めてで……なんか、どうしたらいいの?」

「どうって?」

メゾは首をかしげる。

「ええっと。……まあいいや……。」

恥ずかしくなる。自分でも何が言いたいのかわからない。


「レナ、すごく美人!」

メゾが抱き着いてくるたび、なんか恥ずかしい……。

熱いまなざしで私を見上げながら、メゾが言う。

「レナ、私に触って……。」

ドキッとする。

世が世なら、私は女王の付き人で、恋人なわけだ……。

や!そんな妄想より……

ドキドキしながら聞く。

「……ほんとに私でいいの……?」

「うん。レナがいい。」

うっとり微笑んでいる。

てことはつまり、私もメゾに触られるわけで……

うあ。

顔が熱くなる。

「待って!ええっと……なんか怖いんだけど……!」

怖い?同性なのに?でも、なったばかりでよくわからないから、ちょっとメゾが怖い……。

それに、そういうことも初めてだし……。

メゾは甘く微笑む。

「怖いことなんか、何にもないよ。」

メゾの、小さくて華奢な両手が、私の腕から肩に、やさしく滑る。

それから、首筋に、髪に……。

耳に。頬に。

髪に、首筋に……

……とても気持ちよくて……

甘くて……

私も優しい気持ちになる……。

私は少しかがみ、メゾは背伸びして……キスをする……。

「……」

「……ん……ふふっ……」

温かくて……

心地よくて……

柔らかい……。




「レナ!」

新しく作ったドレスを着て、かわいくお化粧したメゾが、笑顔でやってくる。

私は思わず拍手する。

「わあ!すごくきれい!」

「ふふ!」

くるっと回って見せる。

繊細な淡いピンク色のギャザースカートが、ふんわりと広がる。

メゾは、笑顔が輝いている……。

髪が少し伸び、手首の傷跡は目立たなくなった。

「レナもあれ着てよ!ほら早くう!」

私の手を引っ張る。

「わかったわかった!」

着て見せた。

「レナ!綺麗!」

楽しそうに、嬉しそうに興奮しているメゾ。

「そう?似合ってる?」

ノースリーブで、深めのVネック。

スカートの両脇にスリットが入った、赤いタイトなドレス。

「うん!似合ってる!」

私は……なんか、照れて笑ってしまう。

「ふふ……ははは!」

それからメゾをぎゅっと抱きしめる。

「きゃ!レナ?」

「ふふ!なんか、幸せだなあって!」

メゾも私を抱きしめて、二人でくるくる回った。

「あはは!」

「あははは!」

「……でも、メゾは買い物に時間かかりすぎ!迷いすぎ!」

けど、それもカワイイと思う。メゾは笑って謝る。

「あはは!ごめーん!」




私が……コールドスリープさせられる時期が近付いてきた。

メゾとはタイミングがずれていて、私が起きるころ、メゾは眠っている……

「……どうする……?一緒に……」

死ぬ……?

そうしたら、同時にクローンになって目覚める。

クローンになれば、コールドスリープの周期はリセットされ、そこから五年後になる。

だから、次はコールドスリープのタイミングも、ほぼ二人同時になる。

五年間、一緒にいられる。

メゾは、

……うなずいた。



……私は目覚める。

……痛い!!

顔をしかめる。

目を開け、ハッとする。

近くにロボットたちがいて、動かないメゾを運ぼうとしている。

待って!!

いや!!

あああ!!!

激痛が走る。

私はあちこち骨が折れているらしい。

八階建てのビルから二人で飛び降りたのだけど、高さが足りなかったのか、メゾが下になってしまったのか……。

私は、口に入れておいた毒を噛もうとしたけれど……

一瞬早く、ロボットに眠らされてしまった……。



私は……

コールドスリープから……

目覚めた……。

暗く、

狭い部屋に

横たわっている……。

起き上がり……、

手探りで

部屋を出る。

暗く狭い通路を通り、

システムの建物から

外に出た。

空は

今日も曇っていて、

風が冷たい。

私は自分の体を見る。

布切れ一枚しかまとっていない。

起きたとき、体にかけてあった布。

ほんとこんな格好で放り出すの、やめてほしい……。

このまま街を歩いて、家に帰れって……?

でも、親切な人もいるもので、

フェンスのそばに、衣類の入ったコンテナが置いてある。

適当に選んで着る。サンダルも履く。

「えっと……ここは町の北?それとも、南?」

人気のない、広い場所……。


家に帰り、チャイムを鳴らす。

「メゾ。ただいま。」

勢いよくドアが開いて、メゾが抱き着いてくる。

髪が長くなっている。三年分……。

私も抱きしめる。

「メゾ、ごめん……失敗しちゃった……。」



メゾが、私の腕に触る。

傷跡がある。

ほかにも、体のあちこちに。

私もメゾの手首に触り、微笑む。

「切らずにいてくれたんだ?」

手首も、髪も。

また、ズタボロになってるかもしれないと思ったけど……。

「……頑張ったんだよ?」

と、鼻をすすっている。

警報機を持たせていたし、護身術も教えたし、とにかく逃げろと言ってあったから、三年間、痴漢や拉致の被害はなかったらしい。

「うん。よく頑張ったね。……ありがとう。」

メゾが愛しくて、ふわふわの髪をなでる。

私たちは……

もう一度キスして……

眠った……。



このままだと、二年後にメゾがコールドスリープに入る。その三年後に私が。

見事に食い違ってしまい、合わせて六年間、お互い会えなくなってしまう……。

「メゾがコールドスリープから覚める直前に、私が自殺するよ。

そしたらそこから五年間、一緒に暮らせる。」

そのために、いいタイミングで自殺する。ほかにどうしようもない。

でも、メゾは不安顔で首を振る。私は言う。

「ごめん……

一緒に死のうって約束したのに、私がヘマしたから……

だから、自分で始末したいんだ。

メゾと一緒に生きるために。

次は失敗しないようにするから。

私を信じて。」

システムに排除されるまでのカウントは、

メゾがあと一回で、私が二回……の自殺。



夜……

ベッドで……

メゾが、私を抱えて、傷跡をなでる……。

指で……

舌先で……

「あは!そこはくすぐったいんだってば!」

身をよじる。

でも、メゾはやめない。

……泣きながら、繰り返す……。




「ごめんね、荷物持ってもらっちゃって……。」

「ううん。」

メゾは、きゃしゃな腕で重めの手提げを持っている。

私は大けがの後遺症で、体がきしむようになってしまった……。

重いものが持てないし、歩くのも遅い……。

二人で道を歩いていると、数人の男とすれ違った。

……最後の一人が、

すれ違いざまに、

私の胸に、

ナイフを叩き込んだ。

瞬時にヤツの腕をつかんだけど、

勢いを殺しきれず、刺された。

気づくのが一瞬遅かった。

「お前……!」

まだ消されてなかったのか……!

歯ぎしりする。

以前、メゾを襲ったヤツだ。通行人に紛れてやってきたのだ。

両手で腕をひねり、ナイフを放させる。

ヤツはすぐさまメゾの髪をつかんで引っ張る。

「きゃあ!」

私は大声で言う。

「伏せて!」

ヤツは、とっさに腕で胴をかばう。

私は、奴の目にけりを入れた。

ヤツはうめいて手を放す。メゾは急いで離れた。

ヤツの腕をつかみ、

足をすくって投げ、

顔面から地面にうつぶせに倒し、

背中に膝を落として乗っかる。

そして……

私は、胸からナイフを引き抜いた。

逃れようとするやつの頭を、

体重をかけて素早く押さえ、

首を刺し、

切り裂く。

私は返り血を浴びる。

……男は動かなくなった……。

私は袖で顔をぬぐい、起き上がる。

「はあ……二度も、同じとこ狙うわけ、ねーだろ!」

それにね、

胸は、コートのあわせもボタンもあって、骨もあるし、

いくら切れるナイフでも、深く入んないから!

急所は外れるよう動いたしね!

確実に狙うなら、背後から首!

私は後ろを常に警戒してるからむだだけど!

……てか、

勢いでやっちゃったけど、

コイツまたクローンになって生き返んのか……。

舌打ち。意味ないじゃん。

血の味。唾を吐く。

視界が暗くなる。

ああ、割と傷口深いな……。

メゾの悲鳴を遠くに聞きながら、私は倒れる。

ああ、でも……

殺人は、自殺と同じように、

排除のカウントに入るから、

……これで、

メゾに追いついた。

一緒に生きて、

一緒に死ねる……。

私は、ふっと笑った。


その後、私を助けてくれた人たちがいた。

近くの医師のもとへ、私は運ばれた。

けがの治療は、私たちの体に埋め込まれ、同化しているシステムがするけど、消毒したり、点滴したり、縫合したり、医師の女性が世話をしてくれた。

「気分はどうですか?」

「悪くないです。ありがとうございます。

……でも、またあいつと出会ったらと思うと……。」

殺人未遂はカウントに入らない。

だから、あいつは今回ノーカウント。

クローンになって甦って、また街に戻ってくる。

やつを、危険だからと、システムの出口で待ち構えて、捕まえて閉じ込めたとしても、ロボットがやってきて開放してしまう……。

システムが、国民に選ぶ基準は、体が健康であることと、システムに従順であること。

女性を痛めつけるキチガイでも、システムは良い国民として認識する。

殺人以外は、何をしてもカウントされないらしいから……。

ヤツはわざと、殺さないように私を刺した……?

いや?動きを止めたいんなら普通、目か足を狙うだろう。間抜けな奴だ。

泣き虫のメゾが、震えて泣きながら私の手を握っている。

「レナ……。」

「メゾ……引っ越そうか。」



ベッドに横たわったまま言う。

「メゾ……ごめん、あいつ、殺さなきゃよかった……。」

最初の計画通り、メゾがコールドスリープから目覚めるタイミングで自殺したほうが、二人で過ごせる時間がずっと長いのに……。

これじゃあお互い三年ずつ待たなきゃならないし、二年しか一緒にいられない……。

二人ともカウントが五になったから、もう後がない。

私はバカだ……。私こそ、間抜けだ。

ああ……頭に血が上って、殺したくなっちゃったんだよね……。

気絶させればいいだけなのに……。

感情的になると、ヘマをする。そりゃあそうだ……。

深くため息をつく。

私を信じて。なんて言ったのは、どの口だっけ?

メゾは私の右手にキスする。

「……。人殺しの手だよ……。」

ひっこめようとすると、メゾは両手で握って、

「私を救ってくれた手だよ!私の大好きな手だよ!」

嬉しそうに言った。

「メゾ……。」

申し訳なさすぎる……。

でも……正当防衛ではあった。

世が世なら、裁かれて牢屋に入れられるヤツだ。

アイツが野放しになってるこの世界こそ、おかしい。

ヤツが相当不幸な人生を歩んできたのだとしても、女性に八つ当たりして痛めつけるなんて、イカレてるし、許せない……!

それでもシステムは、ヤツを国民に選び続けるし、カウントされるのは、私のほう……。

はあ……こんな世界で、まともな人なんているのかな……。

けど、やっぱり、殺す必要はなかった……。

ああ、もう、考えるのも悲しいし、ぞっとしてくる。

深く考えるのも、シリアスなのも、私の性に合わないんだよね……。

涙をぬぐう。

メゾの言う通り、私は必死にメゾを助けた。

もうそれでいいってことで!

誰からも許されないのだとしても

メゾを守れれば

メゾが私を好きでいてくれれば

それでいい……。



「いたた……!」

体を動かせられない……。

アイツと無理に戦ったから、あちこち痛い……

抜糸が済んでも、何日か入院させてもらった。

メゾもずっと一緒にいた。一人でなんて、帰せない……。

そしたら、医者がマッサージや体操を教えてくれた。続ければ、体の軋みが改善されると。

先生は、傷跡や、皮膚のつっぱりを改善する治療をしてくれる人も、紹介してくれた。





別の町に引っ越して少し経った後、メゾがコールドスリープに入り、私の体は性別ない状態に戻った。

借金して傷跡のひきつれを改善してもらったから、ちゃんと稼がないと。

私は仕事を見つけ、働いた。

教わった体操で、多少良くはなったけど、体は相変わらずきしむので、デスクワークにした。



「メゾ……会いたいよ……今日は上司に叱られちゃった……。」

メゾは、

「えー、そんなことで?ひどい!」

と、笑うだろう。


メゾは……私が何をしても、私の味方で、好きでいてくれる……。

どこまでも、ずうっと……。

だから、絶対傷つけたくない……。

悲しませたり、寂しい思いをさせたくない……。


……ああ、あのときに戻れたら……

アイツを殺さずに済ませていたら……

何度も悔やんでしまう……。

メゾが言っていた。


「私も、レナと一緒にナイフを持ってたんだよ。

一緒に血を浴びたんだよ。」


……あれは……

二人で望んだことだった……。

だから……仕方ない……

哀しいけれど……

……もう、それはそれで、お互い慰めあうしかない……。


私は思う。

……アイツは……

……男じゃなかったら、あんなことしなかったんだろうか……。

性別なくても、女だったとしても、

別の形で弱者に八つ当たりするんだろうか……。

たぶん、そうなんだろう。

アイツがそんななのは、百パーセントシステムのせいなんだろうか……。

違うだろう。何の八つ当たりなんだか。

薬の煙を吐き、ため息をつく。 


「メゾ……

この世界も、

記憶も、

幸せで

素晴らしいことだけで

できていたらいいのにね……。」


全ての人が、

全てにおいて対等で、幸福だったら……。

でも、それでは

人間じゃないのかもしれない……。





レナが好き。

ものすごく、好き。

私に笑いかける笑顔も、

目と首筋にかかる長さの、赤褐色の巻き毛も、

黄金色に近い茶色の瞳も、

薬を持っている時、回していじる癖も、

戦闘にたけていて、身体能力が飛びぬけて高いことも……(あの俊敏なロボットから逃げ回れるほど)。

やさしくて、多少雑なところがあるのも、

全部、全部、大好き。

そして……

レナは、私を救ってくれた……。

何度でも、私を救ってくれる……。

レナは、私を抱きしめて嬉しそうに言う。

「メゾとこうしていられて、すっごく幸せ!」

私は嬉しくて、泣いてしまう。


……不幸のカオスから抜け出せずにいたころ……。

この世界で生きることがつらいのは、

私が祖であるせいなのか、

システムのせいなのか、

私自身のせいなのか、

ほかの人たちのせいなのか。

分けることができなくて、わけがわからなかった。

髪を短くし、

胸を押さえ、

男物の服を着、

分厚いコートを着ていても、

この、平均より三十センチ近く低い身長と、声の高さは隠せない……

昼間のスーパーでも、日常的に痴漢に遭う……。


……私の体は……

多数の男性から、そういう目で見られている……。


どれほどいやでも、怖くても、

私の心は、この体から出ていけない……。

逃れるには、死ぬしかない。

システムに選別されるまで、自分を殺し続けるしかない……。


男に抱き着かれ……

手触りの悪いコートの前を無理やり開けられ

触られる。

力に差がありすぎて

怖くて抵抗できない……。


なんで、私と男性は、こんなに力の差があるんだろう。

なんで、こんな身長差があるんだろう。

なんで、私はこんな目に……。


私は、罰を受けているんじゃないか……。

いったい何の……。

生きていることの……?

祖である、女性であることの……?


……汚いこの体を捨てたくて……

首をつって自殺し……

クローンになって再び目覚める……。

もう、生き返りたくなんかないのに……。

体なんかいらないのに……。


……ここに……

この体の中にいる私を見てくれる人は

いない……。


……どうして私は祖なんだろう……


どうして私は

一生女じゃなきゃいけないんだろう……。


ほかの人たちが、本当にうらやましい。

一人でいるだけで、性別から解放される。


……たとえ

私を守ってくれるやさしい男性が現れたとしても

私のそばにはいられない……。

一緒にいると、女性になってしまうから……。

それでもいいという人は、いないだろう……。


私は、人におびえ、

中身が寂しさと悲しみしかない自分に絶望し、

カオスの闇に飲まれ、

手首の痛みで、

ようやく、自分がここにいることを確かめて、

痛みと悲しみともに感じられる、

死に近づいた、

わずかな安どと心地よさのようなものに、

ほんのひと時慰められて……。

きっとまた絶望と

悲しみと

恐怖しかない明日へ

自分を運ぶための労働をする……。


私は……

自分のことも……

自分の体も……

全く好きになれずにいた……。



とうとう、恐れていたことが、現実になった。

見知らぬ男性が、私を暗い路地へと引っ張り込んだ。

思わず叫んだら、殴られた。


もう怖すぎて、体が動かない。

腰も抜けて、逃げられない。

ものすごい力で、引きずられていく。


「……殺して……!」


そのほうが、百万倍マシ。

でも、人が死ぬと、ロボットがやってくる。

だから、殺されない。


死なないように、

殺される。


どうしてこんなことが起こるんだろう。

どうして私だけこんな……

祖の遺伝子に呪われているんだ、きっと……


私は

パニックになっていた。

その時だった。

レナがやってきて、男に飛び蹴りしたのは。


気絶した男を見る、レナの冷酷な目。

私を見る、暖かな同情のまなざし……。


私は

レナに抱き着いた……。


私のアパートで、レナは私の手首を見て言った。

「やめなよ……。」


胸と、喉と、顔が、熱くなった。


私は、ずっと、そう言われたかった……。

大切に思われたかった……。

レナに、会いたかった……。

レナが、欲しかった……。

私は思わず縋りついた。


「そばにいて……!」


やさしいレナは、微笑んだ。

「……もちろん。」


レナは、私に提案した。

「そうだ、もしよかったら、共同生活しない?家賃も浮くし!」

「……うん!」


レナは、私の部屋に越してきて、女性になった。

私は、髪を伸ばし、スカートをはき、きれいにお化粧をするようになった。

強くて美人のレナに愛されて、

楽しく暮らして、

私は本当に幸せ……。

喧嘩みたいになることもあるけど、必ず笑って終わる。

「レナ、すごく綺麗!美人!」

レナは恥ずかしそうに言う。

「メゾが、私をこの体にしてるんだよ?」

レナが完ぺきな美しい女性なのは、私が祖だから……。 



レナと二人で心中したはずなのに、クローンになって目覚めたのは、私だけだった……。

「レナ……!」

不安で、悪いことばかり考えてしまう。

もし、私の知らない理由で、レナが排除されてたら……!

クローンにもなれず、

コールドスリープもされてなかったとしたら……!

二度と会えなくなってたら……!

毎日震えて、

会えることを必死に祈り、過ごした。

……三年後。

レナがコールドスリープから目覚め、帰ってきた。

「メゾ。ただいま。……ごめん。失敗しちゃった……。」

私は抱きしめる。

「謝んないで……!」

私はすぐに、レナの歩き方がぎこちないのに気付いた。それに、やせた。

私が泣き止むと、

「シャワー浴びてくるね。」

バスルームをそっと覗くと、脱ぎづらそうに服を脱いでいる。

肌に、何か所も傷跡が走っていた。

あの時何があったのか、はっきりと分かった。

やっぱり……!

「メゾ⁉」

私の泣き声に、レナが近づいてきた。

座り込んで震えて泣いている私に、

「メゾ、大丈夫だから。痛くないし、ちょっと突っ張るだけだから。

こういうのは動かしてればそのうち治るから……。」

と、笑いかけてくれた。

レナは……片足を伸ばさないと、しゃがめない……。


レナは毎日頑張って体操し、ウォーキングし、体力を取り戻していった。

でも、どうしても動かしづらい角度がある。

私は髪を結い、パンツをはき、レナのリハビリを手伝った。


「あは!そこはくすぐったいんだってば!」

裸のレナは、身をよじって笑う。

私は、レナの傷を、一つ一つ、手で、口で、なでる……。


……私にレナの体を変える力があるんなら、傷跡も、後遺症も、治せればいいのに……。


「……ありがとう。メゾがなでてくれたとこは、少し楽になるんだよ。」

レナは優しい嘘をつき、私の髪をなでて、抱きしめてくれる。


「メゾが、コールドスリープから目覚めるタイミングで自殺する。」

と、レナは言った。

「この体はそれまでの間だから、メゾが目覚めたときには、無傷の、元通りの私になってるよ。」

でも、もしまた……自殺し損ねたら……。

不安でしょうがない私に、レナは、

「私を信じて。」

と、微笑んだ。



一瞬だった。

男が、殴るように、レナの胸にナイフを突き刺した。

「きゃあ!!」

レナが腕をねじって手を離させた。

私は髪をつかまれ、引っ張られる。


……レナはいつも、男の人とすれ違う時、さりげなく私を反対側へかばった。


あの時、私を連れ去ろうとした男は、鼻とあごに特徴があった。

私もレナもそれを覚えていて、町を歩くときは注意していた。

でも、今回は、鼻から下を隠して襲ってきた……。

通行人に紛れて……。

私たちを覚えてて……。


「伏せて!」

レナが叫ぶ。でも、髪をつかまれててしゃがめない。

けど、それは私にではなく、男に防御の姿勢を取らせるためだった。

レナは、隙のできた顔にけりを入れた。

男はうめき、手を離した。

私は急いで離れる。

「誰か!助けて!!」

レナは動かしづらいはずの体を必死に操って、男をうつぶせにし、自分の胸からナイフを抜き取った。

「ああ!!」

レナ!!抜いちゃダメ!!

素早く、男の首を切った。

「……二度も同じとこ狙うわけねーだろ!」

憎悪の表情で言うと、ふらつき、ナイフを手放し、倒れた。

「レナ!!レナ!!」



殺人は、システムにカウントされる。

そして、自殺もカウントされる。

レナが死んだら、これでカウントが六になって、抹消されてしまう……!

「助けて!お願い!!誰か!!」

ロボットが来るより前に、駆け付けた人たちが、近くの医師のもとへ、レナを運んでくれた。

レナは……

助かった……。

刺されたのは、ちょうどコートのあわせのところで、傷はそこまで深くはなく、心臓からも、動脈からもそれていた。

女医の先生が切り口を縫ってくれた。

三日で抜糸できると言われ、私はほっとして、気を失った。


眠っている美しいレナの、

顔や、髪や、手についた返り血を、

丁寧にふき取った。

レナは、体を張って復讐してくれた…。

あんなに激して、私の代わりにあいつを殺してくれた……。

「レナ……!ありがとう……!ありがとう……!」

私は、泣きながら、レナの美しい右手に顔を擦り寄せた。

ナイフを持っていた手……。

その手が動き、私の頬をなでた。

顔をあげると、レナが目覚めてほほ笑んでいた。

「メゾ……。」

強くて、美しくて、やさしいレナ……。

私のために、

全身傷だらけになっている、レナ……。

「メゾ、ごめん……あいつ殺さなきゃよかった……。」

後悔の目。

レナはカウントされ、あの男はカウントなしで、クローンに再生される……。

意味なかったと思っているらしい。

私は、何度も何度も首を横に振る。

レナの右手にキスする。でも、

「人殺しの手だよ。」

と、ひっこめようとする。

「私を救ってくれた手だよ!私の大好きな手だよ!」

たびたび痴漢に会い、

多数の男性に欲望の眼で見られていると、恐怖し、

絶望していた日々……。

レナは、彼らと私の間に立ちはだかって、

激しく憎んで、躍動し、

全員に切りつけた。

私に向けられている、

レナの、傷跡の走る腕と背中……。

倒れた彼女は、顔も、胸も、手も、

全身が赤く染まっていて……。

レナだけじゃない。

私も……。

「私も、レナと一緒にナイフを持ってたんだよ。一緒に血を浴びたんだよ。」

私も……

殺したいほど、彼らを憎んでいた……。

「メゾ……。」

レナは、驚いて私をじっと見ていた。

「レナ!早く元気になって……!」

彼女の腕を抱きしめて、すがった。

「……うん……。ありがとう……。」

レナは、私の頬や髪を小さくなでてくれた。

私は、レナのためなら、なんだってする……!





新しい職場で、同じ部署の同僚の男性が、私を気にかけてくれている。

私の体が不自由だから……。

毎日、十数人人のいる仕事場へ通っているから、私は今度は男性化している。

「レナバード、今度一緒に食事に行かない?」

「……いいけど、私、恋人いるよ?」

念のため。彼は苦笑する。

「僕だって彼女いるよ!誘ってるのは、友達としてなんだけど。」

「あ、そう。ならいいけど。」

まあ暇だし、彼と友達になることにした。この町に来て、初めての友人。



次の休日。

彼と一緒にレストランへ入り、喫煙席に座って、ランチを注文した。

「レナバードはさ、本当は女の人だよね。」

「うーん、まあ、そうだね。」

「彼氏はコールドスリープ中?」

「彼氏じゃなくて、彼女。」

「えっと、彼氏で彼女?」

確かに、私たちはややこしい人種だと思う。

「私の彼女、祖なの。」

「へえ!?珍しいね……!すごい!

僕初めてだな!会ってみたいな!

起きたら紹介してよ! 」

「まあ、そう思うのも無理ないけどさ。」

私だって、はじめ知った時は驚いたし。

「あの子はいろいろあって、男が苦手なんだよね……。」

「……そっか……。あの、ごめん、僕、今失礼だったかも。失礼だったね?」

「……。」

「え、何、その笑い……。」

「いや、君みたいな男もいるんだなあって……!」

「え??」

メゾもこのぐらい正直でお人好しで天然な奴となら、友達になれるかもしれない。


「レナバードは……どうして障害があるのか、聞いてもいい……?」

「心中しそこなったの。バカだよね。」

私はくすくす笑う。それから、

「君は?自殺とかしたことある?」

「……ないよ。」

「なさそうだね。」

「自殺も心中も、したいと思ったこともないから、わからないけど、レナバードはバカじゃないよ。」

まじめに言うもんだから、笑ってしまった。

「……あはは!ありがと!」


食べ終わった。

「一本吸ってもいい?」

「どうぞ。」

私は薬を取り出し、火をつける。

「え!麻薬⁉」

「あ、ごめん、やだった?」

灰皿に手を伸ばす。

「いや、喫煙席だし、かまわないよ。」

「じゃ、お言葉に甘えて。軽いやつだからあんまり害はないんだ。気にしないで。」

「うん、わかった……。」

一息吸って、換気口のほうへ吐く。それから彼に言う。

「君、周りにいる人、みんないい人ばっかりなんだね。」

「うん……そうだね。」

会社も、感じよくって働きやすい。

こいつの彼女も、カワイイいい子なんだろうな。

……ここは、町全体が、善良で温かい雰囲気。

治安がいいと聞いて、この町に越してきた。

ここの住民は、彼のように、壊れてない人ばかりのように思う……。

この違いはいったい何なんだろう?

彼が、珍し気に私の手元を見て言った。

「それ、どうやってんの?」

「あ、これ?」

火のついている薬を回しながら、指の間を往復させている。

「癖で。」

「器用だね。やけどしたことないの?」

「ないよ。」

「すごい!」

と、彼は子供みたいに、屈託なく笑った。

「……レナバードって、僕と一つしか年違わないのに、大人だよね。」

「そうかな。」

奇跡的に恵まれている彼は、私を不思議に思うらしい。彼は言う。

「さっきさ……心中し損ねたって話してたけど……

どうしてそうしようとしたのか、聞いてもいい?」

「普通に、コールドスリープのタイミングを合わせたかっただけだよ。」

「でも……死ぬのに抵抗はなかったの?」

「メゾも私も、四回自殺したことあったから。」

「え⁉四回も!?じゃあ、あと一回と二回なの!?」

「一回ずつだよ。私は死にぞこなったけど、一度人を殺したから。」

「!!?」

「向こうから襲ってきたから、正当防衛だよ。

あの男、二度もメゾを連れ去ろうとしたから、頭に来たんだよね。」

彼と目を合わせず、薬を一息吸う。

事実を隠したってしょうがない。

彼が、私を知りたがっているから、話したわけで。

彼は、両手で頭を抱えて沈んでしまった……。

私は、灰皿で薬をもみ消して立ち上がる。

「今日はそろそろ帰るね。誘ってくれてありがとね。楽しかった。また明日。」

彼は頭から手を離したけれど、言葉が出ないし、私の足元しか見ない。



この町が治安良くて、ひとを支える仕組みが整っているのは、そういう団体があるからだ。

住民は、コールドスリープの時期が来ると、ロボットが迎えに来る前に、自らシステムの建物へ行く。そう教え込まれている。

それに、悩みや相談事を受け止め、自殺者、他殺者を出さないようにする取り組みが充実している。

そのためか、ここにきてからまだ一度も、ロボットを見かけてない。

システムを憎んでる人なんて、いない。

人の役に立つ仕事を楽しんでいる人しか、いない。

声掛けがお節介に感じることもあるけど、だれ一人放置しないという信念が、共有されている。

見事だと思う。

だから、やりきれない悲しみや絶望を知らない、同僚の彼のような人が育つ。

……その彼が、また話しかけてきた。

「レナバード。また食事に誘ってもいいかな。」

まだ辛そうな表情。なんかかわいそうになってきた。

「いいよ。」



ランチを注文するとすぐに彼は、申し訳なさそうに言った。

「レナバード、この間はごめん……。

言いづらいことを話してくれたのに、僕は受け止めきれなくて……

傷ついただろうなって……。」

「えっ?いや?」

ショックで傷ついたのはそっちだろう。

私は言う。

「この町にいると、暴力や犯罪や、システムが見せつける非情さから無縁でいられる。

おびえることも、警戒する必要もない。

すごいことだと思うよ!

よその町の人の痛みがわからなくたって、君が悪く思う必要なんかない。

全然謝んなくていいし!」

でも、彼はなんか深刻そうな顔で言う。

「レナバード……

でも、僕は知る必要があると思うんだ。

ここが外より恵まれてるって、知ってはいたけど、

実際、外がどんななのか、ほとんど知らないんだ…。

……同じ人間で、子供時代、システムから同じ教育を受けているのに、

年の違わない君が、四回も自殺して、人も殺してる……

想像がつかないんだ……。」

「ああ、私が自殺したのは、単に、システムのロボットに捕まりたくなかっただけで……。」

「外の町には、ロボットがいるんだ?」

「……見たことないの?」

「ない。」

驚いた……。

それじゃ

人がロボットに運ばれてる光景も、見たことないんだ……。

自殺者や

コールドスリープさせられる人や

排除される人

堕胎させられる女性……。

死んだように、

だらりと動かない彼らを

運ぶ光景を……。


……私が麻薬を吸うようになったのは……

薬をやってると……

そういう光景を目にした時の絶望感がマヒして、気分が軽くなり……

震えが止まるから……。


「ロボットは、街中で何をしてるの?捕まりたくなかったって、どういうこと?」

「……。」

指先が、震えてくる。

「一本吸ってもいい?」

「どうぞ。」

私は麻薬に火をつけて吸う。震えが止まる。

「……君は、知らないほうがいいと思う。」

「……。」

外の町について、彼は質問しなくなった。



前より広い部屋に越したから、メゾがいないと空間が余る。

この街には良い店が多いから、家具や服も良質で美しいものが手に入る。

メゾと一緒に選びたいけど、私が気に入ったものは大抵メゾも喜ぶからいいか。と思って、いくつか新調した。



出勤前に、窓から顔を出して薬を吸っていると、同じ色の腕章をした人たちが、このアパートに入ってきた。

少しして、うちのチャイムが鳴る。

「レナバードさんは御在宅でしょうか。」

ドアを開けると、なんか知らんけど、体格のいい男性たちがいて、

「少しお話を伺いたいので、我々についてきていただけませんか。」

と言った。

腕章には、この街を統治する善良な組織の名前がかかれている。

しょうがない。付いていくことにした。

私は歩きながら言う

「この街の人は、みんな、こんな風に何の説明もなく、あんたらに連れ出されるの?」

彼らは無口だ。

組織の大きな建物につき、中に入る。

入り口で持ち物を預けさせられる。

それから奥のほうの部屋へ案内された。

部屋に入ると、一人の男性が立ち上がり、にこやかに言った。

「お待ちしてました。どうぞおかけください。レナバードさん。」

「……待たせてすいませんね。足が不自由で、歩くの遅いんですよ。」

「はい、存じてます。あ、コートをお預かりしますね。」

私はコートを脱ぎ、手渡して椅子に座った。

足を組み、腕も組む。

「それで……。私はこれから、あなたがたにリンチされるわけだ。」

ドアが閉まっている。私の背後には、私を連れてきた男たちがいる。

正面の男は笑って言う。

「とんでもない!いくつか質問にお答えいただくだけです。」

「ふうん。」

どうだか。


……いくつか、ね……。

もう三時間も質問され続け、答え続けている。

私のこと、レナのこと、今まで住んでいた街のこと、

うんざりするほどねちっこく、のらりくらりと質問されている……。

「はあ……

そろそろ疲れてきたし、体が痛んできてるんですが。さっきから寒くて余計……。

コートを返してもらえない?後、薬も吸いたいんだけど……。

一本でいいから、返してくれない?」

「すみません、もう少しで終わりますので。

……外からいらした方々には、皆さんこうしてお答えいただいているんですよ。」

彼自身はコートを着込んでいる。

げんなりしてため息をつく。

「へえ、それで、いつ本題に入るの?」



さらに四時間ほど質問が続いた。

……つまり……

彼らが知りたかったのは、私が人殺しなのかどうかということだった……。

私はしんどくて、座面の左右をつかんで腕で上体を支えて、うつむいて言う。

「だから後悔してるんですよ。

……もう二度としないって、決めてるんです……。」

「そうですよね……。お気持ちお察しします。

ですが……本当に申し訳ないんですが、この町に、あなたを住まわせるわけにはいかないんです……。」

私は体力の限界を超えている。

「心から同情しますが、規則なんです。」

人を殺すようなやつは出て行け、か。

私は震えている。

「……メゾは?

……あの子だけでも、住まわせてくれない?

せめて、私がコールドスリープしてる間だけでも……。」

「すみません、メゾさんも無理なんです。」

「なんで……。」

「あなたの殺人行為を、肯定する発言をなさったからです。」

「……。」

「……確かに、祖の方は、とても貴重です。

政治的手腕に優れた方々ですので、本来なら歓迎するところですが……

殺人者を支持する人に、この町を託すことはできません。

もっとも、我々にはすでに、素晴らしい統治者がおられるわけですが。」

「……。」

その女王のお言いつけで、私たちは追放されるわけだ……。

懇願する気力もない……。

したところで、はねのけられる……。

「退去してくださいますか?」

「……。」

……私は、うなずいた。

反動で、あごから涙がしたたり落ちた。

彼は姿勢を正して言う。

「全住民を代表して、感謝いたします。」

それからため息をついて、

「お送りして差し上げて。」

サインする書類すらない。

私たちは、はじめからいなかったことになる……。

背後からやってきた男に、私は立つよう促される。

けど、長時間寒い場所で動かなかったから、足が凍えて自分では立ち上がれない。

足も、背中も、

腕も、胸の傷跡も、

痛む。

朝食以来飲まず食わずで、薬も吸えなかったから、

さっきから震えが止まらないし、

息も苦しい。

彼らの腕を借りて立とうとしたけれど、

うまく足に力が入らず、

のめって床に倒れてしまった。

「く……」

痛い……。

二人が両脇に来て、

両腕をつかまれ、

つるされる。

「ああっ!!」

その角度は腕が痛い!顔をしかめる。

でも、何とか足に体重が載った。

苦しい。

二人にコートを着せてもらい、

肩を借りて、

片足を引きずりながらドアへ向かう。

途中、私は横目で質問男を見ながら言った。

「確かにこの街はいい街だと思うよ。

でも、あんたら、気づいてる……?

自分たちが、システムと同じことをしてるって……。」



送ってくれたのは、建物の出口までだった。

もう夜だ。

何とか近くの飲食店へ行き、温かい料理を食べた。

また時間をかけて家までたどり着くと、

……家の中は空っぽだった。

業者の名前が印刷された紙が、壁に貼ってあった。

引っ越し先の住所が書いてある。

もちろん外の町。前とは違うとこだ。

……ふと、

天然の元同僚の顔が思い浮かぶ。

「……。君は悪くないんだよ。」

たぶん、こういうことになるって知らずに、誰かに話したんだろう……。

でなくても、もともと私はマークされてたわけだし、接触した彼は、あいつらに質問されたんだろう。

「ごめん。君もきつかったよね……。」

私をかばおうとしたかもしれない。

「ごめん。ありがと。」

口元を上げる。

……壁に寄り掛かり、足を投げ出して座り、ポケットを探った。薬が吸いたい。

でも、どこにもない。

ああ、そうだ。コートと財布以外は没収されたんだった……。

舌打ち。

床に横たわる。


「気づいてる……?

自分たちが、システムと同じことをしてるって……。」

私が言うと、あの男は、こう返した。

「あなたがメゾさんを守っているように、私たちはこの町を守っているんです。

あなたは、この町の住人が知らなくていいことを知っている。

それだけで、あなたは、

ただいるだけで、平安に波風を立てるんですよ。

我々も、必死にやっているんです。

長年、どれほどの努力を重ねて、今の町になったか、あなたにはわからない。

……システムと同じことをしていると、あなたは言いましたが、我々は、殺人はしません。

……むしろ、

同じなのは、あなたのほうでは……?」


息が、震えている。

頬が、濡れている……。


私は、必死に震えを抑えて言った。

「……あんたも、外の人だろう。」

同僚と違い、外のことをよく知っている風だった。

それに、何より……

こんな仕事、この街の人間にできるはずがない……。

彼は……、

「……ここは、私にとって安住の地です。でも、あなた方には違う。」

そう言って、私たちを締め出した……。


私は、真っ暗で、痛くて、寒い……。

「メゾ……ほんとごめん……。ほんと、殺さなきゃよかった……。」


一度落ちたら……

もう二度と、元には戻れない……。

どれほど頑張っても……

失ったものを取り戻すことは、できない……。



組織が用意してくれた車が、私を外の町まで運んでくれた。

引っ越し先には、ちゃんと全部荷物が届いていた。

「はあ……。」

ベッドに横たわる。

あいつらに拘束されて以来、何錠痛み止めを飲んだことか…。

「早く動けるようになって、仕事探さないと……。」


けど、なかなかよくならなかった。

動作の一つ一つがままならない。

自分の世話をするだけで、精いっぱいだ。

立てなくなると、ロボットに連れ去られて、システムに排除される。

毎日必死に頑張って、リハビリした。


そうするうちに、コールドスリープの時期がやってきた。


システムのおぞましいロボットが、私を迎えにやってきた……。

勝手にドアを開けて、部屋に入ってきた。


私はソファーに座ったまま言う。

「やあ、いらっしゃい。」

足を組む。

「チャイムぐらい鳴らしたら?

……でも、わざわざ迎えに来てくれて、ありがたいよ……。」

近づいてきた、黒光りするロボットを見上げて、私はほほ笑んだ。





コールドスリープから目覚め、

町へ出ると、

引っ越したはずの町とは違う場所だった。

「レナ……。なんで……?」

この場合、お店で端末を借りて、自分の家を調べるしかない。

地図をプリントアウトして、町を歩く。

知らない住所のアパートにつくと、大家さんがカギを開けてくれた。

いくつか家具が新しくなっている。

でも、荷解きが済んでいない……。

テーブルに、レナからの手紙を見つけた。

「メゾへ。

人もお店も感じよくて、住みやすい良い街だったけど、牛耳ってる組織が気に食わないんで、こっちに引っ越した。

勝手してごめんね。

メゾ、一人は心配。

どうか、頼れる人を見つけて。」

少し崩れた字……

レナの体調が悪化したことは、すぐに気づいた。





「メゾ。ただいま。」

メゾは、私に抱き着いた。……いや、私を支えた。

そのままベッドへ連れて行き、寝かせてくれた。

「お水取ってくる!」


「待って。」

メゾの袖を引く。

「メゾ……会いたかった……。」

涙がにじむ。


「レナ……!」

メゾは、私を抱きしめて添い寝してくれた。


……コールドスリープさせられるまでの三年間、

私は毎日、

メゾのドレスを壁にかけて、

眺めて過ごしていた……。


ベッドの近くの壁に、

私のドレスがかかっている……。

メゾも、同じ……。



変化している間はしんどかったけど、

女性になってからは、少し体調がよくなった。

メゾが世話をしてくれるから、リハビリに専念できた。

徐々に体重も戻ってきたところで、メゾが言った。

「どうしてこうなったのか、話して。」

「ん……。

なんでだか、私が人殺しだって、役人に知られてて、

本当かって問いただされた。

しょうがないから事実を話したら、

追い出されたんだよね……。

この体は、またうっかりヘマしちゃってさ。

ほんとバカでごめんね。」

メゾは私を抱きしめた。

「あの町、メゾには住みやすそうだったのに……ほんとごめ」

キスされた。



頑張った甲斐があって、

ゆっくりなら杖なしで歩けるようになった。

メゾが、行きたい店があると言って、私を連れて行った。

入るなり店の人が、

「メゾ!」

「メゾ!久しぶり!」

「あなたがレナ⁉」

なんか、メゾが人気者になっている。

女性や、女性的な男性たちが、メゾの肩や髪をなでる。

メゾは私に言う。

「三年間、ここで働いてたの。」

「この子はすごいよ!」

「みんな女子になってたよね!」

「私たちも常連も。女性になりたくてわざわざ会いに来る人もいたし!」

「楽しかった!」

「またうちで働いて!」

メゾは楽しそうににっこりする。

「うん、ありがとう!」

彼女たちが飲み物をおごってくれた。

店を出て、私は言った。

「メゾ!よかったじゃん!」

「レナが、頼れる人を作れって書いてくれたからだよ。」

メゾは嬉しそうに笑った。



「メゾ。あのドレス、着て見せてよ。」

平和でシステム的な街で買った、ドレス。

ショウウインドウで一目見て、メゾのために作られたドレスだと思った。

メゾは髪を解き、パンツを脱いで、メイクして、ドレスをまとった。


雪のように、真っ白な,マキシ丈のドレス……。


「……綺麗……。」

私はほれぼれと見とれる。

とてもかわいくて美しい、雪のお姫様……。


「レナも、着せてあげる。」

ドレスであろうとなかろうと、私は、服もまともに一人で着られない。

一人の時は、ガウンばかり着ていた。


「レナ、綺麗……!」

メゾもうっとりする。

私のも、純白のロングドレス。


「ありがとう。」

私たちは、抱き合った。


私は笑って言う。

「こうして、くるくる回ったことがあったよね。」

「そうだね。」

メゾも笑う。


「回ってみようか。」

私たちは、ゆっくりと、少しずつ回った。


「……レナ……あのね……」

「ん?」

「……また、昔みたいに、動けるようになるかもしれない。」

「……え……?」

メゾを見る。でも、彼女は私を見ない。


「強い薬があるんだって。

……でも、強いから、一年くらいしか、体がもたないって……。」


メゾは鼻をすする。

「……メゾ…?」

呼びかけると、彼女は私を見上げた。


「私は動ける体になりたい。

また動ける体で、メゾと生きたい。」


一年でもいい。メゾを介護から解放したい。


「そう言うと思ってた。」


見つめ合う。

私たちの心は、

一つになっている。


……それでいい。

……それがいい。


まだ

人を殺していず、

返り血に汚れていなくて

平和で楽園のような街からも、追放されておらず

こんな孤立した悲しみは知らなくて、

毎日が

輝いてて

楽しかった、

ただただ幸せだった、

あの頃の

私たちに戻って……。


『一緒に生きて……

……一緒に……。』


うれしくて、

二人でくすくす笑った。



「メゾ!見てて!」

私は高く、宙返りをしてみせる。


薬は、とてもよく効いた。

もう、どこも何ともない。


「すごーい!レナ!」

メゾは興奮して拍手する。


私とメゾの二人きり。

小さくて、甘くて、きらめいている、二人だけの世界。



メゾと一緒に

一年間


幸せを


走って


踊って


笑って


めいいっぱい楽しもう。




私とメゾは


おそろいのドレスを着て


最後の階段を上がる。


二十階建ての、ビルの屋上。


お互いの


片手の手首を一つに結んだ


長いリボンが


夜風に軽やかにひらめく。


私たちはキスする……。


……長くて……


……甘い……


……最後の……


……幸せな……


……キスから離れると……


私は言う。


「メゾ?」


「なに?」


「楽しかったね。


来世も一緒になろう。


その次も、その次も、ずうっと……。」


メゾは


嬉しそうに


笑ってうなずいた。


「……うん!」



私たちは


しっかりと抱き合い……


お互いの……


鼓動を感じながら……


微笑んで目を閉じ……


……空へ……。



華やかで……


幸福な……


私たちの人生は……



……永遠になった……。


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