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#06 自分の行動を客観視できるタイミングって中々ないよね

前話からそのまま深夜テンションで書いてしまいました。。。

ま、悔いはないですし。こうゆうのが書きたいから書いてるので。

趣味全開の注意コメントが此処で生きてくるのです。

 男の子と仲良くなる。気になる異性を持たない女子中学生にとって、興味を持つには余りにも魅力に欠けるものだ。

 魅力性が疑われる議題に、お昼休みという学生生活の中で、かなり貴重な所に位置する時間を消費しても、私の求める回答が出なかったた。


 だから私は、この問題をしっかり解決するべく。心を許せるでお馴染みの、秋ちゃんともっちゃんを巻き込んで放課後に会議を行うことにした。


 と言っても、今日の部活は1週間に1日設けられる部活休日だったので。一度自宅に帰った後、近くのカフェに集合ということになった。


 集合場所に指定されたカフェは、他県では見ることはないと思えるような、CMで見たことないけど地元民は知っているという。地元に根付いているカフェだった。


 休日でも平日でも気軽に行きやすく。オシャレだけど落ち着いたクラシックな内装は、前世でも今世でも私のお気に入りだったりする。


 待ち合わせ時間より少し早くカフェに付くと、既に秋ちゃんともっちゃん両名が席を確保していてくれた。


「おまたせー、二人とも早いねー」

「私達も今来たところ、先に3人分ドリンク頼んでおいたから」

「お、流石秋ちゃん。ありがとお」


 秋ちゃんにお礼を言いながら、私の座る場所をもっちゃんが開けてくれたので、そこに座らせてもらう。


 地元に根付くカフェということもあり、このお店は定期的に通っていると幾つか特典が付いてくるようになっている。

 例えば、カフェオリジナルの来店スタンプがあり、一定回数を超えると会計時に幾つか割引を貰えたりする。


 中でも、私がここを気に入っている理由として、来店スタンプが一定を超えると”飲み放題ドリンクバー割引30%OFF”というものがある。

 これを使うだけで、本来であれば中学生では手が出しにくい400円ほどの価格が、300円以下に収まる計算になる。


 私達3人がここを利用するときは、決まって最初に席を確保した人が3人分のドリンク飲み放題を注文することになっている。


 自分の席に肩下げバッグを置いて、自分の分のドリンクを入れてくる。

 そうして、ようやく当初予定していた話し合いを始めることができた。


「と、いうわけで。どうしたらいい?」

「何がどういうわけか分かんないけど。とりあえずお昼休みの話でいいんだよな?」

「もっちろん。むしろそれ以外に私が話すことはないよ!」


 私は胸を張るようにして主張する。

 下世話な話だけど、私の友人二人は胸がそこそこある。私は今の所少し小さいぐらいだけど、完璧美少女として生れたからには顔に見合うスタイルになりたいと、密にスタイル維持に務めている。


 朝走るのは良くないとどこかのテレビで言っていたので、基本は部活から帰ってきた後とかに余力があれば、10分程度走るのが日課だったりする。


 他にも色々美少女に相応しくなるための努力をしているけど、何故か胸で二人に勝てた記憶がない。

 時々、そんな女性の魅力としてランキング上位に入るであろう部位の劣等感から、二人に未練がましい視線を向けることが暫しある。


「それ、私達以外の前でしない方がいいよ。絶対変な勘違いされるから」

「澄ちゃんは裏表がない人ですから、他の人もある程度は察してくれると思うけど。それでもあらぬ誤解は出てきそうですね」

「二人の前でしかこんな話出来ないよ。それで、何か良い案とかない?」


 ドリンク用のストローを口で遊びながら秋ちゃんが小さく唸る。

 普段、私をからかったり小ばかにしてくる秋ちゃんだけど、こういった悩みを相談する時は必ず一緒に悩んでくれる。

 私が数多く知っている、秋ちゃんの好きなところ。多分、男の子は秋ちゃんみたいな子に、ギャップ萌えするのだと思う。

 前世でも感じたことないから、よくわからないけど。


「やっぱり共通の話題が一番ベターだよな」


 少しの静寂を破った秋ちゃんの回答は、私が一人で悩んでいた時に何度もたどり着いた答えだった。


「私も最初はそう思ったんだけどねえ。最初はそれで上手くいくんだけど、途中からなぜか反応が悪くなるんだよー」

「あー、そうか。そうだよなあ」


 私の返答に、秋ちゃんは何か納得したように頷く。

 多分私が言わんとしていることを察したのだろう。そう、共通の話題というのはかなり有効ではある、だけど一つ大きな欠点がある。


「知識量の差がやっぱり問題だよね」

「いや、そこじゃねえ」


 どうやら秋ちゃんと私の考えは違ったみたいで、ならばと秋ちゃんの考えをせっつく。


「問題なのは澄ちゃんのほうだな、澄ちゃんって何か面白いと思ったモノって、凄いのめり込むじゃん」


 秋ちゃんの言葉に私は当然だと頷く。

 面白いと思ったから共通の話題として話を振ることができる、そして共通の話題を話せることで、さらにその物事を面白いと思うのは自然なことだと思う。


 だから誰かと共通の話題を持てた時、それが私にとって面白いモノだった時。私はどんどんそれにのめり込んでいく、時には周りが見えないほど。


「この間だって、なんかのアニメ? の話で盛り上がってると思ったら、次の日とかバッグに大きなキーホルダー付けて学校来たことがあったじゃん」

「え? それの何が問題なの」

「わっかんないかな、そうゆうのってさ。相手にどんどんその話題にのめり込まれると付いていけなくなって、話をするのが億劫になってくるんだよ。なんていうのかな、一種の熱量てきな奴に負けるんだよ」

「えー、なんでそうなるの。もっと一杯お話しできるじゃん!」


 秋ちゃんから言われたまさかの回答に、私は驚愕してしまった。

 納得できないという気持ちが顔に出てしまっていたのか、秋ちゃんは普段とは違う優しい声色で説明してくれる。

 こうゆうときの秋ちゃんはまるでお姉ちゃんみたいだ、本人に言うとからかわれそうだから、あまり言わないけど。


「例えばさ、澄ちゃんがそこそこ好きなアイドルが居たとする。それで、他の人も同じアイドルが物凄く好きだったとするじゃん」

「うん」


 私は脳内イメージで、秋ちゃんが説明してくれた内容を想像する。

 今、私の脳内では、もう一人の自分と顔が分からない?君を想像する。


 何故か?君が鈴木君に切り替わってしまった。


「二人が同じタイミングで好きなアイドルを応援したとき、澄ちゃんはそこそこな応援をしている」


 脳内の私が見知らぬアイドルにがんばれーと応援している。


「そんな澄ちゃんの隣で、もう一人のアイドルが物凄く好きな人が。全身から汗を垂らして、声が枯れるほどの声援を全身を使っているのを想像して」


 私の隣に鈴木君がやってくる。

 鈴木君がアイドルに気づくと表情を一変させて、出せる上限一杯の声援をいきなりアイドルに向かって始める。

 その表情はもはや必死の域に達しており、目は血走っていた。全身からは汗が滝のように溢れていて、それすら気にせず鈴木君は声援を辞めない。

 横でそこそこの応援をしていた私が、隣にいる鈴木君をみて驚愕の表情を浮かべると同時に、慄きながら後退していく姿が容易に想像できた。


(……うん、引くわ)


「……」

「どうだった?」

「わ、わたし、最低な人間だ……」


 私は今想像した光景と鈴木君の姿を、現実の自分と置き換えて考えた時。私はどれだけの罪を重ねてきたのかと、自分の人間性に恐怖してしまった。


 顔が美少女でも、中身がこれでは全く別のゲテモノでしかない。

 これだけで、今まで私が避けられるようになった理由が、納得せざるを得ない状況で容易に説明できてしまう。


「そ、そこまで発展するのは流石、澄ちゃんなだけあるな……」


 若干引き気味な秋ちゃんの反応に、私は気を回す余裕がなかった。


「あ、秋ちゃん。も、もっちゃん……。私、ど、どうしよう。皆に嫌われちゃうよお……」


 恐怖に震える私に、秋ちゃんは席を一つずらして座りなおすことで、自分が座っていた席を空席にする。

 そして私に、たまに出る秋ちゃんの慈悲深ボイスで優しく語りかけてくる。


「大丈夫だよ、澄ちゃん。ほら、こっちおいで。私は澄ちゃんを嫌いになんてならないから」

「あ、秋ちゃん……」


 目に涙を貯め、震える声と足でゆっくりと秋ちゃんの元に向かう。

 それはまるで、迷子の子犬が、母犬を見つけて寂しさから鳴き声を上げながら縋りつく光景そのものだった。


 精神的に追い詰められた私はそんなことまで頭が回らない、あるのはただ許しを求める哀れな咎人(とがびと)としての私だった。


 秋ちゃんの元までたどり着くと、優しい抱擁と共に、秋ちゃんの優しい声が耳元に囁かれる。


「大丈夫、私だけは澄ちゃんの味方だから」

「……ほ、ほんとう?」

「本当だよ。世界中のみんなが、澄ちゃんのことを嫌いになって離れてしまっても。」


 優しい言葉と、悲しい現実を交互に突きつけられた私は、恐怖と安堵感のはざまで正常な考えが出来なくなっていた。

 秋ちゃんの言葉を、そのまま受け取る哀れな雛鳥になってしまった私を、秋ちゃんの声が優しく包み込む。


「私だけは、澄ちゃんの隣にずっといるからね。だから、澄ちゃんも私の隣から離れちゃ……ダメだよ?」


 甘く優しい餌に、私はただ飢えたように飛びつくだけだった。

 私を抱擁する片手が解かれる、そして解かれた手はゆっくりと私の頭の上に移動していく。

 そのまま優しく頭を撫でられる感覚に、私は心が温まっていくのを感じた。


「うん、秋ちゃんの隣にいるから。私、いい子に、なるから……」

「よく言えたね、偉い偉い。澄ちゃんはいい子だね」

「えへへへ。私いい子?」

「いい子、いい子。澄ちゃんはとってもおりこうさんだね」

「も、もっとお利口になるから。その……も、もっと、頭、撫でてくれる?」


 秋ちゃんの優しい言葉に、私を肯定してくれる甘い言葉に、優しい魔の手に。私は止めどなく溺れていく。

 今なら、世界中の誰よりもいい子になりたいと思える。


「いいよ、もっと撫でてあげる。でもここじゃ周りの目もあるし、お店の迷惑になっちゃうね。それってとっても悪いことだよね?」


 悪いこと、つまりそれはいい子ではなく、悪い子になるということ。

 その事実に弱り切った私の心は怯えてしまう、優しいこの手が、声が、体温が。離れていってしまうのではないかと不安になる。


「わ、悪いこと。ぃ、いやだよぉ……」

「悪い子はいやだよね。澄ちゃんはいい子だから、悪い子にならないためにはどうしたらいいか分かるよね?」


 耳元で囁かれる秋ちゃんの優しい言葉と、私を追い詰める悪魔のような囁き。

 悪いことをすると皆に嫌われる、もっちゃんに、秋ちゃんに嫌われる。それを想像するだけで、私は恐怖に包まれ、必死に正解を考える。


「お、おそと?」


 必死に考えた自分の回答が間違っているのではないか、秋ちゃんの期待する答えとは別なのではないのか。

 そういった他人からの評価が、今の私にとっては何よりも重視することで、何よりも怯えの対象となっていた。

 恐る恐る答えを口にして、秋ちゃんの胸に埋めていた顔をゆっくりと持ち上げる。


 視線の先に秋ちゃんの笑顔を見ることで、私は自分の答えが間違っていなかったのだと安堵する。

 そんな私の心を見通したように、秋ちゃんの手は止まらず私の頭を撫でてくれる。


「そう! 正解! でもお外は危ないからね、安全な私のお家にいこうね。そこでなら澄ちゃんが満足するまで、いい子、いい子してあげるよ」

「いく、私。秋ちゃんのお家、行く……」

「よく言えましたねえ! じゃあさっそく「いい加減にしなさい!」 イッタア!」


 現状をずっと第三者の立場で静観していたもっちゃんが、どこから持ち出したのかハリセンで秋ちゃんの頭を、気持ちのいい音共に弾く。

 そこでようやく私は正気を取り戻すことができた。


「ッハ! 私は一体なにを……もう! 秋ちゃん、いつも言ってるけど止めてよね!」

「全くですよ、たまに澄ちゃんの不安を煽って持ち帰ろうとしないでください」

「ごめんって、澄ちゃんの反応が楽しくついやっちゃうんだよ。むしろ澄ちゃんがコロッと騙されちゃうのが問題だと、私は思うね」


 正気に戻った私と、お怒り状態のもっちゃんからの叱咤に、秋ちゃんはいたずらっ子のような笑みを浮かべて謝罪。になってない言い訳をする。


 中学2年の楽園脱退以降、秋ちゃんはたまにこうやって私を半ば脅すように、追い詰めては何故か自分の家に持ち帰ろうとする。


 訳が分からないけど、そのたびにこうして不安を煽ることで私を精神的に攻撃してくるのだ。

 何度止めてと言っても、秋ちゃんは止めるそぶりを見せない。正直、男の子と仲良くなる以上に解決するべき問題だと、再認識させられる。


「秋ちゃんもそうですけど、澄ちゃんも澄ちゃんです。こうやって毎回秋ちゃんに騙されてるようじゃ、何時か悪い人に連れ去られちゃいますよ?」

「うぐぅ……ご、ごめんなさい。もう秋ちゃんのこと嫌い、絶対に許してあげないから……」


 そして、最後には何故か私が謝ることになるのは何故だろう。

 だけど今日という今日は絶対に許さないという思いを込めて、秋ちゃんを睨む。


 散々バカにされようとも、私にも自尊心がある。毎回同じ手口で騙されれば、何時しか人はその人を信用しなくなるし。

 例え気の許せる友達であったとしても、その絆が続くとは限らないのだ。


「本当にごめんね? 代わりに澄ちゃんが好きなチョコパフェ奢ってあげるから、許してくれる?」

「え、本当!? 許しちゃうし、秋ちゃん大好き!」

「澄ちゃん!?」


 絆の尊さと、脆さを前世でも知っていた私が、転生してから一つ知ったことがある。

 甘味はその全てを解決するのだ。


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― 新着の感想 ―
[良い点] これは上位のチョロいん資格持ちですね…
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