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#05 想像力豊かだと、ちょっとの刺激で見える現実が変わってしまう話(実体験)

 テニスやサッカー、夏のこの時期に大会を控えている部活は数多存在する。


 それは美術部や吹奏楽部といった、スポーツに分類されない分野も変わらない。


 高校の部活動が最も熱を入れるとしたら、その大体が夏の時期になると思う。


「はぁ……」

「ん? どったの、澄ちゃん」

「元気ない様子ですけど、何かありました?」


 しかし、私が所属しているアナログゲーム開発部に限って言えば、それは当てはまらない。


 なんせ大会やコンクールなんてもの自体が存在しないのだ。

 厳密に言えば、私たちの部活の活動内容と一致する大会と呼ばれるものはあったりする、だけどそれは高校単位ではない。


 どちらかというと、コミュニティ単位で行われるようなモノが多い。


 まあ、だからと言ってそういった大会に向けて、オリジナルのアナログゲームを作っているのかと言われれば、その限りではないけども。


 結果、夏休みだろうが何だろうが、アナログゲーム開発部はいつも通りの平常運転。


 夏休みに入って部活の活動感覚は週に数回。


 他部活と比較したとき、あまりやる気が感じられないと思われても仕方のない、数少ない活動日。

 今日はその部活稼働日。


 部員数が4人という最少人数、且つ、その内の2人は同級生の友人。

 つまり、私の中でこの部活動というのは、ただの遊ぶための場所だったりする。


 活動時間も、午前中から午後の適当な時間までという、フリーダムスタイルだ。

 なんて私好みなのだろうか。


 というわけで、色々言ったけど、要は夏休みの部活動をしています。

 部長は多分今日も来ないので、メンバーは私、秋ちゃん、もっちゃんといういつものメンバー。


 普段なら皆で人生ゲームやら、市販のボードゲームやらでワイワイと楽しく遊んでいるのだけど。


 あることが理由で、私は普段のようなテンションを保てなくなっていた。


「聞いてよ二人ともー、この間ね? 佐藤君の家で課題を一緒にしたんだよ、その時色々合ってねぇ」


 私の態度が露骨だったこともあって、二人に心配をさせてしまうのが申し訳なかった私は。


 先日の佐藤君の家でのことを話した。


 そもそもの話、私が佐藤君の家に行った事に対して色々言われると思ったけど、意外と二人がそこに触れることは無かった。


 話を遮られることもなく、元気がない理由まで私は淡々と説明していく。


「それでね、課題が結構進んだから一旦止めて、佐藤君とゲームをしようって話になったの」

「へぇ、佐藤君ってゲームするんだ。私の中だとテニスの練習か読書のイメージだなあ」

「そうですか? 男の子は皆ゲームが好きなのだと思ってましたけど?」


 佐藤君がゲームをする事に対して、秋ちゃんは驚いだ様子だった。


「ゲームもするし、読書もするしって感じだったよ。佐藤君の部屋にマンガじゃない本が一杯あったもん」

「はへー」

「それで、ゲームをしようという話からどうなったんですか?」


 もっちゃんは続きが気になるのか、ちょっとだけ前のめりで聞いてくる。


 そんなもっちゃんの言動に、私はちょっとだけ疑問を持ったけど、気にするほどでもなかったので、話をそのまま続ける。


「それでね、ゲームする前に佐藤君が飲み物取りに行ってくれたんだけど。待ってる間に私寝ちゃったんだよねえ、佐藤君のベッドで……」

「……え?」

「……は?」


 私がここから、どうして今日の私が元気ないのかの説明をしようとするけど。


 何故か二人の表情が固まっていて、ハトが豆鉄砲を食らったような様子だった。


 二人の反応に、何かあったのだろうかと不安になって様子を伺っていると、二人が突然大きな声を発した。


「「ね、寝たってどうゆうこと!?」」

「うわあ!? な、なに!? どうしたの!?」

「どうしたのはこっちのセリフだよ!」

「澄ちゃん、もしかしてその時に佐藤君に何かされてしまったんですか!?」

「どどど、どうしてそんな反応になっちゃうの!?」


 二人の反応、特にもっちゃんがとんでもない心配をしていることに、私まで驚いてしまった。


 二人をどうにか落ち着けることはできたけど、よくよく考えたら。

 異性のクラスメイトのベッドで寝るって、かなり不味いことなんじゃ……と、今更ながらにやってしまった感が漂ってくる。


「……あれ? 私、不味いことしちゃった?」


 不安そうに二人に尋ねると、秋ちゃんももっちゃんもさっきまでの慌てた様子から、一気に呆れた表情を見せてくる。


 そ、そこまで露骨にしなくてもよくない?


 あ、ダメですか。申し訳ございません。


 二人は私から視線を外して、少しだけ私から離れていく。


「それだけ佐藤君に懐いてるってことでいいのかな」

「平たく言ってしまえばそうなんですけどね、ですが佐藤君意外だった時のことを考えると……」

「うん、まだ佐藤君だから問題なかった、ってだけで。これが他の連中だったらと思うと……」


 そして私に聞こえるか聞こえないかぐらいの声で、二人が相談を始めてしまう。


 十中八九、話の流れ的に私の事。もっと言えばベッドで寝てしまったことについてなんだろうけど。


 あの、私当事者なので、もう少しお話に混ぜて頂けないでしょうか……


 なんて思っていると、二人の相談が終わったのか、秋ちゃんたちが私に視線を向けてくる。


「澄ちゃん……」

「ひぁぃ!」


 秋ちゃんがゆっくりとした動きで、私の両肩を力強く掴んでくる。


「男の子って生き物はね、もの凄く……怖い生き物なんだよ?」


 ……すみません、私元男の子です。


 なんてことは言えるはずもなく、だけど異様な様子で話す秋ちゃんの言葉が、スルリと耳に入ってくる。


「例えば、佐藤君以外の男どもの部屋で、澄ちゃんがスヤスヤと寝ていたとしよう」

「……んぅ!?」


 ゆっくりと、そして重い秋ちゃんの言葉に、体に緊張が走る。


 さらに秋ちゃんは言葉を発しながら、私の肩を掴んでいた手を滑らせていく。


 秋ちゃんの右手が、私の肩から二の腕に滑り落ちてくる。滑り落ちてきた秋ちゃんの手が、圧を感じさせない力加減で、私の二の腕をまさぐる。


 そして左手が、右手とは逆に、私の首元まで滑り上がってくる。

 上がってきた左手の指で、私の鎖骨周りを不規則になぞる。


 抱きつかれた時とは違う、体に軽い電気が流れるような感覚に、思わず声が出てしまうのが恥ずかしかった。


 秋ちゃんは、そんな私の反応を楽しむように、執拗に、そして纏わりつくように手を動かしてくる。


「あ、秋ちゃん……やめ、やめてぇ……」

「気持ちよさそうに寝ている澄ちゃんを目の前にした、汚らしい狼の手が、ゆっくりと澄ちゃんの体をこうしてまさぐっていく……まるで、獲物の状態を確かめるように、ね」

「うんぅ……!?」


 私の抗議を無視して、秋ちゃんは手を休めることなく話を続けていく。


 私の二の腕を擦っている左手はそのままに。

 鎖骨周辺をなぞっていた右手だけが、真っすぐに降りてくる。


 そして下に降りてきた右手が、今度は私のお腹周りで止まり、下腹部に添えられる。


 秋ちゃんの声と手が、異様な空気を構成しているせいなのか、耐えようのない衝動が私の中で暴れ始めてしまう。


「そして、澄ちゃんが起きない事を悟った狼が、喉を鳴らしながら、澄ちゃんにゆぅっくりと体を近づけてくる」


 今度は体ごと私の方へ近づけてくる秋ちゃん。


 思うように力の入らない私の体は、秋ちゃんに押されるようにして後退してく。


 どんどん後退する私の背中が、遂に部室の壁まで追いやられる。

 それを待っていたのか、私がこれ以上後退できないことを悟った秋ちゃんが、左足を私の両足の間に滑り込ませながら、体をくっつけてくる。


 最後に、私の体をまさぐっていた秋ちゃんの両手が、私を挟むようにして壁に付けられる。


 そのまま秋ちゃんが私の耳元まで顔を近づける。


「澄ちゃんの綺麗な体を、狼たちが無遠慮に……貪っていく。目を閉じて想像してみな?」


 混乱する脳に、秋ちゃんの言葉が滑り込んでくるせいで、少しの抵抗もむなしく私は目を閉じてしまい、言われた通りの状況を想像してしまう。


 高校に入ってから強く向けられるようになった、あの嫌な視線を持った男の人達が、私の体を……


 そこまで想像した瞬間、熱くなっていた体の熱が、一瞬にして冷えていく。


 訳が分からなかったけど、心の底からその光景に嫌悪感が募っていき、私の体が小さく震える。


 私の頭の中にある気持ちはたった1つに染まっていった。

 私はその光景を想像して、ただ怖かった。


「わかってくれたかな? 今こうして澄ちゃんに迫っている私が、私じゃない男どもだったら……?」

「……い、嫌!」


 今、私の目の前にいるのが秋ちゃんじゃなくて、知らない男の人のだったら。


 私の脚の間に滑り込んでいる脚が、秋ちゃんじゃない男の人の脚だったら。


 耳元で、吐息の熱まで分かる吐息が、別の男の人の熱だったら……


 我慢できなかった。


 恐怖に支配された私は、迫っている秋ちゃんの体を反射的に押し返そうとする。

 でも、小さな私の力じゃ秋ちゃんの体を動かすことなんてできず、力なく押し返されてしまう。


「澄ちゃんが抵抗しようとしても無駄……だって澄ちゃん、力がないから。押そうとしても、叩いても、引っ張っても……無意味なんだよ?」

「や、やめてぇ……ごめん、なさい。あ、秋ちゃん? 秋ちゃんだよね? 嫌だよ……わ、わたし……」


 正常な判断力を奪われた今の私には、秋ちゃんの言葉だけが現実だった。


 だから、今、私を押さえつけて、私以外の熱を持ったこの体が、秋ちゃん以外の人だということに耐えられなかった。


 秋ちゃんの体が目の前にあるのだと分かっている、だけど閉じた瞳すら開けるのが怖くして仕方がなかった。


「……澄ちゃん、目を開けて?」


 秋ちゃんの言葉を聞いて、恐る恐る私は目を開いていく。


 開いた目に映ったのは、思い浮かべていた見知らぬ男の人ではなく。

 優しい笑顔を見せてくれる、秋ちゃんの顔だった。


申し訳ありません!

このままだと区切りも悪く長文になってしまうので、ここで分けることにさせていただきます。


明日、後編の方を投稿しますので、よろしくお願いいたします!

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