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#24 お祝いの食事会って内緒話したくなるよね

誤字脱字のご報告誠にありがとうございます!

自分でもどうしてこんなに誤字脱字が多いのか不思議です……申し訳ないとです……

 佐藤君をお疲れ様会にご招待したのに、それ以降の佐藤君の様子が少し可笑しいです。


 どこか私に向ける視線が冷たいというか、冷ややかというか……

 それ以外は別に何か可笑しいというわけではないけど、少し話しかけずらくなってしまった。



 ま、それでも楽しいことは廻ってくるわけで。

 期末テストが終わった週末、私たちは中学生時代に一番利用していたカフェに集まって、休日のお昼からお疲れ様会が開催されました。


「「「期末テストお疲れ様~」」」


 皆での掛け声と同時に乾杯する。


 お疲れ様会といってもただ皆でご飯を食べるだけだけど、こうして何かしらの祝い事にするだけで、少しだけ特別感が出るから不思議。


 いつも3人でしていた祝会も、佐藤君を含めたプラス3人、合計6人という大所帯というところも大きなポイントだ。


 一応、座席配置はテーブルを男女で挟んで座っている。


 大人の人ならこうゆうときはお酒で乾杯をするらしいけど、残念ながら私たちは未成年なので大人しくジュースでの乾杯。


 皆が一様にジュースを飲むと、佐藤君が集めた2人の男の子の内の一人が平坦な声で口を開く。


「同じクラスだけど、話したことないから一応自己紹介。坂之上(さかのうえ) (じん)です、よろしく」


 佐藤君以上に平坦な口調で自己紹介をしてくれたのは、別中学で同じ高校に入学した坂之上仁君。


 身長は低くて、女の子の私達と同じぐらい。


 今世では話したことないけど、前世では短い高校生活でもかなり話す仲だった記憶がある。


 平坦な口調とは裏腹に、中々にユニークだった気がする!


 前世の自分同様、佐藤君も仁君と話す仲なので人選候補ではトップと予想していたけど、予測通りでちょっと嬉しかった。


(仁君なら話しやすいからよかったよぉ……)


「あ! 俺も俺も! 桐内(きりうち) 天智(てんじ)だ、よろしくう!」


 仁君の平坦な口調とは真逆な自己紹介をしてくれたのは、桐内天智君。


 佐藤君と身長差は殆どなく、高身長と言える。


 天智君も私達とは別中学からの入学で、前世でも普通に話す仲だったと思う。


 学校で少し苦手意識を持つようになってしまった、同じクラスの男の子とノリは似ているけど、天智君の場合はそれを感じないのはこれまたどうしてだろう。


「私、秋山智登世。よろ~」

「藤堂森加です、よろしくお願いします」

「美月澄香でーす、よろしく~」


 せっかく自己紹介をしてくれたので、私達もそれぞれ自己紹介をする。


 唯一、この場の全員と面識があるのは佐藤君だけだったので、佐藤君は自己紹介をしてくれなかった。


「いや~学校でも高嶺の花と呼ばれる3人とご飯食えるとか、俺ってそんなに前世で善行積んでたんだな~」


 しみじみと何度も頷きながら天智君が言う。


 そうでしょうそうでしょう、私達は美少女なのだ! 

 だからもっと褒めて~。


「えへへ~」

「澄ちゃんって普段自分を完璧美少女ーとか言ってるのに、他の人から言われると照れるってどんな神経してんの?」

「だってー、佐藤君とか全然褒めてくれないんだもん。私、美少女。もっと褒めて?」


 佐藤君に充て付けるように言う。

 昨日までの冷たい視線での落ちを期待していた私の目に映ったのは、それこそ爽やかスマイルの表情だった。


「美月は可愛いよ」

「――っ!?」


 残念だよなとか、性格がなとかを想像して、反論体制を取った私に見舞われた佐藤君の言葉は。


 まるで私のガードの隙間を縫うようにクリーンヒットしてしまう。


「え~、あ~、ん~……あうぅ……」


 顔だけではなく、全身の体温が急激に上昇するのが分かってしまい、右往左往させていた両手で顔を包む。


(ああああああなんで! なんで素直に褒めちゃうのおお!)


 恥ずかしさの内側から隠しきれない嬉しさが込み上げてくる、口の両端が吊り上がらないよう必死に手で抑える。


「あっはっはっは! 澄ちゃん顔めっちゃ真っ赤じゃん!」

「佐藤君に褒められたのが余程嬉しかったんですね」

「なるほど、流石大翔。お前ならやると信じてたぜ」

「佐藤テメエ! 今のは絶対俺のポイントだったろ! 一発で持ってくんじゃねえイケメン野郎が!」


 皆のテンションが上がる中、私はどうにか気持ち落ち着けようと必死にほっぺを押さえつける。


 やばいぞお、口元が緩んでしまうー!


 今の自分を見られることに耐えられなくなった私は、思わず下を向いてしまう。


「あーあ、佐藤君がいい顔で褒めるから、澄ちゃん顔下げちゃったじゃん」

「美月さんー、俺も美月さん可愛いと思ってるよお!」

「大翔と天智だとイケメン力の差が大きすぎる、諦めるんだ愚かな引き立て役よ」

「澄ちゃんはいい子ですからねー、こちらにいらっしゃい?」


 私が顔を下げてしまった事で一瞬だけ空気が悪くなるのでは……と思っていたけど、空気が悪くならなくてよかった。


 依然として顔のにやけ、更に収まらない顔の火照りのせいで中々顔が上げられない私に、もっちゃんが優しく包み込むように引き込んでくれる。


 私はもっちゃんの優しさに甘えて、秋ちゃんに並ぶ豊満な胸に顔を隠すように埋めてしまう。


 佐藤君恐るべし。

 笑顔で放つ誉め言葉にこれほどの威力があるとは……


 しかし、そんなクリティカルなダメージも。もっちゃんの優しい匂い、そして何とも得難いこの柔らかさにより、どうにか気持ちが落ち着いてくる。


「お、おぉ……」

「良いものを見させていただいた、眼福でござる。料金はいかほど?」

「よく言った坂之上君! ここの代金でどう?」

「よろこんで」


「よしよ~し、澄ちゃんは可愛いですね~」


 まだ見た事の無い世界を目の当たりにした様子の天智君。


 そして謎の取引を繰り広げる秋ちゃんと仁君。


 私はもっちゃんの胸に顔を埋めていたので声のみだったけど、皆打ち解けるのが早いなーと、落ち着いてきた頭でぼんやりと考える。


 しかし、ここまで一言も発していない佐藤君がどんな顔をしているのかが分からなくて、中々顔を上げることに抵抗感が募っていく。


「ほら佐藤君、貴方が何か言ってあげないと、澄ちゃん顔が上げずらいじゃないですか?」


 もっちゃんの言葉に、にぎやかだった空気が止まる。


 まるで佐藤君の言葉を待っているかの状況に、佐藤君がようやく動き出す気配を感じる。


「美月」

「……ぅん?」


 顔の角度を少しずらして、向かいの席にいる佐藤君の方をちらりと見る。


 佐藤君はさっきまでと変わらない微笑みを保ったまま、視線を私から外すこともなくゆっくりと口を開く。


「美月は可愛いよ」


 静まった空気なのか、佐藤君の声だけがよく響いた。


 佐藤君はそう言うと席を立ち、少し体を乗り出しながら私の頭を撫でる。


「髪綺麗だよな……」


 髪を解かすように、佐藤君の手が私の髪を撫でる。


 静まりかけていた情動が、さっきよりも大きなものとなって再燃していく。


 クリアな思考は柔らかいノイズで埋め尽くされ、言葉にならない声が口からただ漏れていく。


「……」

「だ、大丈夫ですか澄ちゃん?」


 さっきまでとは違う戸惑ったようなもっちゃんの言葉、しかし今の私にはその言葉すら素通りしていく。


「……わ」

「わ?」

「私お手洗い行ってくるううう!」


 その場に居られなくなった私は、そう叫びながらトイレへと逃げ込んだ。



 ☆



 私が去った場所で、少し前まで微笑みを浮かべていた佐藤君は、呆気にとられたように私が消えていった方向を見る。


「あそこまで反応するもんなんだな……」


 佐藤君もあの行動に羞恥心を感じなかったなんてことはなく、恥ずかしい気持ちをお得意のポーカーフェイスで隠していただけに過ぎなかった。


 しかし、私の良すぎる反応に、その羞恥心はすぐに顔を引っ込めてしまっていた。



「いやー流石佐藤君、私達が見込んだだけのことはあるわー」

「澄ちゃんの反応も好感触ですね、桐内君の時とは全くの別モノでした」

「あれこそチョロイン、我々の見立ては間違っていなかった」

「え、あん? なんの話?」


 天智君以外の全員が、納得したように、または感心するようにして、佐藤君同様私が逃げていった方向に視線を送る。


 そして一人取り残された天智君だけが付いていけずに、キョロキョロと周りに視線を這わせていた。

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